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7 無杖の実力

僕たちは選択を迫られていた。

十字路のうち何処に進むかだ。


「悩んでも仕方ないことだし、さっさと行こう!」


ただの迷宮ならメイの言う通りだが、ここは時間制限がある。

もし間違えれば、命取りだ。


「せめてあと2人いたらな。」


あと2人、、、そうか


「そうですよね!あと2人いや、3人いれば」


「え、急にどうしたの?」


僕は困惑するメイを横目に、床に手を当てる。


石造人間ゴーレム


周りのレンガが集まり、三体のゴーレムが立ち上がった。

僕はそれぞれを別の方向に向かせる。


「分身みたいなもん?何させるの?」


「階段を見つけたら、魔力を返すように設定しました。」


「ゴーレムが階段を見つけても、私たちはそこまで行けないんじゃない?」


うーん。確かに、、、

この十字路に戻ってくることは可能だけど、、、


「まあ、ゴーレムの魔力痕を追えば良いのか!

さすがラリルね。」


自己解決してくれて、助かった。


(通路に沿って歩け。階段を見つけたら、魔力を送れ)


ゴーレムたちは歩き出した。少し遅い事がネックだが、目を瞑ろう。


「僕たちも行きましょうか。」



20分程歩くと、地響きがなった。

レンガがガタガタと揺れ、上から土埃が落ちてくる。


「どうしたんだ?」


「誰か魔法を使ったか、それとも潮が戻ってるのかもしれないわね。」


「どちらにせよ、急いだ方がいいですね。」


僕とメイは歩き続けた。途中に幾つか十字路があったが、その度にゴーレムを作った。作ったゴーレムの数は数十体に上るだろう。


「よく魔力が足りるわね。私なら、最初の3体の時点で尽きてるわ。」


「僕にも理由は分かりません。でも、無杖は関係するかなと思っています。」


メイは首を傾げた。僕自身、こうは言ったものの、無杖との関係はわからない。


「分からなくても、利点は利点だしね。」


「そうですね。」


更に歩くこと10分。神殿のような場所に着いた。

大きな柱が立ち並び、左右には神話に登場する神々の銅像が置かれている。

天井は高く、ここを海中とは思わせない。

しかし、僕らが注目したのはそこじゃない。


「リア!」


メイが叫ぶ。

神殿の正面には磔にされたリアがいた。

空いた口が塞がらない。残酷だ。

僕らはゆっくりとリアに近づいた。

両手足が十字架に括り付けられていたが、目立った外傷は見えない。

僕らはゆっくりと縄を解き、リアを床に寝かせた。


解明ソリューション


メイはリアの体に杖を当て、呪い解析の魔術を使う。


「昏睡の魔法が使われているだけね。

 起こしても良い?」


「ええ、お願いします。」


メイは目を瞑り、再び杖を体に当てる。


覚醒リベイル


ーーーリア視点


何だか寝過ぎた気がする。

いつもなら、ローラが起こしてくれるのに。

何だかベットも硬い。私は柔らかいのが好きって言ってなかったけ?


「大丈夫?」


女性の声が聞こえる。結構幼い。

こんな声のメイドいたっけ?

でも、聞いたことある。

そうだ、あそこだ。海鮮屋であった冒険者。

確か、、、メイだっけ。

あの日は楽しかったなー。海も見れたし。

あれ?海行った後って何したっけ?

母様に帰るって約束したのに。


「帰らなくちゃ!」


目を覚ますとメイと知らない黒髪の男性が目の前にいた。

2人とも驚いたような顔をしている。


「大丈夫?リア。」


「どうしてここに?ここは何処?」


状況が分からない。ただ、自分の身に何か良くないことが起きたことしか。

2人は顔を見合わせて、メイが頷き、私の方を見た。


「どこまで覚えてる?」


「ええと。ローラと海に行って、何かされたことまで。」


「そっか、じゃあ今の状況を話すね。あっ!その前に紹介するね。

 こちらはラリル。無杖の魔術師よ。」


「無杖、、、」


そう言えば、凄腕の魔術師がルーモラに来ているって誰かが言っていた。

そして、かっこいい気がする。気がするだけ。


「ご紹介に預かりました。ラリル=メリートと申します。」


「敬語はよしてください。」


「なら、お言葉に甘えて。

 無杖の魔術師のラリルと言う。よろしく頼む。」


うーん。なんか違う気がする。まあいっか。


「動けそう?」


「うん。大丈夫だよ。」


「なら、少し話すね。」


メイは慎重に言葉を選びながら話してくれた。

話を聞いていくと、申し訳なさが増す。


「なるほど、取り敢えず時間がないのね。」


「ええ、リアが大丈夫ならすぐに行こう。」


「私は行けるよ。」


私たちは宮殿を出た。

ラリル曰く、出口が見つかっていないので、歩くしかないとのこと。


「そう言えば、ローラは無事?」


「ローラも誘拐された話は聞いてないね。」


安心した。ローラが無事というだけで、帰る理由が増える。


「みんなを巻き込んでしまってごめんね。」


「依頼だから。ねー」


「ああ。」


「ラリルも依頼を受けたの?」


「僕はユアという少女から。」


ユアって、あのレストランの?どうして?


「どういう依頼なのか、聞いてもいい?」


ラリルは少し黙り込んでから、私に訊いた。


「聞いたら、気分悪くするよ。」


「構わないわよ。」


ある程度、予想はできている。

聞く前から、申し訳なさが溢れ出る。


「ユアの父がこの誘拐事件の犯人として、冤罪をかけられたので

 その無罪を証明して欲しいと。」


やっぱり。父のやりそうなこと。

犯人を捕まえたことにしないと、領主としての威厳が下がるから。


「リア。別に貴方が気に病む必要はないのよ。」


「こうして、救い出せたわけだし。」


私は結局、我儘で迷惑をかけてばっかりだ。

何が冒険者だ。1人どころか、皆んながいないと生きていけないくせに。

視界が霞む。胸が熱くなる。


「リア、、、」


「おかしいな。冬なのに、どうして体が暑いんだろ?」


「僕は君のことをあまり知らない。でも、もし、ユアに謝りたいならば涙を拭け。

 ここで泣いても意味がない。」


「冷たいよ。ラリル。」


「ユアも君も生きている。後悔するのはまだ早い。」


私はラリルのことを知らないはずなのに、この言葉は深く私の胸に触れた。


「ありがとう。」


「感謝も帰ってからだ。」



歩くこと1時間。突然ラリルが止まった。


「ラリル、どうしたの?」


ラリルの額には汗が浮き上がっている。


「ゴーレムが破壊された。」


ゴーレムも破壊。つまり、そこには


「魔物がいる!」


この要塞内には基本魔物はいない。つまり、そこは地上に繋がっている。


「そのゴーレムのとこに行こう。」


私たちは早歩きで行こうとした時、

後方から私でも感じ取れるほどの魔力の気配がした。

一斉に振り返ると、そこには白と黒のローブを着た白髪の男がいた。


「やあ、御三方。私は骸安のメラクルス。花葬のマルヴァロスの臣下である。」


「何か御用かな?」


ラリルが私たちを庇うように前に出る。

その右手には杖を持っている。


「そこのリアという少女を返してもらおう。

 さすれば、出口まで案内する。」


気がつくと、周りに黒いローブを着て、仮面をつけた魔術師が集まってきている。

選択の余地なしか。


「すまないが、僕にも依頼がある。

 その誘いには乗り気じゃない。」


メラクルスの顔が険しくなる。

周りの魔術師が杖を持つ。


「致し方ない。」


メラクルスは杖を取り出そうとした時、ラリルが先手を打った。


「烈風」


「ちっ!無杖かよ。」


メラクルスは通路の奥に飛ばされた。

しかし、後ろの魔術師達が火球を放ってくる。

ラリルはすかさず後ろを向き、手をかざす。


水幕ウォーターカーテン


ラリルが指を弾くと、水が空中から滲むように現れ、薄い幕を形作った。

火球がぶつかるたび、水膜が波紋のように揺れ広がる。

しかし、一滴も破れず、火は瞬時に吸収されて消えていった。

ラリルは手で団子を作るようなジェスチャーをすると

水の膜も一つの水球となった。


水流砲スプラッシュ


水球は魔術師に向かって、一気に流れ出し、そのまま押し込んだ。


「こっちだ。」


ラリルに従って、走り出し、私たちもついて行った。

途中でどこからともなく現れた魔法陣の中からスケルトンが現れたが、

ラリルがすぐに吹っ飛ばした。


しかし、その度に足止めされ、ラリルの魔力が削られる。

これも骸安のメラクルスの力だろう。

私には何も出来ない。結局、、、


ーーーラリル視点


くそ、魔力消費が激しい。ただのスケルトン相手にここまで消費するはずがない。

取り敢えず走らなければ、奴に追い付かれる。


「ラリル、大丈夫?」


「たぶん、、、」


くそ!これも奴の魔術か?脳の奥が痛む。

呼吸も荒く、汗も凄い。

2人が心配そうに見つめる。


しかし、通路の奥で魔法陣が光る。


「どんだけ湧いてくるのよ!」


メイが叫ぶ。キリがない。僕1人では対処しきれない。

なら!


「石造人間!」


10体ほどのゴーレムが通路を埋めた。

(道を切り開け!)


「ラリル!魔力消費が」


「言ってる暇がない!」


ゴーレムの大軍はスケルトンを打ち砕く。

骨と石の激しい破砕音が響く。

僕達はその間をすり抜る。


「くっ!」


魔術を同時に使いすぎたか。体に力が入らず、膝をつく。


「ラリル!」


すると、目の前に魔法陣が現れた。

しかし、先程までのと紋様が違う。

魔法陣から黒煙が立ち上がり、それが人型の影になる。


「お前もワープできるのか、、、」


「やっと倒れてくれた。」


満面の笑みのメラクルスがそこに立っていた。


「無杖の魔術師は流石といったとこか。」


「お前もやる、、、じゃないか。」


呼吸がしづらい。眩暈がする。


「当然だ。私は二十四魔将だ。」


その声に色はなく、無虚であった。


「もう一度だけ言う。リアを渡せ。」


「何故、そこまでリアに執着する?」


リアが後ずさる。メイはリアを庇うように、リアの前に手を出す。


「いいだろう。リアが魔王様の復活に必要だからだ。」


「何、、、」


「つまりは生贄だ。」


リアは青ざめ、メイは罵倒した。


「ふざけないで!誰が生贄になるもんか!」


「ごめん。メイさん少し黙って下さい。」


僕の中で何かが切れた。頭痛も眩暈もしない。

ただ1点、メラクルスにだけ焦点が合う。


「まだ立ち上がれるとは驚きだ。」


「2人とも少し下がって。」


「ラリル、、、」


僕はおもむろに前へ歩き出し、杖を取り出した。

自分で体を動かしてるつもりはない。


氷槍アイススピア


氷の槍が杖の先から生み出され、メラクルスに向かって飛んでいく。


「雷球」


重ねて放つ。

メラクルスは魔法陣から巨大な骨を出し、凌ぐ。


「水弾」


メラクルスの防御なんて気にせず、魔術を撃ちまくる。段々と優勢になっていく。


「火竜砲」


炎が龍を描き、咆哮するようにメラクルスへ迫る。

空気が熱で歪み、レンガが溶ける。

メラクルスは魔法陣を構えるが、龍炎はそれを飲み込み、床ごと抉りとる。


「ラリル!」


衝撃波が心臓を揺らす。

奴は死んだのか?砂埃で何も見えない。


「瞬風」


メイが煙をどかす。そこには空いた穴しかなかった。

後ろでゴーレムと戦っていたスケルトンもただの骨となって、地面に落ちている。


「勝った、、、」


あれ?視界が暗く、何も見えない。



目を開けるとそこには満天の星空があった。

そしてメイが覗き込んでくる。


「起きた!起きたよー」


「良かったー」


リアも覗き込んでくる。そして、少し目が赤い。

それより、聞くべきことがある。


「メラクルスは倒せたのか?」


メイはすぐには答えなかった。


「もしかして!」


「いや、死んだよ。多分。あいつは二十四魔将だから、もしかしたらってことがあるでしょ。」


「とりあえず、私たちが要塞を出るまでは何も無かったから、死んだと思う。」


なら良かった。一安心だ。

まあ、僕が倒れたうえで、奴が生きていたらここにリアは居ないだろう。


「大丈夫?歩けそう?」


「ああ、問題ない。」


頭痛はするが気にする程のことでは無い。

敢えて言う必要はないだろう。


「なら行こっか!」


どうやらここは灯台から少し離れたとこにある。

つまり、目の前に広がる海全体に要塞が張り巡らされていふことになる。


「他のメンバーは無事か?」


「多分ね。さっき灯台に光の粒子が上がったから。」


脱出は出来ているのか。全員無事だと良いな。



「あ!メイーラリルー」


ガリアの声が聞こえる。

こちらからは何も見えない。

どんだけ視力良いんだ?


「みんなー」


メイが叫びながら、走り出す。

よく見えないが全員いるように見える。


「おお。戻ってきたか。」


「ひひ!」


突然、横からバースが現れた。

黒いローブを着ているせいか、暗闇と同化している。


「驚かせないでください。」


「そのつもりはなかったんだがな。」


バースは僕の手を取り、両手で包み込んだ。

僕もその上からもう一方の腕を重ねる。


「良く無事でいてくれた。」


「バースさんこそ。」


僕らがこんな感動的な再会をしていた時、

メイとガリアは踊っていた。

メイは疲れてたんじゃないのか?


「メイ、、、」


マルクスがガリアの後ろから現れる。

顔が赤い。もしや、、、


「マルクス!無事だったのね!」


「お前もよくb」


「ラリルさーん!」


あ、良いムードがラミレスによって破壊された。

ラミレスは駆け寄り、泣きじゃくった顔を僕の胸に擦り付ける。


「よ゛がったですー。無事でー」


「心配かけたな。すまない」


「ほんとですよ!どれだけ心配したと思っているんですか??」


何故僕が謝ることになったかは分からないが、、、


「リアも無事で何より。」


「ご迷惑をおかけしました。」


リアがお辞儀した。バースは優しくリアの肩を叩く。


「謝罪は結構。その代わり、礼が欲しいのー」


「はい。ありがとうございます。」


リアの顔はどことなく笑っていた。



ーーー???視点


「マルヴァロスとメラクルスが倒されたか。」


ある男が椅子に腰をかけ、呟く。

部屋に彼以外の人間はいない。


「マルヴァロスが倒されるのはいい事だが、メラクルスを失うのは痛いな。」


彼にとってマルヴァロスは政敵でしかなかった。

しかし、メラクルスは死者の軍を運用するのに最適だった。


「なあ、返事をしてくれないか?」


彼の隣には、笛を首にかけた少年が従者のように立っていた。


「どうされました?」


「話を聞いてなかったな。」


「申し訳ありません。」


少年は謝った。

彼はそれを許す。寛大な心からくる許しではない。

強さへの圧倒的自信からくる余裕だ。


「にしてもマルヴァロスを倒すパーティーが現れるとは。怖い怖い。

 君から見て、彼らはどうだった。」


「冒険者の中では上澄ですが、特筆すべき点は無杖の魔術師がいる事です。」


「無杖か。」


彼はニヤリと笑うと。少年の方を向いた。



「いつか会いたいね。」


「その前に、貴方様の計画で死ぬかもしれませんが。」


「そうかも。」


彼はケラケラと笑う。

夜が更けていく、、、




次回 リアの決断

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