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49 リテイク

お読みいただきありがとうございます。


 気づいた時には、ルーファは二時間ほど前に見たばかりの扉の前にいた。

 それは王太子が使う執務室の扉だ。


 そして、隣には見慣れない姿の婚約者。


「スカーレットは人の姿をしていても美しいね」


 チラリと横目でルーファを確認したスカーレットだったが、その表情は興味なさそうに無表情のままだった。


 スカーレットは扉をノックして、部屋の中に訪問を知らせた。


 中からは執事が顔を出したが、スカーレットの姿にすこし動きを止めた。

 しかし、そこは執事である、

 動揺を表情に表すこともなくごく自然な動きで扉の外へと出てきた。


「大変失礼かと存じますが、スカーレット・スカルお嬢様でよろしいでしょうか?」


 時が巻き戻る前にはすんなりと部屋の中に入れてくれた執事だったのだが、スカーレットが人の姿をしているために確信が持てないようだ。

 それはルーファが隣にいても変わらない。


 むしろ、ルーファが隣にいるからこそより混乱しているのかもしれない。

 ルーファが隣にいるということはこの少女はスカーレットだろうと予測はできる。

 しかし、執事がこれまで何度か目にしてきたスカーレットはこのような愛らしい容姿ではなかったのだ。

 

「はい。スカーレット・スカルです。王太子殿下をご不快にさせてはいけないと、魔法でこのような姿にしたのですけれど、骸骨令嬢の方がよろしかったでしょうか?」


 にこりと作り笑いをしたスカーレットが執事に問えば、執事はすこし慌てた様子で「いいえ、ご配慮感謝いたします」と扉を開けた。


「ラフェル様、ルーファ様とご婚約者のスカーレット様がお越しです」

「ああ、通してください」


 部屋の主からの許可がおり、ルーファとスカーレットはようやく中に入ることが許された。

 スカーレットの姿にラフェルは優しい微笑みで出迎えてくれた。


「ようこそ、スカーレット嬢」


 時が巻き戻る前の時には、骸骨姿のスカーレットにラフェルは動揺して言葉が出ず、その間にスカーレットは挨拶をしていたが、今回はラフェルの歓迎の言葉の方が先だった。


 ラフェルはスカーレットの噂は聞いていても実際にその姿を見たことがなかったために、嫉妬による陰口か、もしくはスカーレットの特徴的な何かがそのような噂となっているのだろうと考えていた。

 そして、可憐な少女の姿を見て、やはり嫉妬による噂だったのだろうと結論づけた。


 スカーレットはラフェルの歓迎の言葉に礼を言うこともなく、要件を述べた。


「王太子殿下、エールシャルル嬢が危険ですので、謁見の間へと参りましょう」


 スカーレットの言葉にラフェルは訝しむような表情を見せたが、ルーファが自分の手を引くのを見て素直に従った。


 王と会っているはずの婚約者が危険なはずがないと思ったが、いつも配備されている警備兵よりも随分と多くの兵たちが謁見の間へ続く廊下に立っていることには違和感があった。


 さらに、彼らはラフェルたちが謁見の間に向かっているとわかるとラフェルたちを止めようとした。


 ちなみに、この兵たちは時を巻き戻す前にはエールシャルルの大立ち回りを止めるために謁見の間に召集されていた。


 ラフェルたちを止めようとする警備兵たちをスカーレットが魔法で眠らせていく。


 謁見の間の扉の前にいた警備兵が眠り、床に倒れ込む。

 そんな警備兵に視線を向けることもなくラフェルは勢いよく扉を押し開いた。


 警備兵たちの様子から、ラフェルにも異常が起こっていることは理解できた。

 父王はエールシャルルに内密の話があるため、ラフェルには遅れて来るように言っていたが、敬愛する父の言葉はもう気にならなかった。


 ただただ、エールシャルルが危険なことに巻き込まれていないことを願って扉を開けた。


「エールシャルル・ロンレーナは前王太子レアル様を諫め、守るという婚約者としての重要な役目を怠ったため、極刑を言い渡す!」



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