STORY11:再会
久しぶりの投稿です。お待たせしました!
トゥルム国。
そこは、ミーナ達のいたナルニルァ国から数1000キロ離れた所にある。
実際、ミーナとサミーは初めて訪れる場所でもある。 リュウは旅人、ムム達の中にいる1人はここの出身らしい。
とにかく、デカイ。
それが2人の感想である。
「・・・。ここにいるのよね?」
ミーナが不安気に訪ねる。
「あたしに聞かれても・・・」
と、サミーは不安気に返事をした。
明らかに困った顔をしていると、サミーの身体が浮き上がった。 首を摘まれ、男らしいしなやかな腕に包まれた。
そして、薔薇の香りが漂った。
「可愛い子猫ちゃん。そんな顔、君には似合わないよ」
そんな、薔薇の香りのように甘ったるい台詞を吐いて、銀髪の青年は微笑んだ。
「・・・は?」
サミーは目を点にして、惚けていた。
なんだ!? この、恥ずい男はっ!!
と、思っていた。
「誰なんだよお前は」
リュウが、呆れた様子で青年に問いかける。
だが、辺りには既に人集り。 ひとまず、その場から離れることにした。
ここは、トゥルム国1番の安い宿。
だから、人も少ない。
先程の話しの続きが出来る。
「もう1度聞くぞ?お前は誰なんだ?」
ボロいテーブルを4人で囲み、肘を付けて人差し指をピンと立てて、リュウは銀髪の青年に問いかけた。
「私の名は、シューグ。『氷』の紋章を持つ者」
シューグと名乗る青年は、自分が身に付けていた手袋を外して、掌にある『氷』の紋章を皆に見せた。
そして、サミーに向かって微笑んだ。
サミーは黙って苦笑いを返す。
ニコニコと笑っていたと思いきや、真剣な表情になりユリークのことへと話しを替えた。
「で?眠っている間に、色々あったみたいだけど・・・いるの?アイツ」
サミーに見せた甘いフェイスとは逆に、その瞳はアイツ(ユリーク)を睨み付けていた。
自分の身体で最後に見た、アイツの姿を・・・。
早速、ご飯を食べながら、いるんじゃない?、とミーナは答えた。
「本当に思っているのかい?疑いたくなるよ」
「それは、あなたの考えでしょ?今のはわたしの考えよ」
なるほど・・・、とシューグは答えた。
と、そこに声が聞こえた。 外からのようだ。
こんな所に来るのは、物好きかごろつきくらいなものだ。 4人は、警戒しながら誰もいないカウンターの後ろに隠れた。
じっとして騒ぎになるのが嫌だっただけだが・・・。 とにかく、今は厄介事からは身を引いておいた方がいい。
「姉さーん!いい場所があったよー!!」
まず聞こえたのは、幼い少年の声だった。 その後に続いて、美しい女性の声が聞こえる。
どちらも聞いたことのある声だ。
リュウがカウンターから顔を出し、声の主の姿を確認する。
「きゃあっ」
「大丈夫ですかな?さ、ワシの腕に捕まりなされ」
女性の声の後に続く爺臭い青年の声・・・。 3人の脳裏に『まさか』と、ある人物の姿が浮かぶ。
「ぉぃ」
と、シューグを引っ込めて現れたゴッドが小声でリュウを呼んだ。
「あれ、まさかアイツ等じゃ無ぇよNa?」
そう聞きながらゴッドも覗いてみる。
少年の姿はギリギリ見えないが、女性と青年の姿は見えた。
申し訳無さそうに微笑む女性の腕を掴み、鼻の下を伸ばしながらエスコートする青年。
桃色の髪の女性と、クルンとした前髪の青年・・・。
その正体が分かった瞬間、リュウとゴッドは同時に飛び膝蹴りを食らわせた。
そこは古びた教会。
「ほぉ、それはワシが悪かった・・・と、言っておこう」
ゴチッ!!!
『悪いに決まってんだろぉが!』
シェラは困った顔をしながら、それ以外の者達はそれぞれ硬い拳を作りパオの頭を殴った。
「で?シェラ達はなんでここに?」
パオを散々ボコボコした後、ミーナはシェラに問う。
はい、とシェラは今までのいきさつを話し始めた。
それは、今日から調度2年前・・・。
シェラは、何時ものように家事をこなしていた。
シュラも、ヒョウも、捕まったままのパオも。
何時もと変わらぬ時間を過ごしていた。
だが・・・。
「いやあぁぁっ!!」
その悲鳴は、3人の男達の耳に届いた。 紛れも無く、シェラの悲鳴である。
3人がシェラの下へ辿り着いた時にはもう、彼女の周りを闇色の何かが覆っていた。
シュラには見覚えのある光景だった。 他の2人に逃げるように言うが、駄目だった。
最強の紋章とは何か?
シュラがいきなり聞いて来た。
2人は答えられなかった。 そんなこと、誰も思ったりしないからだ。
そんな2人にシュラが言った。
「僕は、姉さんの・・・『蝶』の紋章だと思ってる」
シュラがそう思うのも無理は無い。 そもそも、『蝶』とは”新しい始まり”とか”幻”等々、自分の中に隠れた何かを示すものなのだ。
シェラを覆っていた闇色のソレは、球となって空に浮かんだ。
もう・・・止められない。
シュラが言った瞬間、闇色の球は弾けた。
現れたのは、銀の瞳の翼を着けたシェラ。
「誰だ・・・。私の眠りを妨げるのはっ!」
銀の瞳は、すぐにシュラを睨み付けた。 久しいな、と声をかけて。
シュラは知っていた。
目の前にいるのが、シェラ自身だということを・・・。
「ユーリ・・・」
そして、”ユーリ”という名のもう1人の自分に身体を乗っ取られていることも。
彼女の左腕には、逆さの『蝶』の紋章が・・・。
シュラの紋章が、金色に輝く。
まるで、共鳴しているようだ。
「ほぅ、私の眠りを妨げるのは貴様達ではないようだ。もっと遠くから感じる・・・」
ユーリは、シュラに告げた。
『東へ進め。久しき友とこの世の闇を祓うために』
それだけ言って、ユーリは再び眠りに帰った。 彼女がシェラの中から消えることはない。 ただ、またシェラの中で休むだけだ。
シュラは、動じない。 そんなことは覚悟のうえである。 もう何年もユーリとは付き合ってるからだろう。
そして、時間は過ぎ、事情を説明しよう。 と、シュラが言った。
目を醒ましたシェラは、取り敢えずヒョウとパオに謝った。
ようやく状況を理解した2人は、シェラやシュラに付いて行くことを決心した。
「と、いう訳です」
話しが終わった。
辺りは暗くなり、夕食を皆でつっついて食べた後だった。
シェラの話しに、リュウは恐怖の色を隠せなかった。
「ユーリの奴、なんか企んでるんじゃ無ぇのか?」
それは無いと思う、とシュラが言う。 経験上、彼女が自分に危害を加えたことは無い。
ただ、暴走していなければ、の話しだが・・・。
「で、あんたはいいの?そんなに軍から離れちゃって」
ミーナは、少し眠り被っているパオに尋ねた。
パオは肩をすくめて、苦笑して答えた。
いかなる事情があるにせよ、軍から離れることは許されることでは無い。 つまり、パオは軍を辞めたのだ。
もう済んだことだ、とパオは笑った。
話は盛り上がって、思い出話になったころ、後ろから声がした。