05 無駄のない人生
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そして、四周目の人生では王からの王子たちとの婚約打診は全て断り、屋敷にこもって魔法を学ぶことに邁進した。
そして、王太子が王となり、宰相であるスカル侯爵を追い出すべく、侵略戦争の指揮を取るように命を下した時点でスカーレットは死んだ。
ちなみに、二周目はスカーレットの曽祖父がすぐにスカーレットの魂の時を戻してくれなかったがために両親が辛い思いをすることになったので、スカーレットは自分が死んだらすぐに時を戻して欲しいと曽祖父である高級ローブを纏った骸骨にお願いしていた。
四周目の人生が一番無駄がなかったと判断したスカーレットは同じような展開の人生をその後八周目まで繰り返し、八周目の最後を迎えた時、スカーレットはとうとう曽祖父に認められた。
「今の其方の魂ならば、わしの力を受け入れることができるだろう」
そうして、スカーレットは曽祖父の力を手に入れて時を戻り、骸骨令嬢となった。
九週目の人生。
生まれる前まで時を戻ったスカーレットは、あらゆる魔法を駆使して、母親の懐妊の時期を6年も遅らせた。
自分が王太子や第二王子の婚約者候補になったのは彼らと年が近かったせいでもある。
骸骨の姿で生まれるのだから、婚約者になど選ばれるはずはないと思いたかったが、スカーレットはこれまでの人生で何度も王の判断基準が自分勝手でおかしいところを見てきたのだ。
念には念を入れて、王子たちの婚約者にならないように生まれる時をずらし、そして、骸骨の姿で生まれた。
その姿で生まれては産婆や母を卒倒させ、母の命を危険に晒すかもしれないと思ったスカーレットは、魅了の魔法を使い、周囲の人間の驚きを和らげた。
魅了の魔法はかなり便利だった。
スカーレットの姿に恐怖したり嫌悪する心を和らげて、逃げ出したり攻撃したりすることを防いでくれた。
さらに、人生九週目で礼儀作法が完璧なスカーレットに好意さえ抱かせることに成功した。
元々温厚で優しく愛情深い両親はもちろんのこと、仕事熱心で忠実な使用人たちにもスカーレットは好かれた。
もちろん、魅了の魔法を使っても骸骨の姿のスカーレットへの恐怖心や嫌悪感が完全に消えない者もいたが、そうした者たちからスカーレットが虐げられることはなかった。
なぜなら、そのような様子を見せた使用人は他のスカーレットに好意的な使用人たちによって翌日には追い出されていたからである。
スカーレットは骸骨の姿でありながら、身近な者たちに守られてすくすくと健やかに育った。
そして、スカーレットが警戒していたとおり、九週目の人生でも王はどうかしていた。
骸骨令嬢と噂のあるスカーレットの婚約者候補に、生まれる年を遅らせたスカーレットと同い年の第四王子をあてがったのだ。
骸骨の姿をした娘と自分の大切な息子を婚約させようなどと考えるのだから、やはり王はどうかしているのだ。
そして、その息子の第四王子もかなりどうかしていた。