魔王の刻印
【フハハハハ!世界を滅ぼす力を秘めし右眼が!疼く!アハハハハ!!】
「・・・ついに壊れましたか?」
【暇なので厨二病とやらの真似をしてみました。如何ですか?】
「その感想を私に求めないで下さい」
朝起きたら私は部屋に閉じ込められて居ました。なので暇を持て余しているのです。
その時目に入ったアルの「ある仕草」
あ。
「違うようで、同じ・・・」
【ルト?】
「あ、いえ。ただアルと私は色素が逆でしょう?私は黒髪紫目でアルは白髪緑眼で」
【確かにそうですね。それが?】
「ですがアルと私の癖って同じなんです」
【!・・・前の主の癖が貴方と同じで私も癖が移って居たから、ですかね】
「成る程。そういう事ですか」
普段アルは私と2人きりの時以外は姿をスキルで消し私以外に見えない様にしています。故に久方ぶりに実態で会話をしました。
流石に我慢出来なくなったその時。
「お待たせいたしました。教会の方」
「!」
「長らく放置してしまい、申し訳ありません。準備が整いましたのでご同行願います」
「誰が従うと、、!!」
男の手に握られていたユウガオのペンダント。
「返して下さい!」
「ならばご同行を」
「ッ!!」
【ルト。十分に警戒してくださいね】
分かっています。分かっていますが・・・逆らえないこの状況が恨めしい!!
連れて行かれたのは屋敷の地下。地下に湖?何故、、
【黒い水・・・真逆!!】
「アル?」
【ルト!今すぐ逃げて下さい!】
「ですが!」
「気付いたかね?」
「!」
「良い所に生贄が来てくれた物だ。きっと魔王様も喜んでくださる」
「魔王・・・!まさか貴方の息子に刻まれた魔王の印は!」
「あやつは私の息子だと言うのに魔王様を愚弄した!魔力を全て魔王様の糧として貰っただけ光栄だろう!」
「!!!!」
この男の羽振りが良かったのは魔王からの恩恵という訳ですか!
「人の命を何だと・・・!!」
「何を怒っているんだね?君はこれから魔王様へ捧げる供物となるんだ」
「誰が喜ぶと!」
体から一気に力が抜ける。全身が麻痺した様に動かない。何が、何が起こって!
「丁度聞き始めたみたいですね。知らない人からの食事には警戒しろと教わりませんでしたか?」
「食事・・・昨日の?!」
【東に存在するヨモツヘグイですか。不味いですね・・・ルト!動けますか?!】
無理です!そう叫ぶ事すらままならず。私は数人の男たちに持ち上げられ・・・湖の中に放り込まれた。
「え」
【ルト!!】
アルの絶叫と共に私は意識を手放した。
◇◇◇◇
『起きろ』
声がする。誰・・・?
『起きろ』
腹部に激痛が走り強制的に覚醒させられる。
「ゲホッエホッ!」
『起きた。寝坊助』
「此処は?」
『此処は我の境界。何が目的』
「生贄として捧げられて、それで、、!アルは?!」
『誰かは分からないけど。帰りたい?』
「当たり前です」
『そう』
何故か、少し寂しそうに見えた。
『なら、丁度良かった』
「?」
『中央を司る魔王、ポラリスが命ずる』
床に展開された契約陣。
『新たなる厄災に祝福を。此処に縁を結び、我が命を代償に力を譲渡す』
「?!何を!」
『古の約束は果たされたし。我が戦友にご加護を。運命に抗わんとする力を、与え給え』
‐契約完了‐
「消え、た?」
何だったのでしょうか何故私に力を。
【ルト!】
「アル!」
【漸く繋がりました!こちらは全て片付けました】
「有難うございます。ペンダントは?!」
【大丈夫です。それよりも・・・】
「?」
【《中央星の加護》、《死し得うる祝福》、《反魂の秘技》に加え《精神攻撃耐性》、《物理攻撃耐性》、《攻撃力向上》、《薬物並びに毒耐性》を獲得しています。何かしましたか?】
「!・・・特に何も」
【そうですか。早く戻って来てください。境界は《カルマ 終焉の裂傷・欠》で破壊出来ます】
「分かりました。《カルマ》」
終焉の裂傷・欠はあらゆる物、魔力をも切断する事が出来るカルマ。故に軽々しく使うと一撃で国を破壊しかねない。
「《終焉の裂傷・欠》」
◇◇◇◇
「!」
体が動く。戻って来れたのですね。
【ルト】
「アル。あの本当に」
【本当に貴方は大馬鹿者ですね!アレだけ警戒しろと!はぁ。これだから最近の者は!】
「酷くないですか?!」
【とにかく!・・・無事で良かったです】
「ハイ。有難うございます。あ、あのゴミは?」
【きっちり処分しました】
「流石です。次は何処へ?」
【暫く野宿ですかね・・・】
「・・・カルマは?」
【《カルマ 宵と暁の背徳者》は一応使えますが如何せん魔力探知されやすいです。教会の手の者が聞き込みした時に貴方の事も伝わってしまいますから】
「・・・野宿で」
【そうしましょう】