病に侵されて
「ここがヘロデの街、ですか?」
【その筈・・・なのですが】
そこはアルから聞いていた街の様子とは程遠く。重苦しい雰囲気が漂っていた。
「一体何が・・・」
街を歩いていく。外出している人が少ないですね。
「取り敢えず、食料を確保しなければ」
近くにある店らしき建物の中に入る。
「すみません。誰かいらっしゃいますか?」
返答は無し、ですか。どうすれば、、
「今は店、全部やって無いよ」
「!」
いつの間にか後ろにいた十歳くらいの女の子。
「えっと、全部と言いますと?」
「お兄さん知らないの?領主様の息子が不治の病にかかちゃったんだよ。だから、皆んな怖がって出てこないの」
「不治の、病ですか」
「そう!ねぇ、お兄さん。家に泊まらない?」
「はい?ですが部外者を」
「良いの?!ありがとう!じゃあ行こっか!」
「はい?!」
【わぉ】
「驚いて無いで助けて貰えますか?」
【喋る余裕があるなら助ける必要は無いかと】
そんな事を言ってる間に女の子は私を街外れにある家に連れて行きました。
「お母さん!お客さんがいるの!」
「だめじゃない、勝手に外に出ちゃ・・・どちら様?」
「旅のお兄ちゃん!連れて来た!」
「はぁ・・・娘がご迷惑を・・・」
「い、いえ、こちらも宿に困っていましたから。・・・あの、領主様の御子息が不治の病にかかった、というのは」
「本当です。不吉な話ですよね。この街に異端者が現れた事が無いので教会の方々も結界を張ってくれなくて・・・」
【結界が張ってないとなると、魔物の仕業、とも考えられますね】
魔物・・・ですか。確かに、視野に入れておいた方が良いかもしれませんね。
「夕飯が丁度出来た所なんです。入って下さい」
「では、お言葉に甘えて」
「お兄さん、お母さんのシチューは絶品なんだよ!」
「そうですか」
初めてマトモな食事が食べれそうです。ちょっと感動・・・。
【ルト】
「?」
【・・・いえ、何でもありません】
「・・・?」
「お兄さん!食器運んで!」
「あ、はい。分かりました」
その後夕食を食べ私は眠りに付きました。
◇◇◇◇
「ありがとうございました」
「いえ、またいつでもどうぞ」
2人にお礼を言い再び街に向かう。
「昨日、何を言おうとしたのですか。アル」
【・・・ルト、体に異変は?】
「いえ、特には」
【・・・そうですか。領主の所に行って見ましょう】
「どうするおつもりで」
【良いから】
「・・・拒否権は」
【あるとお思いで?】
ですよね。私はアルの言う通りに領主の屋敷を訪ねました。
「すみません。教会から派遣された者です領主様にお会いしたいのですが」
元教会の人間ですから嘘は付いていませんよね。えぇ。
「分かりました。付いてきて下さい」
・・・やけにあっさり信じますね。
「こちらへ」
通された部屋は寝室の様ですね。眠っているのが領主の息子ですか。
「寝ているだけに見えますが・・・」
胸元の印に目が行く。この印・・・何処かで。
【魔王の印ですね】
魔王の印?!何故其れが胸元に、?
「どうしましたか?」
「っいえ、」
見えて無いのでしょうか。
「あの、この印は・・・」
「見えるのですか?!」
「は、はい」
「なんと!至急、この者をもてなしなさい!」
「・・・へ」
【ほぅ・・・】
「あぁ、そんな所に突っ立ていないで!早く着替えを!」
「ぇ」
あっという間に上質な服に着替えさせられ。
「ぇ」
豪華な食事が並ぶテーブルの椅子に座らされ。
「え」
私は大変困惑していました。
【えとしか言えない機械にでもなったのですか。ついに壊れましたか?】
酷くないですか?
【感想を述べたまでです】
「・・・」
その時豪奢な扉が開き現れた丸々と太った男。アレが領主?家畜の豚では無くて?
「いや〜まさか教会の方が来てくれるとは!光栄ですなぁ!」
「こちらこそ。必ずやお力になってみせます」
「頼もしいですなぁ!」
男が向かい側の席に座る。
「どうぞ食事を楽しんでくれ!」
「はい」
ステーキなる物を切り口に運ぶ。美味しいですね。
「貴方は普段何を?」
「私は領主ですぞ!領民の事を一番に考えてますぞ」
「そうですか」
そんな体で良く言えましたね。この豪華な食事も、やたら綺羅びやかな部屋。一体何で私腹を肥やしているのやら。
【目が笑ってませんよ。笑顔も胡散臭くなってます】
うるさいですね。私は役者じゃ無いんですよ?!
【なら尚更頑張って下さい】
理不尽。酷いです。
「そういえば息子の事はどう思ったかね?」
「一見すると眠っているみたいですね。後胸元に刻まれていたあの印は」
「やはり眠っているだけに見えるようだな!早く目覚めて欲しい物だ」
話を逸らされた?
(感づかれては不味い事がある、ということでしょうか)
なかなかにきな臭いですね。魔王の印、でしたっけ。調べてみる価値はありそうです。
「それでは客室にご案内を!」
「ありがとうございます」
食事を終わらせ客室だという部屋に通される。
「其れは、いい夜を」
扉が閉まる音と同時にカチッという音が聞こえた気がした。