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―IF―シリーズ

IF-アストライア学園の日常―

作者: ウラン

こちらはリレー企画『輝ける星光』の関連作品、のパロディです。

今作の作者はウランです。

 私の名前は……教えてあげなーい。

 まぁ、いくらなんでもかわいそうだから、あだ名くらいは教えてあげよう。

 皆からは「ラグナ」って呼ばれてる。

 アストライア学園に通う、花の女子高生だ。

 そう、アストライア学園。

 そこには様々な個性的な人々……変人が居座っている。

 正直、超常識人な私にはハードな毎日だ。

 ……何? その人を疑う目は?

 まぁいいさ、とにかく、ここではそんなアストライア学園での日常の、青春の1ページをお見せしよう。




 さわやかな朝、日和見の頃合い。

 私は登校中、軽く手を口に当ててあくびをする。

 ――すがすがしい朝だ。

 こんな日は、気分が晴れやかになる。

 今日はいい一日になりそうだ。

 ふと、左を見る。

 そこには、黒髪の男が電柱に向かって吐いている姿が……。



 いや、すがすがしい朝だなぁ。

 でも、今日も嫌な予感がしてやまない、今日この頃。



「あっ、ラグナ、おはよう」

「……おはよう」

 教室に入った私を出迎えたのは、蒼の髪に朱い瞳を持った美少女、ではなく男。

 クラスメイトの霧川である。

「あ、寝癖がついてるよ。直してあげる」

「……ん」

 霧川は女顔ではあるが、紳士なのだ。

「頭下げて」

 言われた通りにすると、ジュボッ、という音が聞こえた。

 気になって上を見ると、霧川がライターで火をつけていた。

「ちょっとまっててね。今寝癖を直すから」

 ニカッ、とナチュラルな笑みを浮かべる霧川。

 ちょ、ま、ど、どうやって?

 突如、予鈴が鳴る。

「あ、席に着かなきゃ」

 普段から真面目な彼は予鈴の時点で席について先生を待っているのだ。

 ――助かった。

 時たまデンジャラスな霧川さんなのであった。




「今日の授業はこれで終わりだ。ちゃんとお家に帰って復讐しとけよ。俺のスーパーコンピュータにも劣らない頭脳と違って、お前らのちんまりした低脳じゃあすぐに忘れちまうからな、ヒャハハハッ」

 ハウエンツァ先生の不快な授業も終わり、放課後である。

 霧川は部活へ行った。

 さて、家に帰ってもすることもないし、そこら辺をうろうろしてみようかな。




 というわけで校舎裏である。

 いや、なんとなくさ。

 ふと、折れ曲がった背中を見つけた。

 事務員のアウロ婆さんである。

 歳にもまけず、よく働く霧川にも劣らぬ真面目な人だ。

 どうやら、授業で使った備品をかたずけているらしい。

 あれは確かハウエンツァ先生の科学の実験で使ったやつだ。

 まぁ、授業にかならず10分遅れてくる先生が真面目にかたずけをする姿など想像もできないが、いささか無責任ではないだろうか。

 しかし、それでもいやな顔一つせずに仕事をこなすアウロ婆さんは凄い人格者である。

 いやほんとうに、見習ってほしいよ、まったく。

 思考をやめ、再びアウロ婆さんに目を戻す。

 突然、アウロ婆さんの背中から黒い翼が片方だけ飛び出した。

「…………」

 ……全速力で逃げました。




 あれは夢、うんそうだ夢だ。

 だって、人間の背中からあんな悪魔的な翼が生えるわけないもの。絶対ない。

 それに、私には前科がある。

 いつの間にか眠っている件だ。

 保険委員会の先輩の手作りお菓子をご馳走になろうとした時とかによくあるのだ。

 と、私が気を取り直していると、鶏の飼育小屋が目に入った。

 そこにはフードを被った人物。

 あれは確か、3年のスキンク先輩だ。

 あ、ちなみに私は1年ね。

 んでもって例の保険委員会の先輩は2年。

 覚えておいてね。テストに出るから。

 ……冗談だよ。

 と、私が馬鹿やっていると、スキンク先輩はおもむろに膨らんだ袋を取り出した。

 嫌な感じにでこぼこしている。

 封を開けると、中から無数のトカゲが――

「――っ」

 またもや全力で逃げた私の耳には、スキンク先輩の妙な笑いごえが残っていたとさ。




 何だここは!? まともな奴はいないのか!

 傷心の私は、癒しを求めに家庭科室へと向かった。

 家庭科室とはいっても、うちの学校に調理部なるものはない。

 そのかわり、文芸部が活動の場としてつかっているのである。

 私には、文芸部に友達がいる。

 エレーナという、この学校で貴重なまともな女の子だ。

 私は家庭科室のドアを開けた。

 そこには、エレーナ一人だけがいた。

 元々幽霊部員が大半の文芸部だから、しかたのないといえばそれまでだが、人みしりの私にとっては好都合である。

 私はエレーナに声を掛けようとしたのだが――

「……やっぱりハウエンツァ×禾槻ですよねぇ。攻めは勿論ハウエンツァ先生で、受けは禾槻君…………はっ! 攻めが禾槻君で、受けがハウエンツァ先生ていうのは………………うふ、うふふ……」

 私はドアをゆっくりと閉めた。




 どうやら今日は文芸部の活動はなく、エレーナは既に帰っているらしい。

 ……私も帰ろうかな。




「のう、リリナよ」

「はい、いかがいたしましたか?」

 校長室、と銘うってある一室。

 そこにはこのアストライア学園の校長と教頭がいた。

 教頭は白い髪を首筋まで伸ばした、凛々しい顔付きの女性である。

 非常にクールで、感情表現が希薄、且つ無表情、というのがこの学校の先生生徒含めた意見だ。

 校長は非常に可愛らしい顔立ちをしており、華奢で色が白く、一見すると女の子にしか見えない男。

 これで三十路はとうに過ぎたというのだから、世の中わからない。

「……余らの扱いがひどくはないかの……」

「……いえ、他の方々と比べたらすこぶるマシではないかと」

「しかし、出番がこれだけとは……」

「校長と教頭など、学生生活の1コマにはいるのはせいぜい朝礼の時くらいです。出番があっただけ良かったと考えるのは不適切でしょうか?」

 そんな、校長室でのお話。

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