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29  眷属召喚/修学旅行出発

 遥香と魔法の箒がいよいよ本格的に活躍します。

 魔女の〇急便や幼女〇記のように、ただ魔女が飛ぶだけの作品から、魔法少女が空中戦を行うもの等、様々な作品がありますが、地球の重力圏下で航空機と同じかそれ以上の機動性を以って飛翔することができる技術というのが、すでにすごいと思いませんか?

10月17日(木)


 久神 遥香


 修学旅行前夜・・・準備は万全だ。


 着替え、よし。

 下着、よし。

 パスポート、よし。

 そして・・・シェイプシフター「遥香二号」、よし。 


 半島情勢の悪化により、修学旅行自体が中止になる恐れがあったが、同盟軍と中ソとの三竦(さんすく)み状態のためか、半島内における散発的な戦闘が行われたのみで大規模な戦闘は発生しなかった。


 ・・・とはいえ、「戦争にならなかったから安全」というわけではない。


 たとえば五年ほど前に、日本の防空識別圏内で大日本航空(だいにっこう)の旅客機が中国軍機に撃墜されたことはまだ記憶に新しい。


 中国は「領空侵犯機を撃墜しただけ」と主張しているが・・・日中中間線より300キロも日本側に入った地点で墜落した。

 さらに、そのわずか30キロ先には、日本人が暮らす島と小規模な空港まであった。


 これは、ただの「事故」ではない。


 今回の修学旅行については、遙一郎から聞かされたが、東シナ海の周辺を飛ぶすべての民間航空機に対し、日本空軍(JAF)の迎撃機と早期警戒機(AWACS)がエアカバーについてくれるらしい。


 しかし、疑問もある。


 西部方面隊の「迎撃機」が福岡空港でチャーター機と合流した後、交代で那覇空港まで護衛してくれるという。

 航続距離が短い「局地戦闘機」を旅客機の護衛任務に充てるとは、気でも狂っているのではないだろうか。


 一応は沖縄の米軍基地もスクランブル待機はしてくれているらしいが、この国の政治家は軍事に対する理解度が低すぎる。


 それを聞いて、慌てて超音速での空中戦ができる装備を作ったまではよかったが、誰が操縦するかまでは考えていなかった。


 だったら、空を飛べる眷属でも召喚すればよいかとも思ったが、いざ考えてみると、戦闘可能な眷属の中でも最速の飛行速度を誇るワイバーンでさえも、ただの旅客機についていくこともできず、また対空ミサイルに耐えられる眷属は鈍足なドラゴンくらいしか思いつかなかったのだ。


 知能が低い眷属なら、もっと早く飛べるのは何種類もいるのだが。


 そこで、逆転の発想をした。シェイプシフターを眷属として召喚し、旅客機に座らせて私が旅客機のエアカバーを務めればよいのだ。


 自分そっくりに変身させたシェイプシフターの調整を行っていると、彼が不思議そうな顔をして尋ねてきた。


「マスター。ホントにイイんですか?修学旅行は行きも帰りもトモダチとイロイロ話したりするのが楽しいって聞きますヨ。」


 こいつとは結構長い付き合いだ。


 いくつかの使い魔を持ち、それを情報端末として長距離の偵察を行えるだけでなく、結構人間味にあふれているおかげで、使い勝手が非常に優れている。


「中国軍機の襲撃がない間は、お前の五感と制御をリモートで接続しておく。一応、千弦にだけは伝えてあるから、もし接続が切れたら千弦と相談してうまいことやってくれ。」


「ソウいうことを言っているんじゃないんですけどネ・・・。」


 各種術式の組み込みを完了し、シェイプシフターに私の部屋着を着せる。


「よし、調整完了だ。テスト運用だ。リモート制御で今日の夕食はお前が食ってこい。」


「エエ~。ボクは人間の食べ物、草の実とか入ってるシ、火が通ってるカラちょっと苦手なんですけド・・・。」


「それと、一人称は『私』と言え。私はボクっ娘ではないからな。」


 嫌がるシェイプシフターを無理やり制御し、眷属越しに食べた香織の料理は、いつもどおり普通に美味しかった。

 ・・・腹は膨れなかったけど。


 ◇  ◇  ◇


10月18日(金)


 南雲 琴音


 朝8時ちょうど、バスは予定通りに学校を出発し、8時45分に羽田空港第二ターミナルへ到着した。


 そこからは、人数確認、荷物チェック、注意事項の説明・・・と、事前準備に追われる時間が続く。


 ようやく11時半、チャーター便の搭乗手続きが開始された。


 事前に生徒全員のパスポートは担任が預かっていたため、「パスポート忘れた!」と騒ぐおバカはゼロ。

 まぁ、那覇までは国内線扱いなんだけどね。


 それにしても——ボーイング747をチャーターとか、この学校、どんだけ金持ちなの!?


 一学年8クラス、合計398人の生徒が一度に移動するためとはいえ、こんな贅沢な移動手段を用意できるなんて、やっぱりウチの学校は違うなぁ・・・。


 一学年すべての生徒が搭乗できるということもあり、すでに各クラス混合の班別で搭乗手続の順番を待っている。


「そういえば遥香、さっき姉さんから大きな荷物、受け取ってなかったっけ?」


 学校を出発するときに、姉さんが遥香にボストンバッグとバイオリンケースを渡しているのを見たのだが、二人の手荷物を見る限りではどこにも見当たらない。

 学校に置いてきたんだろうか。


「何のことデス?」


 ・・・何か遥香の様子がおかしい。心ここにあらず、といった感じだ。連日のラブレター攻撃に疲れ切ってしまったのか。


 一切無視などせず、一人ひとり丁寧に返事しているからな。咲間さん(サクまん)から聞いた(うわさ)では、全員フラれているらしいけど。


「姉さん、あの荷物は・・・。」


 姉さんの様子もおかしい。

 何かソワソワしているし、普段つけているピアスだけではなく、変なイヤーカフをつけている。


「え、荷物?ええと、そう!学校に置いてきたんだよ。持ち込もうとしたんだけど先生にバレそうでさ。」


「ソソ、ソウですよ。バイオリンなんて今回の旅行には必要ナイはずですヨネ。」


「はい、A班からD班、搭乗手続開始!」


 今日に限って妙に表情が豊かな遥香の顔を覗き込もうとすると、私たちの班の担当の脇坂先生から声がかかった。


 まあ、いいか。

 千弦については事前に身体検査して危ないものは持っていないことを確認したし、私はリングシールド以外の装備は全部置いてきたし。


 生徒全員が預け荷物の手続きと保安検査を無事済ませ、チャーター機の席に着いたのは、出発予定時間のギリギリ2分前だった。


 ホント、姉さんがエアガンとか術式榴弾(ハンドグレネード)とか変な物持ってなくて助かったよ。



 ◇  ◇  ◇


 南雲 千弦


 預け荷物と保安検査の手続きが完了して、窓際の席に座ってやっと一息ついた。

 それにしても、普段から身に着けている装備がほとんどないのは、ものすごく落ち着かない。


 高校二年の修学旅行先が海外だと聞いて、馬鹿みたいに人生初の海外旅行だとはしゃいでいたが、装備のほとんどを持っていけないことに気が付いたときは軽くパニックになった。


 一応はリングシールドと、制服に編み込んである各種補助術式はあるものの、攻撃用の装備が全くないのは、恐ろしく不安になる。


 ・・・例の雷撃魔法は火力が低すぎて使い物にならなかったし。魔力制御付きだと確かに疲労はないんだけど、ビリっとするくらいしか威力が出ない。


 手加減するならこれほど便利なことはないけど、マジでスタンガンかスマホの充電にしか使えないよ、コレ。


 そんな折、遥香が“別便で”行くというので聞いてみたら、先週末に作ったあの冗談みたいな魔法の箒(マジックブルーム)に乗って台湾まで行くというから驚いた。


 ガンシップ(ハリネズミ)みたいな武装と前時代的(レトロ)な計器類がちょっと気になったけど、じゃあ修学旅行は欠席扱いにするのかと聞いたら、欠席せずに行きも帰りも一緒に行くという。


 ・・・ちょっと何言ってるのか分からなかったよ。

 きっと冗談だろう。

 後からゆっくり来るに違いない。


 昨日になって、シェイプなんとかいう替え玉が代わりに飛行機に乗っていくとLINEで連絡があったからとりあえず納得した。


 ついでにその時、魔法の箒(マジックブルーム)の下部に取り付けたコンテナには結構な積載量(ペイロード)があると聞いたので、せっかくだから拳銃にPDW、術弾に術式榴弾(ハンドグレネード)、フル装備一式を運んでもらうことにした。


 ついでに、琴音のフレキシブルソードも預けておいた。


 台北のホテルで受け取ろう。ついでに帰りはお土産も持ってもらおう。

 出入国時に検査を受けなくて済むのは楽でいい。

 ・・・これって密輸になるのか?

 まあいいや。いやあ、いい友人を持ったなぁ。


《千弦、聞こえているか?・・・はすでに空中待機中だ。貴機が離陸すると同時に、後方乱気流を避けて・・・・キロ、高度プラス100を維持して・・・る。》


 遥香から預かったイヤーカフからノイズ交じりの音声が流れてくる。

 ええと、念話で答えるか、シェイプなんとかに返事をすればいいんだっけ。


 隣の席に座っている遥香そっくりのシェイプなんとかさんに、了解の意味を込めて親指を立て(サムズアップ)ておいた。


「?・・・ああ、了解だそうデス。」

 ・・・本当に大丈夫だろうか。


 ◇  ◇  ◇


 久神 遥香


 (ほうき)に跨り、羽田空港の管制塔の直上300で電磁光学迷彩(ステルス)術式を発動したまま空中待機している。


 しばらくすると、シェイプシフターを通してこれから離陸するという機内の案内が聞こえた。


「やっとか・・・。相変わらず、旅客機の準備は時間がかかる。」


 あの後わざわざ旧軍司令部(松代大本営)まで行って、埋没した防空壕から大戦中にシベリアで使われていた航空機用防寒着を引っ張り出してきたが、経年劣化が進みすぎており、例の魔方陣(サークル)を使って丸ごと修復する羽目になったので、昨日は眠れなかった。


 魔力的にも精神的にも全く影響はないはずなのだが、少し集中力に影響があるようだ。

 どうもこの体は虚弱で困る。


 自分の頭に回復治癒呪を軽くかけ、遙一郎から拝借したバイク用のゴーグルをかけなおす。


「まずは、福岡だな。2時間弱、といったところか・・・。一昨日、3時間ほど試験飛行(テストフライト)はしたが、魔力総量(燃料)はまったく問題ないけど、体力のほうが問題かな・・・。」


 修学旅行に行く生徒398名と、教師12名、そして何名かの乗員をその腹に抱いたジャンボジェットは4発のエンジンから轟音を響かせて青い空に駆け上がっていく。


「何事もなければいいんだけどな。」


 魔法の箒(マジックブルーム)は力強く加速しながら、チャーター機の7キロほど後方、高度差100を維持し、ゆっくりと飛んで行った。

 遥香は、モテます。非常に整った顔立ち、白い肌に均整の取れた体つきを持ち、優等生的なキャラでありながら、身長は比較的低く、庇護欲を誘うような容姿をしています。胸だけは小さいですが。


 また人当たりも非常によく、何より漫画やアニメ、ゲームといった文化を非常に好みます。

 頼まれたことも基本的に断りませんし、大抵の悩みは解決できるだけの知識と魔法技術を持っています。

 ですので、男女、陽キャ、陰キャを問わず、もちろんオタクにもよくモテています。

 ただし、中身は5000年以上生きているロリババアで、比較的常識的な考え方をしていると本人は思っていますが、実際に殺した人間の数は数万や数十万ではききません。

 敵だと判断した場合は、一切感情を動かすことなく、相手の親類縁者を含めて殺せます。

 本人もそこだけは分かっているようなので、友人は作りますが恋人はあまり作らないようにしています。

 ただし、憑依した体で何人か子供を産んだこともあるようなので、結婚自体には抵抗はないようです。

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