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12 曽祖父とひ孫

あけましておめでとうございます。

お読みいただきありがとうございます。


 一周目の人生では己に力がなかったために両親を不幸にしてしまった。

 けれど、長い年月を経てスカーレットは大きな力を手に入れた。

 そんなスカーレットの第一目標はユリアの排除だった。


 第一目標を思っていたよりも早く達成できたスカーレットだったが、まだ満足してはいなかった。

 ユリアはこれまでのループの中で何度もスカーレットの大切なものを危険に晒してきたのだ。

 三周目の人生では第二王子を惑わし、四周目の人生では王妃となって王に戦争を唆し、その結果、両親は破滅へと追いやられた。


「随分と難しい表情をしているな」


 屋敷の別棟に研究室を作ってそこに閉じこもっていた曽祖父が数日ぶりに外に出てきたところだった。


「大お祖父様。ご報告があって待っておりました」


 今は肉体を持つ曽祖父がそろそろ空腹に耐えかねて研究室から出てくるだろうと踏んで、スカーレットは扉をの前で待っていたのだ。


 スカーレットの曽祖父で、アンデッドのリッチだったこの男はスカーレットに膨大な力を譲った後、リッチだった姿は普通の老人まで戻ってしまったのだ。

 アンデッドでいるためには膨大な魔力が必要だったのだが、スカーレットに魔力とリッチとしてのある種の資格のようなものを譲ってしまったため、人間に戻ったのだ。


 人に戻ってしまったのならば名前がなければ不便だろうと、男は必死に名前を思い出そうとしたのだが、結局自力では思い出せずに魔法学園の学園長をやっている息子を久しぶりに訪ねて名前を聞いた。

 息子はものすごく呆れながらも、マーリン・スカルだと教えてくれた。


「それで、人生一周目ぶりに彼女を見た瞬間、全ての謎が解けたのです」


 食堂に場所を移し、マーリンはひ孫と一緒に遅い朝食を食べる。


「たったひとつの魔導具が原因だったなんてひどく滑稽でした。人生一周目の自分に呆れましたわ。あんなにわかりやすいものを見抜くこともできなかったなんて」


 いつになく饒舌に語るひ孫の姿にマーリンは笑った。

 自分がリッチだった頃には興味深いと思っていたひ孫のことを、人としての感情が戻ったマーリンは非常に可愛いと思うようになっていた。


 スカーレットは自分を陥れた者たちを憎むでもなく、自分の無力を嘆き、強くなろうとこれまで魔法の研鑽を重ねた。

 そうして手に入れた魔法で自分や家族、領地を危機にさらした元凶たちをとりあえず一掃しようという極端で力技なひ孫は変わってもいるけれど、その変わっている点を含めて、マーリンには非常に可愛い存在だった。


「それで、その元凶の娘の処分が足りないと考えているのだな?」

「この地にいる限り、危険分子なのは変わりありませんわ」

「では、どうするのだ?」

「王太子を処分する時に一緒に徹底的に処分する予定です」


 そんなことをスカーレットはあっさりと言った。


「あの方は何周目の人生の時でもずっとおバカさんでしたもの。絶対にまた迷惑をかけられますから、早めに処分いたします」


 元々感情の希薄なひ孫ではあったが、リッチになってからそれはますます顕著になった。

 完全に、王太子のことを害虫のわく迷惑なゴミ扱いしている。

 そして、そんなスカーレットのこともマーリンは可愛く思うのだ。


 マーリンはスカーレットの頭をヘッドドレスの上からぽんぽんっと優しく撫でた。


 ちなみに、こんな物騒な話をしているマーリンが使う別棟にも当然使用人たちはいる。

 スカーレットの侍女であるマーサもいるし、別棟を管理している執事もいる。

 マーリンの食事の給仕をしているメイドやフットマンもいるのだが、その誰もが自身の仕事に忠実に黙々と仕事をこなしている。


 非常に良くできた使用人たちであるが、それだけではなく、彼ら彼女らはしっかりとスカーレットの魅了の魔法にかかっているため、この家で行われた会話を外に漏らすことはない。


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