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39 楽しい昼食

お読みいただきありがとうございます。


「お招きいただき、ありがとうございます」


 昼食に招かれたスカーレットは出迎えに来たルーファに挨拶をした。


「ようこそ! スカーレット! 早くこっちに来て!」


 別宮の入り口という危険な場所にいつまでもスカーレットを立たせているわけにいかないため、ルーファはすぐにスカーレットの手を握って中庭が見えるテラスへと向かった。


 ルーファが住む宮の入り口は本宮からもリューリットの住む宮からも見えるため、ルーファとしては美しいスカーレットの姿をリューリットに見せたくなかったのである。


 ルーファはスカーレットを満足させる昼食を用意するとは言っていたけれど、果たしてどんな昼食を用意してくれるのだろうかとスカーレットは不思議に思っていた。


 スカーレットには味覚がない。

 大切なものを守るための人生に、味覚も美味しいものを楽しむ感情も必要としなかったからだ。

 そんなスカーレットを美しい庭園が見えるテラスに連れてきたのは、目を楽しませてくれるということだろうか?


 スカーレットは花が好きだった。

 骸骨になってから感情はほとんど動かないのだが、花は変わらずに綺麗だと思えた。

 骸骨では香りを嗅ぐことはできないけれど、これまでの8回の人生の中で嗅いできた香りを思い出すことはできた。


「今日はスカーレットのために趣向を凝らした昼食なんだ」

「楽しみですわ」


 定型文のような返答を返すスカーレットの目的はもちろん他にある。

 正直、昼食のことなどどうでも良かった。


 スカーレットはただ、ある演目を間近で体感したかっただけなのだ。

 そのために城に招かれる必要があり、ルーファを利用したに過ぎない。


 しかし、スカーレットの前に並べられた料理は想定以上にスカーレットの瞳を楽しませ、興味を引いた。


「前菜でございます」


 前菜はサーモンとチーズを使ったサラダに小花が飾られていた。


「お料理に、お花?」

「スカーレットは花が好きだろう? だから、最近流通し始めた食用の花を集めたんだ」


 それはスカーレットにとって確かに楽しいメニューだった。

 その後に出るメニューも、そのメニューに合わせた美しい花が添えられ、スカーレットの目を楽しませた。


 スカーレットは目で料理を飾る花々を楽しみつつ、料理を口に運んでスライムたちに与える。

 そうして食事が進み、メイン料理を飾る食用の豪奢なバラを鑑賞していると、元々の目的だった事件が起こった。


「ルーファ様、失礼いたします!」


 騎士の一人が部屋に入ってきて、ルーファはあからさまに不機嫌な様子を見せた。


「なんですか?」


 ルーファの冷たい視線に、急いで飛び込んできた騎士はその背筋が寒くなるのを感じて、歩みを止めた。


「お食事中のところ失礼いたしました! しかし、緊急事態ですので、王の部屋にお集まりください」

「だから、一体何があったの?」


 騎士はちらりとスカーレットを見た。


「スカーレットは僕の婚約者だ。問題ないから話してくれる?」


 ルーファの不機嫌を隠さない視線に背筋を正した騎士は報告した。


「王が、レアル第一王子に刺されました!」


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