STORY10:3年後・刀・新たな敵?
非常に、長らくお待たせしました。申し訳ありませんでした。
‐3年後‐
ミーナ一行が、魔族を探して裕に3年が過ぎていた。
南に向かって、3年もの間ずっと歩いて来た。 だが、魔族の『ま』の字も出てこない。
ミーナは、割りと落ち着いているが、サミーはイラついていた。
自分の姿を猫に変えたのが、魔族だと知ったからだ。 ま、サミーの勘というものだが・・・。
ムムが、今の身体になった時にあった魔族・ユリークの姿が、サミーが見た奴の格好と似た部分があるかららしい。
「があぁぁっ!!サ、サミー!ロープ、ロープ!!」
「あ、ゴメン」
リュウの叫び声に、サミーはようやく手を離した。
南へ南へと進み続けて、街や村は無くなってしまい4人はとある場所で休憩していた。
そこはかつて、戦場として使われていたらしい。
所々に、壊された壁や、無数に穴の空いた壁。 弾切れの銃が落ちている。
そう、ここは村だった場所。
そんな場所で、寝転がってそれぞれで考えごとをした。
で、リュウの背中の上で考えごとをしていたサミーが、イラつきのあまり4の字固めをしていたのである。
リュウは、ミーナの腕を掴んで助けを求める。 が、手を振りほどかれ、そのまま眉間を殴られた。
「・・・(怒)」
サミーは、軽くのしかかり痛みが無くなるようにする。
「あはは(汗)。ゴメン、ゴメン」
リュウは、文句をぶつぶつと呟きながら立ち上がった。
どうやら大丈夫のようだ。
伊達に3年間も、ミーナやサミーと旅はしてない。
うんうんと考え込むミーナとは逆に、ムムはぼんやりと考え込んでいた。
ミーナ達と旅をして、既に3年が過ぎているのだ。 いつ、自分が元の身体に戻るのか、不安でたまらないのである。
「はぁ・・・」
青空、少し肌寒い風を身体に受けてムムはため息を漏らした。
その瞬間、ムムの髪がざわざわした。
オレンジ色の髪は、瞬間的に翡翠色に変わった。 最近、新たに姿を見せ出した7人の内の1人だ。
背は高く、腰まで伸びた翡翠の髪が美しい女性だ。
「オージェット?」
その姿に気付いたのは、ミーナだった。
オージェットと呼ばれた女性は、髪をなびかせながら真剣な瞳で3人を見る。
「東...太陽の昇る方向から、邪気を感じる」
オージェットがそう言うと、3人は東を向く。 今まで、オージェットが言ったことはよく当たる。 何を隠そう、オージェットは占い師だ。 ミーナよりも力は強い。
彼女の家系は、占い師や予言師の集まりなのだ。 オージェット本人がそう言っていた。
「東...?」
ミーナが呟くと、リュウはその先にある街の名を口にする。
「アーランド街か。でも、あそこは聖域の街だろ?街の奴等は気付いてねぇのかよ」
アーランド街。
そこは、聖なる場所。
1番安全な場所だと、どこでも伝えられてきた聖域だ。
そこに邪気を感じると言ったオージェットを疑う訳ではないのだが、やはり、気になる。
「行けばいいじゃん?あたし達には、それしか方法が無いんだし」
サミーは、あっけらかんとして言った。
青空に、薄らと雲がかかった頃、ミーナはコクリと頷き空を見て承知した。
アーランド街。
その門の前に、4人はいた。
今、辿り着いた訳ではない。 数分前に着いたのだが、まだ入れないのだ。
邪気が濃ゆすぎて...。
「駄目だ。近付け無ぇ」
諦めたようにリュウは呟いた。
邪気が漂い、嫌な空気が辺りを包み込んでいる。
人が住んでる様子は....無い。
と言うより、こんな所に住んでるのは魔族くらいだ。 邪気は、魔族の生きる糧と言っても過言ではない。 その他には、人の悲しみや憎悪など、マイナスな部分がある。
オージェットは、瞳を閉じて両手をかざしてみる。 が、結果は横に振られた首が証明していた。
もうここに、魔族はいないらしい。 代わりにあるモノを見つけたと、彼女は言う。
「これよ」
オージェットが差し出したのは、邪気を帯びた長い片刃刀。 鞘に収まっているが、型からして間違いない。
見たことはなかったが、一応、3人も知っていた。 この世界の者なら、幼い頃に勉強しているからだ。
オージェットが気にしているのは、それではない。
鞘の外側に印されている紋章だ。
『蝶』の....ミーナと同じ紋章である。
「うをっ!?」
その刀を手にしたリュウが、力が抜けた声を出した。
邪気は感じない。 それにも驚いたのだろうが、それ以前に、重いのである。
男のリュウが重いと感じるのだ。
だが、ミーナはそれを軽々しく持ち上げる。
「だらしないわねー。こんなののどこが....って、熱っ!」
ミーナは、自分の腕を抑えて刀を地面に落とした。
それと同時に、刀は地面に数センチめり込んだ。
よく見れば、ミーナの腕の紋章と鞘の紋章が輝いている。
「やっぱり」
オージェットが呟いた。
それに、他の3人が首を傾げる。 訳がわかっていないらしい。
「コレだったのよ。邪気からこの街を守っていたのは....」
4人はひとまず街から数キロ離れることにした。
街を離れるにつれて、刀が帯びていた邪気が薄れていく。
暫くすると、邪気は無くなった。 リュウでも持てるほど、若干軽くはなった。
だが、次の瞬間....。
ガラガラ・・・・ッ!!
3人は、目を丸くして言葉を失った。
今まで、そこにあって確かに見ていた街が....消えた。
「ほらね?あんなに邪気を浴びていて、無事なのは変だったの。この刀が、それを防いでいたのよ」
オージェットは、そらみろ、といったように言葉にした。
「お見事じゃな。お嬢さん」
声がした。
....上から。
聞き覚え、見覚えのあるその人物に、リュウとミーナは声を揃えて人物の名を呼んだ。
「ユリーク!?」
「ジジィっ!?」
すぅ....と開く瞼。 その瞳は闇色、つまり魔族。
4人は、警戒して構える。
だが、警戒は必要無かった。 ユリークからは、サッドの時のような嫌な空気は流れていないのである。
「ついに、その刀を見つけたか。魔王様に報告しなければな」
ユリークは、何やら1人で納得して頷き、姿を消そうとした。 が、ミーナはそれを止めた。
「魔族の目的は何!?わたしに関係してるの?」
ユリークは、髭に暫く触れて考え込む。
そして、ニヤリと笑って答える。
「あるとも言えるが、ないとも言えるのぉ。今は....な」
ユリークは、消えて行く。
その瞬間、ユリークに数本の電撃の塊が貫かれて行った。
翡翠色のブロンドは消え、ボサボサした髪。 ドスの効いた声。 ちなみに、女ではない。
「っざけんNa!オレ達を元に戻しやがれ!!」
もう遅かった。
ユリークは既に消えていた。
不適な笑みを浮かべながら....。 ユリークは、消えながら言った。
”トゥルム国で...”と。
「勿論、行くんだろぉNa?」
頭に青筋を浮かべて、ゴッドが言った。
やはり、便利だとはいえ気にならない訳ではないようだ。
それは、ムム達も同じことである。
ゴッドは・・・いや、ゴッド達はコロコロと入れ替わりながら、文句を呟く。
トイレに行くのが・・・とか、食べ物の好みが・・・とか。
「で?どっちなんDa?」
紫色の瞳は、ミーナを見つめて語っていた。
あいつを・・・ユリークを打ちのめしたい、と。
確かユリークは言っていた。 ”トゥルム国で”と・・・。
ミーナは、碧い瞳で見返した。
ただ、黙って頷き立ち上がる。
そして、歩き出した。
ミーナ自身、気になることだらけだ。
己のこともよく分からない。 それが歯痒かった。
それを知りたいだけなのかもしれない・・・。
「それでも、俺等は進むしかない・・・・だろ?」
心を読まれたのかと思った。 ミーナは、目を丸くしてリュウを見た。
リュウは、子供のように笑っていた。
馬鹿の1つ覚えだの、なんだのと好きに言えばいい。
そう言ってるように聞こえた。
空は再び、晴天となる。
ミーナ達4人は、更に東・・・トゥルム国へと足を運び始めた。
「あーぁ、行っちゃった。」
「もぅ、パール兄がグズグズしてるから〜」
「うるせっ。いいじゃねぇか楽しみは後からの方が・・・。なぁ?」
「さぁ?どっちでもいいさ。それより、アイツが目を醒ますのも時間の問題だな」
ミーナ達が去った後、茂みに身を隠して話し込む4人の姿があった。
額には、紋章ではなく何かの石が埋め込んである。
この4人が、ミーナ達を苦しめることになるなど、今はまだ誰も知らなかった。
「トゥルム国・・・か。僕達も行こう。僕は、アイツに会いたい」
緑色の石を額に埋め込んだ少年が、瞳を輝かせて嬉しそうに言った。
その瞳の色は、闇色だった。
オージェット・マックスウェル:女性 水の紋章 翡翠色の瞳、翡翠色の髪 26歳