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3 捜索依頼

 城門が見えてきた。グプタ村を離れてから二年程。久しぶりに中央連邦に戻ってきた。それにしても騒々しいな。鎧を着た兵士が目まぐるしく駆け回っているし、検問もある。


「そこ!止まれ。」


 一人も兵士が止めてきた。


「身分証を見せろ。」


 身分証?まあ、魔術協会の会員証でも見せればいいか。


「これでいいですか?」


 兵士は眉間にシワを寄せて、腰の剣に手をかけた。警戒されてる。


「お前、魔術師だな。少し付き合ってもらおうか?」


 魔女狩りか?この時代にそんな蛮行をする国はないと思うが……ここで断ったらより怪しまれそうだ。仕方ない。


「……分かりました。」


 そこから色々聞かれた。ここ一週間の動向や出自のこと。職業や使う魔術のこと。正直、過去のことを話すのは乗り気じゃなかった。


「疑ってすまなかった。」


 兵士は礼儀正しく謝罪した。彼も仕事なので責めることはできない。しかし、どうしてここまで厳しいのだろう。特に魔術師に対して。


「すいません。何か事件でも起こったのですか?」


「ああ。そんなとこだ。なんでも、グレイス家の令嬢が誘拐されたそうでな。一応、犯人は捕まったらしいがね。」


 犯人が捕まっているのに、令嬢は見つからないのか。まあ、すぐに売り飛ばされたとかそんなとこだろう。面倒ごとには関わりたくなしな。それにしても……


「なぜ魔術師を警戒しているんですか?」


「目撃者によれば、犯人は魔術を使っていたらしい。それも上級の。しかし、捕まえた犯人は魔術が使えないとか。だからだ。」


 なるほど。犯人は複数人で魔術師がまだ捕まっていないと言うことか。


「ありがとうございます。」


「礼をするのはこっちだ。気をつけろよ。」

 


 城門をくぐり、街に入ると外とはまるで別世界のようだった。目の前の大通りは大勢の人々が行き交っており、橋の方には露店がずらりと並んでいた。


「へい、兄ちゃん。一本いかがかな?」


 そばの露天商に串焼きを勧められたが、あいにく腹が減っていなかった。


「すいません。今、お腹減ってないので。」


「そうかい。残念だねぇ。」


 次の瞬間には、露天商は別の人に声をかけていた。呆れたものだ。


 大通りを歩くこと数分。街の景色が変わった。さっきまで、賑やかな商店街だった大通りは様々な種族がいるギ

ルド街になった。僕もこのあたりの宿を取るとするか。



 この宿は良さそうだ。大通りから離れていて、静かだ。交通の便は良くないが、寝る時まであんなにうるさいとたまったもんじゃない。初めてきた土地なのでセーフティーに行こう。


「すいません。一カ月程、宿を借りたいのですが……」


「はい。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「ラリル・メリートです。」


「ラリル・メリート様でございますね。了解しました。三階の三〇二号室をお使いください。では、ごゆくっり。」


 宿の宿泊も慣れてきた。お金がなくて野宿だった時から2年、宿を毎回借りられるようになった。それもこれも、グプタ村で稼がせてもらったからなのだが。魔物討伐で金貨三枚、家庭教師で金貨二枚。依頼内容からは想像できない大金で、今考えてみてもしっかり相場を教えておくべきだったかもしれない。


 宿の部屋は簡素だった。部屋にあるのは、ベット一つに暖炉一つ。今は十月なので夜、少し寒くなる程度。まあ、一週間もすれば暖炉の出番も出てくるだろう。


 バァン!


 隣の部屋で爆発音がした。暖炉に油ぶち撒けたか、それとも……。


(一応様子見に行くか。)


 廊下に出ると焦げた匂いが鼻を突いた。それに煙い気がする。でも、火事にはなってなさそうだった。なって、ないよな?


「あのー。大丈ですか?」


 ノックをして声を掛けたが、反応が無い。もしかして意識を失っているのかもしれない。


「入りますよ。」


 そう言って、万が一に備えて水球ウォーターボールを構えた。ゆっくりと扉を開けて、中に入ると一人の少年が倒れていた。そして暖炉側の壁が真っ黒に焦げている。


「君、大丈夫か?」


 もう一度、声を掛けたがやっぱり無反応。怪我をしていたらまずいので、一応、治癒魔術をかけた。炭が付いた顔を水魔術で洗い流し、目立った外傷はなく、呼吸もしているので、自室で寝かせた。


 それにしても整った顔立ちだ。胸には何やら紋章が付いている。良いとこの坊ちゃんだろうか?


「う、う。」


 少年が目を覚ました。そして周りをキョロキョロと見渡し、僕と目があった。少年は少しぼーっとした後、何か理解したようだ。


「あのー。助けて頂き、ありがとうございます。ご迷惑をおかけしました。」


 礼儀正しくお礼と謝罪をした少年は、ベッドから出ようとしてよろけた。


「まだ寝てた方が良いんじゃないか?」


「いえ。やる事があるうえ、いつまでもこの部屋にいるのは迷惑なので……」


 少年はそう言うと、部屋を出ようとした。しかし、僕は気になる事だらけだ。


「ちょっと待って。君はさっき、何をしていて事故になったの?」


 そう聞くと、少年は頭をポリポリ掻きながら、照れながら言った。


「お恥ずかしいのですが……」


 少年曰く、少年ははルーモラ魔法学校の生徒で、夏休み明けで実家から戻ってきたが、寮はまだ開いてなく、この宿に泊まった。それで、時間を持て余していたので、新しい魔術を考案し、実験したらこうなった。


「なるほど、新魔術か。どんな魔術だ?」


「えーと、火球を極限まで圧縮し、それを前方に飛ばして、爆発を起こす魔術です。」


 一つ分かったのは、屋内でやるものではないという事。しかし、火球の圧縮か。なかなか興味深いな。


「僕も少し興味がある。手伝おうか?」


 人との共同作業はあまり好きではないが、魔術のことなら妥協しよう。


「え!良いのですか。」


 少年は驚いた顔で小さくガッツポーズした。


「そう言えばまだ名前を聞いてなかった。」


「あ、そうですね。申し遅れました。僕の名前はラミレス・アタトゥルク。」


「僕はラリル・メリート。よろしくなラミレス。」


「はい。よろしくお願いしま」


 ドン!と勢いよく扉が開いた。そこには受付の人が立っていた。鬼の形相で。


「すいませんがラミレスさん。あの壁は何ですか。真っ黒じゃないですか。」


 その後ラミレスは修繕費を払ったうえで、受付の人にたっぷり叱られた。



 翌朝、朝食の席には僕とラミレスの二人しかいない。大通りから離れた所にあるからだろうか、僕とラミレス以外に宿泊客はいない。


「ラリルさんはどうしてルーモラへ?」


「うーん。何となくかな。」


 実際、目的はない。ただ各地を放浪してるだけだしな。ラミレスみたいにしっかりとした人生設計もない。


「そうですか。でもルーモラはいいとこなんでゆっくりしていってください。」


「そうさせてもらおうか。」


 朝食をとった後、僕たちは宿のから数分のとこにある公園に向かった。住宅街の中にあるため、あまり大きくな

いと思っていたが、魔術を使える程度には大きい。


「ここなら大きな魔法も使えますね。」


 今からやるのはラミレスが考案した新しい攻撃魔術「圧縮熱球プレスヒートボール」の実践。


「では行きます。……はっ!」


 杖の先に巨大な火球が生まれた。


 第一段階――火球ファイヤーボール

 第二段階――圧縮


 ラミレスの額に汗が滲む。火球が小さく、しかし密度を増してゆく。


「その調子だ、ラミレス。」


 その瞬間、轟音とともに火球が破裂した。


「ぎゃあああああ!」


 吹き飛ぶラミレス。地面に転がりながらも、生きていた。


「……出力が足りませんでした。魔力層が薄すぎたんです。」


 ラミレスは冷静に分析する。悪くない才能だ。分析できる者は伸びる。


「ラミレス、大丈夫か?」


 ラミレスは仰向けに倒れて、空を見つめていた。いや、虚空を見つめてるのか。


「ラリルさん。お願いしてもいいですか?」


 ラミレスは腕で目を覆いながら、今にも泣きそうな声で言った。多分、ラミレスも素質に問題があることに気づいたのか。


「いいが……」


 ラミレスは腕少しずらし、片目で僕を見ながら言った。


「僕にはできそうにないので、ラリルさん。お願いしてもいいですか。実験の続きを。」


 僕の魔力出力なら成功できるだろう。しかし、僕が成功させていいものか?


「僕がやってもいいのか?」


「はい……僕もいつか習得してあいつに見せてやりたいので……あ、今のは気にしないでください。」


 あいつ?まあいい。


「そうか。分かった。」


 なら、やってやろうか。頼まれたのだ。失敗はできない。真剣に行こう。


 まず、第一段階、火球ファイヤーボールの生成。これは問題ない。次に第二段階。魔力の層で火の玉を囲い、圧縮する。火球の魔力量と層の厚さ、圧縮スピード。三つにバランス良く、魔力を送る。

 緻密な魔力操作が必要だ。何とかさっきのラミレスと同じとこまでたどり着いた。そして第三段階、射出と破裂。火の玉を前に飛ばし、標的の目の前で層をなくす。

 

 圧縮熱球プレスヒートボール

 

前方にあった積まれた木の空箱は一瞬にして吹き飛んだ。成功だ。


「ラミレス。成功したぞ。」


 ラミレスはゆっくり起き上がり、笑いながら言った。


「ええ、そのようですね。ありがとうございます。」


 ラミレスは手を差し出した。僕もその手を掴み握手した。ラミレスはいかにも満足気な様子で「お祝いしないとなー」とスキップしながら言った。お祝いするほどか?と思ったけど、本人がしたいならしてやるか。


 ザワザワ、ザワザワ


 気づけば、僕らの周りには大勢の群衆がいた。まあ、あんな爆発起こせば、人も来るか。


「はい。どいて、どいて。」


 群衆の中を切り裂くように一人の兵士がやってきた。


「えーと、君!ここで何してた?」


 兵士が僕に向かって言った。ただ、そこ顔には面倒事起こすなよという僕への静かな怒りがあった。


「これはどうもすいません。僕らは魔術の実験をしてただけで……」


 兵士は口をへの字に曲げ、腕を組んで、いかにも疑問がありますのポーズをとった。


「僕ら?お前しかいないだろう。」


「え?」


 僕は周りを見渡して、気づいた。あいつ、スキップで帰りやがった。


「まあいい。今度から魔術の実験をするなら場外でやれ。」


「あっ。すいません。」


 そう言って、とぼとぼと宿に戻った。ラミレスの部屋の前で杖を取り出して、ドアを開けた。


「あ、ラリルさん。遅かったですね。あれ?なんか怒ってます?」


 僕は杖をラミレスに向けた。


 雷鎖サンダーチェイン


 ラミレスは動けずに痺れて、うめき声を発した。


「なな、何するんですか。」


 流石に可哀想だったので、解放してやった。そして、ラミレスが先に帰った後、何が起こったかを事細かに説明した。


「すいません……」


 ラミレスはトホホといった感じで椅子に座って、小さくなっていた。まあ、反省してるしいいだろう。


「今日の晩飯は僕が奢ります。実験協力も感謝と……謝罪も兼ねて。」

 


 夜。僕たちは大通りに出た。僕はルーモラには初めて来たので、ラミレスが案内してくれるらしい。しかし、


「向かっている方は冒険者街じゃないか?」


 普通、商店街の方に行くだろう。ルーモラ初心者の僕でもわかる。ラミレスはドヤ顔で言った。


「本当の名店は冒険者街にあるんです。」


 そうなのか。僕の行った街では冒険者街には飲み屋しか無いが。まあ、ついて行ってみるか。不安だが。


 少し歩くとラミレスはギルドに入った。どう見ても食事処じゃないが、ラミレスを信じよう。ラミレスは「少し待っていて下さい」受付に行って何やら話している。

 僕は暇なので、依頼を見ていた。すると、袖を引っ張られた。

横を見ると少女が涙汲んだ目で僕を見つめていた。


「ど、どうしたのかな?」


「お兄ちゃん強いよね。さっきすっごい魔法使っていたもん。」


 ああ、圧縮熱球のことか。あの群衆の中にいたのか。そんなことより。


「依頼かな?」


「うん。依頼だけどまだ私、依頼出せる年齢じゃなくて。皆んなに頼んでるんだけど、報酬が低いって断られて……」


「まあ、一回。内容を聞こうかな。」


 少女はそういうと、顔を上げて懇切丁寧、では無いがに説明してくれてた。


「今、王女様が行方不明になっているのは知っているでしょ。その犯人が私のお父さんだって言われて、連れて行かれたの。」


「君のお父さんは犯人じゃないってこと?」


 少女は力強く頷いた。そうか、冤罪か。つまり、真犯人の逮捕か……


「それで報酬はいくらかな?」


 少女は俯きながら、小さい声で言った。


「銅貨三枚です……」


 銅貨三枚……。少なっ!普通、この手の依頼は金貨数枚だ。幾ら何でも少なすぎるだろ。


「お、お父さんを助けてください。お願い……します。」


「どうかしたんですか?」

 

 ラミレスが気付けば横に立っていた。右手には店のパンフレットを持っている。どうやら、オススメの店を聞いていたらしい。


「いや、この子の依頼を聞いてただけだ。」


 ラミレスも僕と同じ説明を聞いた。するとラミレスはハンカチを取り出して、泣き始めた。


「そうか、そうか。何て可哀想な。僕が必ずお父さんを助けて出してみせる。」


「おい。簡単に口約束するな。そう簡単な依頼じゃ無いぞ。」


 ラミレスはムッとした表情で僕を睨んだ後、腰を曲げて少女と同じ目線で言った。


「安心して。真犯人は僕達が捕まえる。銅貨三枚が何だ。大切なのは人の心だろ。」


 綺麗事だけど、正論だ。しかし、犯人探しか。誘拐事件の発生が約一ヶ月前。その間もルーモラの兵が捜索して、王女を救出できてない。難航しているのだろう。


「ラリルさん。犯人を探しましょう。」


 ラミレスの目は至って真面目だ。確かに父がいないのは可哀想だ。子供の涙に僕は弱い。


「それに、犯人を捕まえるってことは王女を助けることにも繋がるでしょう。そしたら、王からお金が貰えます。」


 ラミレスが小声で言ってきた。結局は金らしい。まあ、いいだろう。偽善だとしても王宮は王女が帰ってきて、少女はお父さんが帰ってきて、僕らはお金が貰えて、良いことづくめだ。


「よし!探すか。」


「そうこなくちゃ。」


「ありがとうございます。」


 その後、少女ユアから当日のことを詳しく聞いた。王女リアが街に出てきたこと。夜飯をユアの店で食べたこと。翌日、市場で会ったこと。その後、城外に行ったこと。


「なるほど。誘拐場所は城外ですね。」


「どうしてそう思う?」


「城内で誘拐しても城門を抜ける時、荷札を見られます。実際、奴らなら潜り抜けることはできるでしょうが、わざわざそんなリスクを負うとは思えません。それに城内は人が多いので犯行は困難だ。」


 なんか探偵っぽいな。心強い。しかし、城外は範囲が広い。


「何処で誘拐されたか、心当たりない?」


 ユアは人差し指を顎に当て、考えた。最後に会ったのが商店街なら分からないだろうが。


「多分。海ですね。」


「海?なぜ?」


「お嬢様は貴族の束縛が嫌で自由を求めてました。海といったら自由の象徴。見たくなるはずです。」

 妙に納得してしまった。海は自由の象徴か。


「海を見るとしたらどこですか。」


「見に行くとしたらルーモラ港ですかね。ここから一番近いですし。」


「ルーモラ港……ラリルさん。明日、行ってみましょう。」


「そうだな。」


 ルーモラ港はルーモラの外港で行き交う人も物資も多い。犯行はしにくいと思うが。

 


 翌朝、僕達はルーモラ港に向かった。もしもの時のためにユアは置いてきた。盗賊団と万が一戦闘になった時、危険だから。


「朝はやはり漁業者が多いですね。」


「聞き込みをするか。」


 卸し売り場の人達に聞き込みをしたが、皆知らないと首を横に振った。それどころか、不機嫌そうに無視された。


「どうやら兵士達にも聞き込みを何度かされたそうですね。」


「不機嫌な理由はそれか。」


「これじゃ聞き込みどころじゃ無いですね。どうしましょう。」


 僕達は砂場に座り込んでいた。きた時には半分しか出てなかった太陽は真上に来そうだった。


「やり方を変えよう。誘拐する時、魔法を使った……と仮定して、魔力の痕跡を探す。」


「流石、ラリルさん。それです。」


 僕達は魔力の痕跡を探した。日常的にも魔法は使われているので、しっかり何の系統の魔術が使われたかを分析しなければならない。


「ラリルさーん。こっちの痕跡も違いまーす。次はあっち見まーす。」


「分かった。頼む。」


 ラミレスと少し離れて作業した。ほとんどは移動魔術で時たま治癒魔術がある程度。


「うん?」


 攻撃魔法の痕跡があった。長く伸びているので、風魔法だろう。


「ラミレスあったぞ。」


「本当ですか。」


「たぶん、ここで誘拐された。」


「そうなるとあの倉庫らへんに連れてくでしょうか。人気もないですし。」


 ラミレスが指を指した方向には、錆びた船を入れるための倉庫があった。今は使われていないらしい。

 


「大きいですね。」


 近くで見たらより迫力がある。真っ暗で錆びているので、まさしく犯罪に使えそうだ。


「探知しても反応はないな。」


「では入りましょう。」


 中には缶や網が散らかっており、棚も所狭しに置かれていた。


「そろそろ船置き場に行きますか。」


「そうだな。」


 扉を開けると広い空間に出た。扉の隙間から風が抜ける音だけがする。


「何も無いですね。」


「まあ、当たり前だな。」


 帰ろうとした時、足音がした。僕は杖を取り出し、臨戦態勢をとった。


「どうしたんですか?」


「しっ!誰かいる。」


 ラミレスも杖を取り出し、背中合わせで警戒した。


 サッ


 足音がした。ドラム缶の後ろ。僕は風弾ウイングショットを放ち、ドラム缶を吹っ飛ばした。


「ヒイィ」


 そこには茶髪の女の子が頭を抱えていた。僕が一瞬戸惑った隙に一人の男が剣を抜いて迫ってきた。物凄いスピードだ。


「どうしましょう?ラリルさん!」


 杖に凍気を込める。


 フローズンブラスト


「なっ!」


 剣士の下半身は氷で包まれ、身動きが取れなくなっていた。しかし、剣士は笑った。


「今だ!バース、ガリア。」


 すると地面から生えてきた根っこが足に巻きついた。上を見上げると斧と盾を持った男が落ちてきた。

僕は地面に風弾ウイングショットを放ち緊急回避。

しかし、ラミレスは避けきれず戦士の盾を受け、気絶した。


「終わりだ。」


 戦士は斧を振り上げ、迫ってきた。魔力を杖に込め、目の前に風の渦を作る。


 烈風ゲイル


 戦士とその後方にいた剣士は壁に叩きつけられた。


(後二人!)


 後ろに振り返った瞬間、目の前に杖を突きつけられてた。


「杖を捨てなさい。」


 僕は杖を捨て、手を上げた。魔術師が杖を拾おうとした隙見逃さずに電撃エレクトロニックを放った。


「杖……無しで……」


 魔術師はヨロヨロと仰け反った。僕はその隙に杖を拾い、魔術師、剣士、戦士をサンダーチェーン鎖で拘束。すると、残った治癒魔術師らしき少女が出てきた。両手を前方に出して、戦いはやめましょうのポーズをとっている。


「あの。もしかして、ラリルさんですか?」


 僕は驚いた。いや……


「自分のことを知っているなら何で攻撃してきたんですか?」


「杖を使わずにそれも無詠唱で魔術を使うのは私の知っている限りあなただけなので。杖無しで攻撃するまで気付きませんでした。」


「なら、あなた方は誘拐犯では無いと。」


「はい。なんなら、私たちは誘拐犯を追っています。もしかして、あなた達も?」


「ええ。」


「そうでしたか。そしたらすいません。」


 少女は頭を下げた。まあ、僕が先に攻撃したので、一応謝ろう。


「僕もすいません。しかし、誘拐犯逮捕の依頼というのは?」


「実はギルドに王女様の捜索依頼が出てたので、彼女と知り合いだったのもあって……」


 うん?聞き間違えか?王女様と知り合い?


「あのー。知り合いとは?」


「王女様が街に出た時、海鮮食堂で会ったんです。たぶん、依頼したのは同伴していたメイドでしょう。」


 なるほど。王宮側もギルドに依頼を出していたということか。つまり……


「目的は一緒ですね。」


「犯人の逮捕と王女様の捜索。そうでうね。なら協力しませんか?」


 確かにこのまま探しても犯人を捕まえるのは無理だろう。戦った感じ、このパーティーは強い。信頼できるかはさておき。


「いいだろ」


「ちょっと待った!」


 いつの間にか起きていた剣士が止めに入った。状況が飲み込めて無いのだろう。


「マルクス。落ち着いて。この人も犯人を追っているのよ。それにほら。話題のラリルさんだよ。」


 マルクスは驚いた顔で僕の方を見た。まるで「こいつが?」とでも言いたげな顔だ。


「どうも、マルクスさん。初めまして。」


「ふん!」


 マルクスはそっぽを向いて、メイの方に歩いて行った。メイは苦笑いしながら言った。


「紹介するね。剣士のマルクス。あっちで寝っ転がっているのが戦士のガリア、こっちで寝っ転がっているのが魔術師のバース。そして、私が治癒魔術師のメイ。『オヌールの目』というパーティー名で活動してます。」


 メイが魔術師と戦士に治癒魔術をかけると二人も目を覚ました。目を覚ました二人に僕のことを説明して二人は納得した様子だった。


「よろしくな。ラリル。」


「よろしくお願いします。ラリルさん。会えて嬉しいです。」


 出会い方はアレだけど。まあ、一件落着ということで。ラミレスには後で説明するとするか。

次回 パーティー結成

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