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08 婚約者 VS 侍女

お読みいただきありがとうございます。


 4年後、スカーレットは領地から出て、王都の屋敷で過ごすようになった。


 それからルーファは毎日のようにスカル侯爵の屋敷に通ったが、スカーレットに「用もないのに毎日来てはいけません」と叱られた。

 そのため、ルーファは「スカーレットに会うため」という理由付けで毎日訪れることにしたのだが、「わたくしに会うというのは用事になりません。そのためだけに来てはいけません」とまた叱られた。


 だから、毎回持っていっていた花やプレゼントを届けるためという言い訳をすることにしたのだ。

 正直、自分の王子という立場を気にせずにスカーレットが叱ってくれることもルーファは嬉しかった。


 スカーレットの勉強部屋の中を見れば、机の上には昨日ルーファが持ってきた白百合が飾られていた。

 なんだかんだとルーファを叱りながらも、スカーレットがルーファからのプレゼントをぞんざいに扱ったことはない。

 昨日、あの白百合の白さがスカーレットの白さをより一層引き立ててルーファの目を楽しませてくれたのだ。


 ふと、スカーレットの後ろに立っている侍女の険しい目に気がついた。


「マーサ、何か言いたげだね?」

「一介の侍女が……たとえ、スカーレット様のことを誰よりも知っているとは言えども……一介の侍女が、王子に物申す事などできません」

「僕はスカーレットの婚約者だ。未来の伴侶だ。つまり、未来の伴侶の使用人は僕の未来の使用人だろう? 未来の使用人には温情を与えよう。発言を許す」


 マーサの眉間には不満を表して深い皺が寄った。


「スカーレット様には白百合のような花よりもマーガレットのような可憐な花の方がお似合いです」


 骸骨になり感情が希薄になったスカーレットは驚きはしないものの、ゆっくりとマーサを見た。

 そして、まさか昨日からそんなことをずっと考えていたのだろうかとすこし呆れた。


「確かに、スカーレットはマーガレットのような愛らしさも兼ね備えているけれど、白百合のような堂々とした華やかさもあるじゃないか?」

「もちろん、そうした華やかさもスカーレット様の魅力のひとつではありますけれど、マーガレットの方がスカーレット様の優しさを表現していると思いますわ!」


 二人の言い合いを聞き流しながらミントティーを淹れたスカーレットはルーファの前に「どうぞ」とカップを置き、もうひとつのカップにミントティーを注ぎ終わるとマーサに「落ち着きなさい」と渡した。


「わたくし、ミントのお花も可愛くて好きですよ」


 スカーレットの言葉にルーファもマーサも早口で言った。


「「もちろん、ミントの花もよく似合っている!!」おります!!」

「では、お茶を楽しみましょうか」


 ルーファもマーサも正直、ミントの花がどのような花だったのか思い出せない。

 しかし、可憐なスカーレットが可愛いと言うのだからきっと愛らしい花なのだろうと思う。


 婚約者と侍女がカップに口をつけたのを確認して、スカーレットは再びスライムにカップから紅茶を注ぎ、喉の辺りのスライムの動きで紅茶がすっかり冷めてしまっていることを知った。



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