191 断界の壺と魔女の心臓/魔女の小さな切り札
三条 満里奈
4月29日
スウェーデン 首都ストックホルム
グランド・ホテル・ストックホルム
先日、エドアルド様が行方不明になったことに絡んで、日本国内に潜伏する信徒から調査報告がなされた。
その結果、エドアルド様は魔女の子孫、または新しい器を調査する目的で日本を訪れ、東京都内で消息を絶ったということが判明した。
現在、東京都内にはおよそ120人の魔女の子孫がいることが分かっている。
だが、そのほとんどが男性か30歳以上の女性であり、魔女が憑依するであろう10歳から18歳の少女は数えるほどしかいない。
去年、調査中に消息を絶ったとされるウィッチハンターのアチェリと黒川については、南雲千弦と琴音という双子についての調査を行っていたことが判明している。
アチェリは返り討ちにされたものの、二人とも聖釘に接触した状態で魔法を行使したことが黒川の報告で上がってきており、同時に魔術結社と魔法協会の所属であることを確認したため、魔女である可能性はないと判断され、教会の敵対者ではないとされた。
南雲姉妹以外に2人の少女がいるが、いずれも監視中に魔法を使ったこともなく、また新たに子孫として確認された久神遥香という少女については、1年ほど前に急性骨髄性白血病で亡くなっていたことが判明した。
・・・東京で同時期に5人の少女が急性骨髄性白血病で亡くなっているが、うち3人は魔女の子孫であることが確認されている。
残りの2人については、まだ調査中だ。
この病気が魔女とつながりがあるのか、それとも関係ないのかは分からない。
つまるところ、関係のない疑惑が発生しただけで、エドアルド様が行方不明になった原因は不明だということが分かった、という何とも間の抜けた報告だったのだ。
・・・何もわかってはいないではないか。
「そろそろ魔女の身体は耐用年数を超えるころだと思うのですが・・・最初に魔女『ジェーン・ドゥ』を確認したのはいつ頃でしたかしら?」
「1978年、白頭山消滅事件の直後です。50年近くになりますね。」
隣で弓の手入れをしている瑞宝が答える。
「・・・そう、ですね。ですが、ワレンシュタイン様と戦った魔女の様子からすると、耐用年数ギリギリとは思えないほどの戦力なんですよね・・・。」
「そだね。あの場所に残された残留魔力量からすると、最低でも142Tnの出力はある魔法を使ったみたいだし。ってか、魔女以外だとそんな魔法、使えるわけないし。」
・・・その通りだ。我々が魔法を行使したときに計測される魔力の出力は、せいぜい200knだ。
それだって人間の魔法使いの約50倍だ。
決して我々が弱いわけではない。
魔女が異常なだけだ。
「ワレンシュタイン様が戦った相手は間違いなく魔女『ジェーン・ドゥ』でしょう。そして、エドアルド様を倒せるのも、魔女以外にはあり得ません。さらには丸山邸を吹き飛ばしたのも魔女。となると・・・。」
「リビアと日本、我々教会の行く先々に出没しているとなると・・・。本格的に魔女は我々の内情を把握し始めたかもしれません。やり方を変える必要があるかもしれませんね。」
瑞宝は私の懸念に、冷静に答える。
「分かりました。これまでのように聖釘任せではなく、別の方法・・・魔法・魔術以外の火力による飽和攻撃を実施してみるのもいいかもしれません。」
決して決定打にはならないだろう。だが、虚をつくくらいはできるかもしれない。
「魔法以外の飽和攻撃?現用兵器で魔女の防御を抜くことなんてできるの?」
クラリッサは私の言葉に首をひねっている。
確かにそれは、魔法や魔術に頼る我々魔族や十二使徒では使うことのない作戦だ。
「はい。・・・代償として我々もその場で魔法を使うことはできませんが、少なくとも魔女を1発の銃弾で殺すことも可能であることは70年以上前に確認されています。」
テーブルの上にバシリウスから提供された、2つのモノを置く。
1つは茶色い、陶製の本体に木の蓋がついたツボのようなもの。
そしてもう1つは、120年ほど前に製造された、古い38口径の自動拳銃。
「聖女様・・・これは?拳銃・・・と茶入れ・・・のように見えますが?」
なるほど、確かに茶入れのように見えなくもない。
蓋に十文字に貼られた不気味な封印さえなければ。
「かつて、魔女『三好美代』を追い詰めるために作られたという破魔の角灯に使われていた『魔王の心臓』は、ただの代用品だったのです。魔王・・・ノクス・プルビア一世の心臓は、バシリウスが言うところの、魔女の心臓に最も出力が近かった『人間由来の魔力結晶』にすぎません。」
「・・・とおっしゃるならばこれは・・・。」
「はい。このツボは教会が保有する聖遺物、『断界の壺』です。そして、中に封じられしモノこそ、まごうことなき『魔女の心臓』です。」
瑞宝もクラリッサも、驚きのあまり何も言えないようだ。
それもそのはず。
魔女の心臓を抉り取るなど、今では不可能に近い。
「魔女の心臓・・・そのようなもの、どうやって手に入れたのでしょうか?」
「かつて、フランス、ブルターニュ地方のシザン半島先端にイスという都市があり、栄華を極めていました。しかし、5世紀半ば、一夜にして海に沈んだという伝説が残っていることは知っていますか?」
「ええ。ですがそれはただの伝説だと・・・。」
「いいえ。実話です。イスには我らの教会の本拠地がありました。我らが教皇猊下が創世の女神と最後に言葉を交わした場所として、長きにわたって我ら信徒の精神的故郷となっていました。」
「もしかして~。そのイスって町が滅びたのって・・・。」
「我らの女神を滅ぼさんとした魔女の魔法によるものです。」
「・・・マ?ってか、そんな古いころから町ひとつ吹っ飛ばせるよーな魔力を持ってたわけ?うわ、マジ化け物じゃん。」
「クラリッサ。我らが先達はただ魔女におびえていたわけではありません。女神を弑してもその御力により瀕死となった魔女に我らが先達は天罰を下すべく、その腹を引き裂き、その身を刻んで肋骨から聖釘を、血肉から様々な魔道具を、そしていくつかの臓器から聖者の衣や屍霊術の秘儀を作り出しました。」
「つまり、その『断界の壺』は・・・。」
「魔女の子宮を打ち砕き、混ぜた粘土で作りだした壺と、血肉を肥料に育てたキョウチクトウから削り出した蓋で作られた壺です。・・・そして、その時取り出されて氷漬けにされていた魔女の心臓を、時を止めたまま中に封じ込めています。」
この心臓をもとに、再び破魔の角灯・・・あるいはそれに類する何かを作ることができれば、魔女の魔法を完全に封じることができるだろう。
「こちらの拳銃は?見たところ、何らかの術式が刻まれているようですが?」
「この銃は通常の38口径の銃弾を使うこともできますが、魔女に対して術弾と呼ばれるものを撃ち込むために使います。・・・この術弾は、聖釘と同じ働きをする弾頭で、魔女の肋骨ではなく胸骨を砕いた骨粉を血肉に混ぜて固めたものです。」
「うえぇ・・・。」
クラリッサは露骨に嫌な顔をしているが、瑞宝は全く気にせず、私に質問した。
「その術弾・・・聖釘と全く同じ効果があるということでよろしいでしょうか。それとも、効果はやはり少ないのでしょうか。」
「1発当たりの魔女に対する干渉力は聖釘に何ら劣ることはありません。違いがあるとすれば、再利用ができないことぐらいでしょうか。」
「銃弾としての性能、そして数は・・・?」
「銃弾としての性能は.38ACPとほぼ同じです。弾頭は着弾後、ホローポイントと同じようにふるまいます。数は・・・残念ながら、14発しか作ることができませんでした。当然ですが新たに作ることはできません。瑞宝。お願いできますか?」
「ふむ・・・俺としましては銃弾よりも鏃を作っていただけたらありがたかったのですが・・・。とにかく、やってみましょう。」
瑞宝は銃を手に取り、マガジンを引き抜く。
当然だが、術弾は装填されていない。
「瑞宝~。試し撃ちしといたほうが良くね?的代わりにゴーレム、出そか?」
「ああ、ただし普通の銃弾でな。だが移動してからでいい。・・・聖女様。カフカスのエルフどもの里に行く前に、寄るところがあるとおっしゃっておられましたが、その魔女の心臓ですね?」
「ええ。これからゴットランド島に向かいます。魔王の心臓を破魔の角灯に加工した職人がそこにいますので。すでに、先方はそれ以外の材料をそろえて待っています。」
そういいながら、『断界の壺』をそっと手に取る。
その壺は、まるでかつての魔女・・・魔女『ユリアナ』の怨嗟の声が内側で響き渡っているかのように仄かな温かさを放っていた。
◇ ◇ ◇
仄香
アマリナが旅支度を整えるのを待ち、遥香、オリビアと合わせて4人でオスロ国際空港へ向かう。
オリビアはもともとパスポートを持っていたし、ジェーン・ドゥと遥香のパスポートについては米国防総省に米国籍のパスポートを作らせたから気にしていなかったが、アマリナはパスポートを持っているんだろうか?
「ふふん。拙者もパスポートを作っておいて正解でござったな。・・・まあ。ノルウェー政府の意向で年齢のところだけは少し気に入らぬでござるが・・・。」
「アマリナさん・・・私より年下になってる。お姉ちゃんって呼んでくれてもいいよ?」
「きゃぁー。お姉ちゃーん!」
「遥香さん・・・アマリナさんは貴女より100歳近く・・・いえ、何でもありません。」
アマリナ・・・自分より100歳近く年下の少女にかわいらしくベタベタするなよ。
「仄香さん、言われたとおりにチケットを買っておいたけど・・・次の行き先はアゼルバイジャンのバクー?これ、ソビエト連邦内だけど、大丈夫なのかなぁ?」
「ええ。今ソ連と中国、アメリカは三つ巴の冷戦下にありますが、東側諸国は西側諸国のように体力がありませんからね。極東ならともかく、大陸の奥深くでも戦争を続けるのは難しいようです。黒海やカスピ海沿岸諸国は経済上の干渉地域となっていますから、西側のパスポートで入ることはそれほど難しくはありません。」
何なら長距離跳躍魔法で行ってしまってもよかったのだが・・・魔族であるアマリナがいるおかげで長距離跳躍魔法の安全装置が発動してしまい、跳躍することができないのだ。
まあ、最悪の場合は強制長距離跳躍魔法でアマリナだけ先に送ることも考えたが・・・アレは魔族相手にも使える代わりに、その場合は着地時の減速がかからない仕様になってるんだよな。
マッハ30以上で地上に叩き付けられたら・・・死ぬよな。
しかたがない。教会を壊滅させたら詠唱を修正しようか。
保安検査を終え、ルフトハンザ航空の航空機に乗り込み、離陸を待っていると、アマリナの様子がおかしくなりはじめた。
「アマリナさん・・・大丈夫?」
「え、あ、大丈夫でござるよ。きっと大丈夫、きっと大丈夫、鉄の塊が空を飛ぶんだ、きっと魔術的な何かが・・・ぶつぶつ・・・。」
うん。初っ端から無茶苦茶心配になってきたよ。
・・・いったん離陸してしまえば、アマリナはすっかり落ち着いたようだった。
「すごいでござるな!魔法も使わず空を飛ぶとは!やはり人類の科学の勝利でござるな!」
「あ、ああ、ソウダネ。・・・仄香さん、アマリナさんって、本当に100歳を超えてるのかい?」
「・・・ええ。エルフやドワーフなどの幻想種もそうだけど、寿命が長い分、なかなか精神的に成熟しないんですよ。・・・まあ、そのうち飽きるでしょうから放っておきましょう。」
オリビアがあきれていたが、アマリナは遥香の隣の座席で窓の外を眺めながら、しばらくの間興奮し続けていた。
◇ ◇ ◇
アゼルバイジャン 首都バクー
ヘイダル・アリエフ国際空港
経由一回、約19時間の空の旅を終え、カスピ海に突き出る半島のような形の町、首都バクーに降り立つ。
そして荷物を受け取り、タクシー乗り場まで歩いてきた。
「う・・・ファーストクラスでも結構疲れるんだね。今まで乗ったことなんてなかったから知らなかったよ。」
オリビアはそんなことを言っているが、今回の旅費は当然のように私が全額払っている。
というか、めったに飛行機に乗らないのだから、乗るときくらい良い席に座りたいと思っただけだ。
「9時間飛行機の中っていうのは疲れたよね。一応、途中、ドバイで1回乗り換えたけどさ。・・・ねえ、仄香さん。飛行機代っていくらだった?」
「4人で170万円ちょっとです。意外に安かったと思いますが、ちょっと時間を無駄にしましたね。そのうちにアマリナさんを連れて移動できる方法を何か考えましょう。・・・極超音速の魔法の箒でも作ろうかしら?」
「ひゃくっ!?」
「・・・仄香さん、あんた、いったいいくら財産持ってるんだ・・・?」
「そんなことより、迎えが来たようです。」
比較的大きなホテルに予約をしておいたが、送迎までしてくれるとは何とも気が利いている。
まあ、一泊一人当たり日本円で41万円だからな。2泊分をすでに振り込んでいる以上は、女4人、オリビア以外すべて子供でも文句はあるまい。
「な、リムジン・・・魔女どの。拙者の退職金で旅費を返しきれるか心配でござる。」
「別に、返さなくてもいいですよ。そんなことより、かなり体力を使いましたから、今日明日はゆっくりしましょう。ああ、プライベートコンシェルジュがついていますので、何か必要なものがあったら彼に声をかけてください。」
さて・・・オリビアとアマリナ、ジェーン・ドゥのボディはホテルに置いておくとして・・・遥香の身体で新しい魔法が使えるか、試し撃ちをしておかなければな。
◇ ◇ ◇
長距離跳躍魔法でオーストラリア・ウーメラ試験場のほぼ真ん中に降り立つ。
事前にオーストラリア国防省に連絡を取り、オーストラリア空軍の航空宇宙運用支援グループの許可をとっておいたから地平線の彼方まで誰もいない。
《ねえ、仄香さん、新しい魔法を作るって、前に見た陽電子加速衝撃魔法みたいな、すごい魔法を作るの?》
「いいえ、今回作る魔法は根源精霊魔法であることは同じですが、威力はせいぜい7.62mmNATO弾程度の威力しかありません。」
《なっとー?鉄砲の弾と同じくらいってこと?そっか、じゃあ、そんなに怖い魔法じゃあないんだね。》
「威力の点だけを考えると、そうですね。」
的にするために、近くの町で買ってきた350mlのコカ・コーラの缶を近くに岩の上に乗せる。
遥香には黙っているが、これから構築する魔法は、世界の因果律に直接影響する恐れがあるシロモノだ。
平たく言うと、タイムパラドックスを起こす可能性がある魔法なのだ。
根源精霊の中には、いまだに人類が未発見の素粒子を司るものが存在する。
重力子のように存在が予言されているものではなく、完全に仮想粒子として扱われているものも存在するのだ。
「術式束、400,258、3,987,997、5,794,331、1,966,087を連続発動。八連唱、852,891,037,441、連唱852,891,037,441、全力発動。」
術式強化、身体強化、五感向上、感覚鋭敏化。
直感鋭敏化、精神防御、物理防御、抗呪抗魔力。
慣性制御、ベクトル制御、圧力制御、自由電子制御。
そして解析・鑑定術式を発動、さらに防御障壁を16枚展開。
・・・これは、気休めにすぎない。
「紫雨。あなたの魔法を借りるわ。百連唱。"O dea momenti,Verdandi invisibilis!Ego vitam meam prehendo crinem tuum.Appareas, precor."(おお、刹那を司る女神よ。姿なきヴェルダンディよ。我は命を賭して汝の後ろ髪を掴む。願わくばその御身を顕し給え。」
13の術式、16枚の防御障壁、100連唱の次元隔離魔法を展開し、発生する影響に備える。
・・・準備はできた。
私の理論が正しければ、この魔法はサン・マーリーのような瞬間移動能力を持つ者や、未来視の能力を持つ者に対する天敵といえる魔法となる。
「・・・始めます。万物の礎にして万象を遡るものよ。速き理に縛られぬ第四階梯第一逆位の根源精霊よ。我は虚ろなる歌声を以て大いなる流れに逆らい明日より汝を誘う者なり。」
次元隔離魔法によって隔離された空間がギシリ、と今まで聞いたこともない音を上げて軋む。
同時に、ありえないほどの量の魔力が恐ろしい勢いで消耗していく。
《仄香さん!?こ、これ、何か恐ろしいことが起きているような気が・・・!》
「・・・立ち止まることを知らぬ根源精霊よ。我が過ぎ去りし日は汝が未来なり。なれば、汝の道を我が示さん。その遥かなる未知の力を振るい、我が悔恨の敵を討ち砕け!」
キィンという甲高い音が響き渡り、一拍遅れて衝撃波のようなものが走る。
だが・・・周囲は何も変化がない。
「・・・失敗でしたか。やはり、因果律の壁は厚かった、か。」
《仄香さん、大丈夫?・・・そんなに気を落とさないで。でも、何かものすごく恐ろしいことが起きるかと思ったけど、何も起きなくてよかった。ね、呪文を唱えてる間にコーラの缶が落ちちゃったけど、拾って帰ろ?》
コーラの缶が落ちた?詠唱中に?
慌ててコーラの缶を乗せていた岩を見る。
今、私の魔法は確かに岩の上に乗った缶に向かって打ち出されたはずだ。
なのに、詠唱が終わる前に缶が落ちた?
・・・缶の後ろ半分が完全に吹き飛ばされている。
威力的には、7.62mmNATO弾、いや、7.92mmモーゼル弾くらいの威力は出ているか。
だが、そんなことより・・・。
「遥香さん。解析・鑑定術式を確認したのですが、私の術式には何も記録されていませんでした。缶がどのようになったのか、詳しく教えてくれませんか?」
《仄香さんが詠唱を終える1秒・・・2秒はなかったと思うんだけど、少し前に、コーラの缶が突然岩の後ろに向かって落ちたんだけど・・・パキャッ?プシュッ?そんな音がしてコーラが噴き出して。え?失敗じゃないの?》
・・・そうか、こうなるのか。
術者である私が干渉するための魔法を解除するまでは、事実が確定せず、解除して初めて「事実はこうだった」と確定するのか。
よし、成功だ。
あまりにも莫大な魔力を消費するため、この私ですら1日に2発が限度となるが、これで切り札はそろった。
戦闘中に唱えられないほど詠唱が長いが、千弦がいなければ全自動詠唱機構に登録できないのが非常に悔やまれる。
最悪、発動遅延詠唱で誤魔化すしか無いだろうな。
「遥香さん。これで、ご両親や千弦さん、琴音さんの元に戻る日が近づきました。必ず貴女を日常に戻して見せます。
《うん。その時は仄香さんも一緒だよ。》
晴れ渡った空に輝く南十字星が、私の目にはひときわ美しく輝いて見えた。
今回魔女が作った魔法は、恐ろしく長い詠唱を必要とし、その必要とされる魔力量や制御の難しさ、肉体への反動など、これまで使ってきた魔法に比べ、圧倒的にハイリスクかつ高コストの魔法です。
それに対し、発生する威力はわずかフルサイズのライフル弾1発分という、コストパフォーマンス・タイムパフォーマンスいずれをとっても全く割に合わない魔法です。
ですが、この魔法はある特定の敵に対しては、恐ろしいほどの効果を発揮するでしょう。
今からその描写をするのが楽しみで(難しくて)たまりません。