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お読みいただきありがとうございます。


 深夜、寝室のバルコニーに気配を感じてスカーレットは目を覚ました。

 バルコニーを開けると、ミルスが片膝をついてスカーレットを待っていた。


「城内に潜ませた変化蜥蜴を回収してまいりました」


 ミルスが手のひらに収まってしまう小さな緑色の蜥蜴をスカーレットに差し出す。


 変化蜥蜴は張り付いた床や壁、植物なんかの色に変化するため、密偵に便利な小型の魔物だ。

 見つかり難い以外の特徴のない弱い魔物ではあるが、知性は高く、命令されたことを理解して任務を遂行することはできるし、スカーレットに恭しく頭を下げることも可能だ。


「変化蜥蜴、ご苦労様。では、お前の記憶を見せてちょうだい」


 スカーレットが変化蜥蜴を手のひらに乗せると、変化蜥蜴の色が白に変わる。

 スカーレットは優しく変化蜥蜴を包み込むように持ち、魔法で変化蜥蜴の記憶を覗いた。

 城の会議室、集まった人々、王から言い渡された王太子の処遇。


『第一王子 レアルの王位継承権を剥奪し、第二王子 ラフェルを王太子とする』


 その場面を見たスカーレットはその二つの空洞を呆れたものに変えた。


「これだけでは不十分だわ」


 一周目の人生も二周目の人生も三周目もその後もずっと、第一王子のレアルはスカル侯爵家に不幸をもたらしてきた疫病神のような存在だ。


「疫病神には完全にスカル侯爵家とスカル領の未来から撤退してもらう必要があるでしょう」


 ミルスは片膝をついたまま、スカーレットに深く頭を下げた。


「スカーレット様のお心のままに」


 実のところ、ミルスには時が巻き戻る前の記憶があった。


 スカーレットが命を断ってループを繰り返すたびに、他の者の時も戻っているわけだが、エルフのような魔法耐性の強い一部の種族たちには記憶が残っているため、この世界がなんらかの影響を受けて時を巻き戻していることを感じていた。


 とは言っても、長命種のエルフにとってはそれはさしたる問題ではなく、ほんのすこし若返った程度の感覚で毎日の日々を過ごしていた。


 エルフとゴブリンのハーフであるミルスも時が何度も巻き戻っていることには気づいていたが、森の暮らしにそれほど変化があるわけではないので気にしていなかった。

 ただ、スカーレットの九周目の人生である今回の時の巻き戻りはミルスの父親であるハイゴブリンが亡くなる前まで時が巻き戻ったため、ミルスは父親であるハイゴブリンに親孝行をして看取ることができた。


 ミルスはスカーレットに出会った時に、何度も時が戻っていた原因がスカーレットだったのだと理解した。

 そして、スカーレットの両親や周囲にいる人々を見る限り、スカーレットもまたかつては普通の人であったのだろうと推測していた。


 そんな普通の少女であったはずのスカーレットがリッチになろうと思ったほどの何かを、スカーレットは経験したのだろうと推測するだけで、ミルスは心が痛んだ。


 そして、この小さな主がこの国を滅ぼすことを望むのならば、それを叶えてやりたいと思っていた。


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