26 第二の不始末と処罰
お読みいただきありがとうございます。
王が息子たちを呼び寄せたのはそう広くもない会議室だった。
部屋の中には王と王子たちと宰相、そして国政に携わっている上級貴族たちと数名の中級貴族たちがいた。
ルーファの部屋は王宮の敷地内にあるものの、本宮とは一番離れている別宮にあるため他の王子たちよりも到着が遅くなるのは仕方のないことだった。
「遅い時間に呼び出してすまない。ルーファ」
「いいえ。父上のお呼びでしたらいついかなる時でも参上いたします」
内心で、(スカーレットと会っている時以外なら)とルーファは付け加えた。
文官に誘導されるままに席へと向かう。
その途中、王太子へと視線を向けると青白い顔をして俯いていた。
ルーファの着席を確認すると、王の隣に立つ宰相であるロンレーナ伯爵が部屋の中の面々を見渡して、王立魔法協会附属魔法学園で何があったのか、その処罰をどうしたのかということを改めて説明した。
その内容は真実ではあったが、王太子のしでかした不始末を全て魅了の魔法を使った平民の娘のせいにしていたのはすこし気になるところではあった。
王太子はあくまで被害者であり、隙を見せたことは過ちではあったものの、学園生活の中において仕方のなかったことだとされていた。
婚約者に対しての非礼についての言及はなかった。
婚約者のエールシャルルはロンレーナ伯爵の娘だ。
宰相自らの娘だからこそ言及しづらかったのかもしれないし、伯爵という爵位でありながら宰相に任命されているロンレーナ伯爵を妬んでいる者もいるため、言及を避けたのかもしれない。
実際、この場に集まった貴族たちからはエールシャルルに対しての対応を言及する者は誰もいなかった。
大人とはそういうつまらない生き物なのだと、ルーファは内心で呆れた。
ロンレーナ伯爵は次に今日起こった事件について説明した。
「本日未明、王太子が管理する囚人ユリアが脱走しました」
王太子が魅了の魔法で虜になっていた平民の名前はユリアという。
「警備兵は全員薬により眠らされており、鍵穴にはいくつもの傷がついていたため、外部から脱走を手引きした者がいたようです」
依然、ユリアは見つかっておらず、協力者も不明。捜査を続けている段階だという。
「王、レアル王子への処罰があまりにも甘すぎると我々は進言させていただきましたが、さらなる不始末をどのように解決されるのですか?」
「まさか、脱走した罪人の捜索を第一王子の罰とするなどとは仰いませんよね?」
「やはり、長子に王位を継がせるという法そのものを変える必要があるのではないですか?」
第二王子派の貴族たちが厳しい目を王とレアルに向ける。
彼らはすでにレアルのことを王太子と呼ぶことさえも拒否しているようだった。
そんな彼らに反し、第一王子を支援してきた貴族たちが反論する。
「魔法学園での騒動も今回の囚人の脱走も王太子のせいではありません!」
「そうです! 全てはあのユリアという魔女のような平民が悪いのです!」
「王太子は被害者ではないですか?」
その場は王太子を惑わせた囚人の脱走をどう解決するかという話し合いではなく、第一王子の処遇をどうするのかという点に重点が置かれた言い合いになっていった。
「鎮まれ。レアルのことは、すでに処遇を決めている」
王の言葉に貴族たちは黙った。
王は会議が始まってから一度も第一王子に視線を向けなかったが、そのままその目を閉じて決められた言葉だけを告げた。
「第一王子 レアルの王位継承権を剥奪し、第二王子 ラフェルを王太子とする」