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STORY18:真実

 人は、闇を受け入れられるのか・・・?                              それが、真実だったとしても・・・?



 一瞬、光が見えた。

 それが、頂上から漏れた光と気が付くのにそう時間はかからなかった。

 目の前は暗闇。 その先に月明かりが小さく漏れている。

 そして、その場に立つのは1人の影と大きな石。

 遠くからでも分かるくらい大きな文字で『D』と彫られている石だ。

 その隣には、月明かりに怪しく照らされる影。

 見ていて嫌になる程、邪気に満ちている。

「以外と速かったな。・・・”流石”と言っておくか」

 ミーナ達の視線が影に集中した。

 塔の外で聴いた声だったのだ。

 影は『だが・・・』と付け加える。

「少し、遅かったようだ」

 影は月明かりの前に踏み出し、その姿を照らしだした。

 闇色の瞳。

 それに比例してか、髪も闇色である。

 やはり、魔族だ。

 邪気に包まれながらも平然としていられるのが何よりの証拠である。

「我が名はデス。ここに眠る魔王の息子」

 デスと名乗る魔族が声を張り上げて言うと、石がガタガタと動き始めた。

「我が父よ!今こそ眠りから醒めよ!!」

 デスが更に声を張り上げると、石は粉々に砕け散った。

 その衝撃がミーナ達にも伝わる。

 魔王の復活を喜ぶデス。

 ミーナ達の試練が増えた瞬間でもあった。

「我が父よ、魔力が強く若い者の身体がここに・・・・」

 デスが差し出したのは、小さな人影。

 だが、石が砕け散ったおかげで埃が舞い上がり、ミーナ達側からは何も見えなくなっていて確認は難しい。

 子供くらいの大きさということだけ解る。

『これはいい器だ』

 埃の中で、黒い影が人影に手を伸ばす。

 そして、一瞬のうちに―――。

 人影は黒い影に覆われ、邪気が溢れんばかりに・・・・いや、溢れるくらいに漂った。

『・・・ふぅ・・・。久々の肉体だ。魔力もいい具合に満ちている』

 いつの間にか土埃が沈み、邪気を漂わす影は物体となってミーナ達の目の前に現れた。

 身体は小さく、瞳は闇。

 髪と片方の瞳は翡翠色の輝き・・・。

 紛れも無く、ヴィルド兄弟の末っ子兼リーダー・エメラルドだった。

『少々、視界が悪いな・・・』

 魔王はそう言うと、瞳に埋め込まれた宝石に触れた。

 ミーナ達に疑問符が付く。

 エメラルドは以前に倒したはず・・・と。

 そんなことを考えていると、魔王の瞳から鮮血が飛び散った。

 ぶしゅう・・・!!という血が吹き出す音。 その後に、ブチブチブチッ・・・、と引き契る音が続く。

 魔王は翡翠色の宝石を外していたのだ。 自分の眼球と一緒に・・・。

 魔王は深呼吸を1〜2回すると、ミーナ達を見た。

 なんの感情も出さず、ただ、『見て』いるのだ。

「へっ・・・!やってやろうじゃねぇか!!」

 緊張のあまり、擦れてしまった声を出したのはルークだった。

 紅い髪と瞳が、月明かりに照らされてキラキラと輝いている。

 ルークの言葉に賛成した者が2人程いた。

 ルークの妹のシェラと弟のシュラである。

 ルークと同じ紅い瞳は、絶望等というものを感じさせなかった。

 シェラの周りに燐粉が集まり、シュラの周りに炎が渦巻く。 そして、ルークの手にはシュルッと伸びた棘があった。

 『蝶』『竜』『花』。

 これが、この兄弟の紋章である。

 それぞれの紋章が、支えあって炎を創り出す。

 兄弟とは不思議なモノで・・・何かしら繋がりがあるものだ。

「名乗れよ、魔王ぉ!!」

 魔王は、ふっ、とした笑みを見せると自分の名を口にした。

『――デスティニー・・・だ』


 キィン!!!!!


 ルークの棘が魔王に当たる。 が、素早く構えた劔に防がれる。

 そのスピードに感心の声を漏らす。

 だが、それはデスティニーの余裕を顕していた。

「はっ!『運命』ってか?!」

 ルークは攻撃を繰り出しながら言う。

 すると、デスティニーが笑った。

『そう、我が血を継ぐ者達・・・。我を求めて、貴様達はこの地へやって来た。我が子達と共にな』

「!?」

 あまりの驚きに、ルークは手を止めてしまった。 その隙を逃さず、デスティニーが蹴りを披露した。

 見事、ルークに命中!

 ルークはそのまま後ろへ飛ばされた。

 その後ろから、ルークの名を呼び心配する声が聞こえる。

 ミーナ、リュウ、パオの3人の声だ。

 その3人の姿を確認したデスティニーの表情は、先程の笑みよりも温かみのあるものだった。

「・・・あ、あたし」

 暫くして、その異様な空気の中口を開いたのは――サミーだった。

 ”あたし・・・見たの・・・”

 と続けて言う。

 皆が耳を傾けた。

「エメラルドを倒した後・・・ミーナの瞳は―――黒かった」

「「「!?」」」

 一瞬にして、衝撃が走った。

 1番ショックを受けたのはミーナである。 ”瞳が黒”・・・それはミーナが人間では無いことを顕していた。

 皆の身体が、表情が、恐怖をみせている。

 ミーナも自分自身に恐怖を抱いた。

『信じられぬか?』

 ”当たり前でしょ!”と言いたいところだが、声が擦れて声にはならなかった。

『いいだろう・・・。我が真の姿を見せるとしよう――――デス!』

 デスティニーがその名を呼ぶと、”嫌だ!”と叫ぶ者がいた。

 勿論、呼ばれたデス本人である。

 デスは拒否した。

 そして、今まで魔王にしてきたことをペラペラと喋り始めた。

 魔王復活の為に、嫉妬の情を膨らませパオとリュウを引き合わせたこと。

 欲望の情を膨らませ、ミーナと連合軍を引き合わせたこと。

 強さを求める情を膨らませ、ムム達を引き合わせたこと。

 そして、魔王を復活させる為に他の魔族(サッドやユリーク、ヴィルド兄弟等)の身体や魂を捧げたこと。

「皆、貴方の為にしたことだ!私は・・・消えたくない!!」


 ごおぅ!!!!!


 と音がして、デスは地面に叩き付けられた。

 デスの首を馬乗りで締め上げる魔王・デスティニーの姿がそこにあった。

『お前はもう、用済みなのだ。我が血肉となり、役目を果たし終えよ』

 ギリギリと締め上げられ、苦しそうにデスティニーの腕を掴む。

「ち、父・・・う、え」

 薄らと涙を浮かべ、デスは魔王を『父』と呼んだ。

 だが、魔王に『父』という感情は無く、デスを見下ろし更に力を込めて首を締めた。

 デスは、徐々に消えていった。 『父』と慕っていた者の腕を掴んだ指先からゆっくりと。

 ついに、顔だけになった時、デスティニーは冷酷な笑みを浮かべて言った。

『”父”だと?お前は我が魔力の入れ物に過ぎん。残念だったな』

「そん―――」

 そんな、の1言も口に出来ずにデスは消えた。

 そして、魔王は完全に復活した。

 冷酷な空気、冷酷な姿、冷酷な表情を皆の前に現す。

 その姿に反応する声が聞こえた。

「ち・・・父君・・・?」

「お・・・親父・・・?」

「と・・・父さん・・・?」

 3人の声。

 そして、3人はそれぞれの顔を見合わせた。

 デスを吸収し、真の姿を見せたデスティニーを『父』と呼んだのだ。



 ミーナ、リュウ、パオの3人が―――







 呆然としている3人を横目に、デスティニーは自身がしてきたことを語り出した。

 魔王が生まれた・・・いや、この地に存在するようになったのは1000年以上も前のこと。 人間の神と獣の神と竜の神との間に、小さな争いが起きたのだ。

 ”この地で1番優れた神は?”

 という、小さな小さな争いだった。

 人間の神は、人間の中でも『超人』と呼ばれる存在を創った。

 竜の神は、人間のような知性と器用さを持ち合わせた『竜人』と呼ばれる存在を創った。

 獣の神は、人間の神や竜の神が創った存在をも超える『魔』と呼ばれる存在を創った。

 それが、魔王・デスティニーである。

 魔王は自身から幾つもの分身を創った。

 長い時が流れて、魔族と獣族との間に『魔獣』と呼ばれる存在が誕生した。

 人間も同様に、魔族との間に子を授かる者もいた。

 その存在は、瞳が闇色に生まれ魔力を秘めていた。

 更に時が流れ、魔族の血が薄くなり瞳の色は闇色ではなくなった。

 だが、魔族の血が流れている証拠はあった。

 それが、紋章である。



 ずっと昔、紋章を肌に印した『勇者』と名乗る者達がデスティニーと闘いに来た。

 魔族の中に裏切り者がいた為に、一瞬の隙を取られて封印されてしまったのだ。

 そんなデスティニーにも、家庭はあった。

 3人の人間と契りを交わし、3人の子が生まれた。

 デスティニーは、己が復活するまでその3人の子の時の流れを止め、今日という日を心待ちにしていた――――。




 ――――その3人の子が、ミーナ、リュウ、パオなのである。

「う、嘘・・・」

 ミーナが両手で口を塞ぐと、そう呟いた。

 魔族を嫌っていた自分自身が、魔王の子だと知らされてショックを受けない者はいない。

 声にはなっていないが、リュウとパオも相当なショックを受けているようだ。

 『蝶』『竜』『鳥』

 これが、ミーナ達の紋章。

 それぞれが、炎を受け止められるような繋がり。

 そして、兄弟には特有の同じ色の瞳である。

 これが、ミーナ達が兄弟であることを顕した決定的な証拠。

 ミーナが黒い瞳をしていたことを合わせると、デスティニーが本当のことを言っているとしか考えられなくなってしまった。

「てめえの話なんざ関係無い!てめえの目的はなんだ?!返答次第では、てめえを永遠に葬ってやる!!」

 ショックから真っ先に立ち直ったのは、リュウ・・・・ではなく、パオ――――基、ジン・ドラングドゥ。

 勇者『パオ』を受け継ぐ証でもあるその名を捨てた瞬間だった。

 ジンの言葉で正気を取り戻し、ミーナとリュウも目の前のデスティニーを『父』ではなく『敵』として見つめた。

『・・・この地に、今までの種族では多過ぎるだろう?我が目的は、魔族のみの世界を創ることだ』

 つまり、とデスティニーは続けて言う。

『貴様達の命も、ここまでということだ』

 急に殺気を放ち、その矛先をサミー達に向ける。

 蛇に睨まれた蛙のように、1歩も動けなくなるサミー。 その前に、シューグとヒューゴが劔を構えて立っていた。

 ヒューゴは水で。

 シューグは氷で。

「シューグ、頼む」

「ああ、君もね」

 お互いに目で合図を送ると、己の武器の密度を上げた。

 『水』と『氷』は相性がいい。

 氷は、密度が上がれば上がる程硬くなる。 それはもう、ダイヤモンドかガッドルリコン(この世界でダイヤにも勝る硬い鉱石)くらいに。

 そんなことはお構い無しに、デスティニーの手が3人に向かって伸びて来る。

 両方がぶつかり合う。

 その瞬間―――。



 ギィンッ!!


 ガツンッ!!



 両方の攻撃は、途中で止まった。

 4人の中心に、黒装束に身を包んだ男が膝を着いてそこにいた。

「魔王様、ご子息様達を連れてあの計画を・・・・早く!」

 スウッと開かれた瞼の下に、深紅色の瞳が見えた。

 ルーク達より、もっと紅く、鮮やかな色だ。

 デスティニーは、その男に短く礼を言うとミーナ達3人を何処かに連れ去ってしまった。

「ミーナ!・・・邪魔しないでよ!あんた、何様のつもり!?」

「魔族様・・・だ」

 サミーの言葉をさらりと返し、男はサミー達3人を突飛ばす。

 己のことを『魔族』と名乗り挙げた男は、自己紹介を短めに済ませた。

「俺の名は、ダーク。他の者は俺のことを『覇王』と呼ぶ」




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