違和感
何故サルンは来なかったんだ?サルンは魔女だ。仕事についている訳じゃあるまいし。
朝の祈りをしながら思考を巡らせる。
「・・・まさか」
昨日新しい厄災が見つかった、と言っていた。
けれど、もしこの仮説が正しいとすると・・・。
「サルンが危ない」
助けないと。
その為にはまずここから抜け出さないといけない。
窓は聖堂にある大きなステンドグラスで出来たウィンドウ、食堂に5つ、私の部屋を除いた全ての部屋に1つずつ。後は・・・。
(窓以外の出入り口は門番のいる正面入り口のみ)
強行突破?いや、それは難しい。まず1つ体格差がありすぎる。
誰かの部屋に忍び込んでその窓から抜け出す?
いやそれよりも確実なのは。
(渡り廊下から中庭に出て隣接する森林からの脱出)
問題は私がいないと気付かれた場合。
・・・やるしかない。
(ラルヴァ。貴方の事、利用させてもらいます)
朝食を早めに済ませラルヴァの執務室へと向かう。
「ラルヴァ教皇様」
「ルト。どうしたんですか?」
「少し、外で祈りを捧げて来ます。外聖堂の使用許可を」
「・・・良いでしょう。あまり遠くに行かない様に」
「ありがとうございます」
外聖堂。朝、昼、夕の祈りで使われている聖堂から離れた場所にある広場の事。その門は普段硬く閉ざされており人の出入りは殆ど無い。そして使用するさいには必ず教皇からの許可が必要。
「教皇の一番弟子」というレッテルがある以上ラルヴァは断る事が出来ない。
そして外聖堂は森林と隣接している・・・!
「これで抜け出せます」
念の為門の鍵を閉め、森林を走り抜ける。
邪魔になったストラは途中で外しました。ついでにカソックを脱ぎ捨て部屋から持って来た平民の服に着替える。流石に動きにくいですから。
「急がなければ・・・!」
もうすぐ日が落ちる。早くしないと間に合わない。
「すみません」
「ん?何だね嬢ちゃん」
私は男なのですが。
「この近くで異端者狩りが行われてませんでしたか?」
「おぅ、それならさっき狩人の兄ちゃんが魔女を広場に連れていって」
「ありがとうございます!」
男性の言葉を最後まで聞かずに走り出す。
普段から余り外出してないのが裏目にでた。息が苦しい。体が鉛の様に重い・・・!
それでも何とか広場に駆け付ける。
「!間に合っ」
その直後、火が放たれた。