27 吉報?
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王の言葉にレアルの顔はそれまで以上に青くなる。
(人とはあれほど青くなれるものなのか)
ルーファは笑いそうになるのをなんとかこらえて生真面目な表情を取り繕う。
第一王子派の貴族たちは騒然となり、第二王子派の貴族たちはしばし呆けたように王を見た。
それほど、王の決定は貴族たちにとっては予想外のものだった。
王は国を支える業務においては冷徹無慈悲とも感じさせるところのある人物だったが、子供たちにはとても甘い側面があった。
第一王子を特別に可愛がっているというわけではなく、四人全ての王子に争いのない幸せを与えるためには法で定められている通りに長子が次代の王となるのが一番いいと考えていた。
第一王子と第二王子を比べれば人格的にも能力的にも第二王子の方が王に相応しいことは誰の目にも明らかだったが、それでも王は第一王子を王太子に決めた。
長子が亡くなったというならば次男が次代王となればいいだろうが、長子が生きているにも関わらず次男を王太子とすれば長子を推す勢力が黙っていないからである。
何事もなければ長子が王太子となり、次代王とすることは法に定められていることであるため、過半数以上の貴族が第一王子派だ。
第二王子派は法を覆しても温厚な性格で勉学においても魔法の力でも第一王子より秀でている第二王子が次代の王となったほうが王国のためであると考える貴族たちがついている。
ルーファは騒いでいる貴族たちの様子や、青い顔をしながらもその目だけは鋭くラフェルを睨んでいるレアルの様子、そして、その場の様子を頭が痛いと言いたげな様子で見ている父親を見る。
(これは、スカーレットが喜ぶ展開だろうか?)
レアルの罰が甘すぎることにスカーレットは不満を見せた。
ほんの一瞬だけ見せた様子はスカーレットの本音だろう。
王の決定に不満を見せるなど、それは無礼な行いだ。
そうと知っていてスカーレットがそのような姿を見せるのは非常に珍しい。
それほど、この問題にスカーレットは注目していたということだ。
祖父である学園長に頼まれて自分が関わった事件だからというわけではないだろう。
それくらいのことでスカーレットは自分の外にあるものに興味を抱かないはずだ。
理由はわからないが、スカーレットは王への無礼になるような本音がうっかり漏れるほど、この問題を気にしていた。
そして、今、おそらくはスカーレットが前回の罰よりは満足いく結果となった。
満足とまではいかずとも、不満はすこしは減ったのではないだろうか?
ルーファは誰にも気づかれないように、すこしだけ息を吐いた。
(どうせこのような結果になるのなら、私がそのように事を運んでもよかったな……)
そうすれば、もっと早くにスカーレットを満足させてあげることができただろう。
父親である王の決定を尊重した結果、自分がスカーレットを喜ばせるチャンスを逸してしまった。
スカーレットは欲しいものを口にしないし、表情にも表さないため、希望を察するのがかなり難しい。
せっかくのチャンスを無駄にしたことをルーファは悔いて、もう一度、小さなため息を漏らした。
それから、(ああ、そうだ)と思いつく。
(せめて、明日の朝、この知らせを一番にスカーレットに届けてあげよう)
もしかすると、スカーレットが喜ぶ顔を一番に見ることができるかもしれない。