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158 魔王の真相/それぞれの日常

 2月26日(水)


 水無月 紫雨(しぐれ)


 水無月園の如月先生に壮介君と陽菜ちゃんの亡骸を預けた後、僕は最大の協力者である九重宗一郎さんと会ってお礼とお別れを言うことにした。


 待ち合わせ場所は長崎駅前の出島メッセ横のホテルのロビー、時間は午後2時だ。


 待ち合わせ時間の少し前、彼は一人の女性を伴って現れた。


 金髪碧眼、笹穂状の耳・・・エルフ?ああ、ルィンヘン氏族(ハイエルフ)か。フェアラス氏族(コモンエルフ)じゃなくてよかったよ。

 あいつら、魔族とつながってるからな。


「・・・宗一郎。トルコライス、美味しかった。今度は私が作る。」


 エルフの少女は120歳前後だろうか。宗一郎さんと手をつないでいるところを見ると、とても仲が良いように見える。


 ・・・交友関係が広そうな人だと思ったが、ここまでとは思わなかったな。


 それとも僕が1700年以上海の底にいた間に、ルィンヘン氏族(ハイエルフ)は人口爆発でもしたんだろうか。


「ははは、エルさんの手料理のほうが絶対に美味しいだろうな。もしかして食べただけでレシピとか全部理解できたのかい?」


「ん。香辛料が結構複雑だった。」


 随分と人懐っこいエルフだなと思いつつ、宗一郎さんに向かって手を振る。


「お!紫雨(しぐれ)君!随分早いね。待ち合わせ時間より30分も前だよ。」


「宗一郎さんこそ早いですね。・・・こちらの方は?」


「ああ。紹介しよう。俺の姪っ子の友人のグローリエルさんだ。彼女は信用できる。それに、結構長く生きてるから、色々と物知りなんだ。いつも相談に乗ってもらってる。」


「ん。グローリエル。エルでいい。一つ訂正。私は宗一郎の恋人。」


 エルと呼ばれたエルフの少女は、鼻を膨らませながら宗一郎さんの腕に絡みついている。


 ・・・寿命差とかどうするつもりなんだろう?


 まあ、人間とエルフは普通に生殖可能だし、生まれてくる子供はハーフエルフになるから耳の形も短くなって人間社会に溶け込むのは難しくもないけど・・・。


 とりあえず、気を取り直して本題に入る。


「支援をしていただき感謝します。お金だけでなくスマートフォンまで貸していただいて、本当に助かっています。それで、これまでの状況なんですが・・・。」


 あらかじめ作っておいたメモを取り出し、彼に手渡す。


 そのメモには僕が佐世保市内で気が付き、保護されて水無月園で生活することになったところから現在に至るまでの経緯を書いておいた。


 ・・・壮介君と陽菜ちゃんの二人がアンデッドにされ、僕がそれを解放したことも記載してある。


 アンデッドという存在は、少なくともこの時代の人間にとってみればファンタジーの域を出ない。


 果たして信じてくれるかどうか心配だったが、彼の口から出た疑問はもっと別のことだった。


紫雨(しぐれ)君。君は、見たところこの時代の人間じゃない。・・・少なくとも1500年以上、あるいはもっとか?古い時代の人間のように見えるけど、それであってるかい?」


「・・・なぜそれを?まだ話していないはずですが。」


「君が魔法使いであるように、俺も魔法使いなんだよ。とはいっても、かなり特殊な魔法しか使えないけどね。で、放射性炭素年代測定法ってのがあってね。悪いけど調べさせてもらった。」


 ・・・初めて聞く魔法だ。放射性炭素年代測定?まさか、相手の年齢を調べるような魔法があるとは思わなかった。


「・・・その通りです。・・・仕方がない。お話しましょう。」


 少なくとも、この宗一郎という人物は信用できると判断した。


 そして僕のことを信用してくれている。

 ならば、これくらいは話しておいてもいいだろう。


「ご指摘の通り、僕は今から約1700年前の人間です。現在ではリビア・ナイジェリア・ニジェール国境近く、かつてレギウム・ノクティスと呼ばれた帝国で初代皇帝、ノクス・プルビアと名乗っていました。」


「・・・なるほどね。子供の姿は仮初だったってことか。その姿が本当の姿かい?」


「いえ、逆です。子供の姿が本当の僕です。話せば長くなるので要約すると、今から約1700年前、今では教会と呼ばれる者たちによって魔王と呼ばれ、倒されました。」


「魔王・・・ねえ。またずいぶんな言われようだ。」


「はい。4本の魔法の杭で身体の自由を奪われ、魂を肉体に閉じ込められ、大部分の魔法が使えなくなりました。そのまま石棺に入れられ、今でいうところの神功海山近くの海底に投棄されました。」


「おいおい、石棺に入れて海底に投棄って・・・死ぬだろ?普通。」


「・・・そうですね。通常であれば酸欠か水圧でそのまま死んで、腐敗した肉体とともに魂をすり減らして封殺されるはずでした。」


「・・・ん?マスターから聞いた覚えが・・・?」


 エルさんが僕の話に反応して首をかしげている。


「かろうじて使える魔法を使い、不足する酸素と栄養素を呼気から生成、足りない魔力は自分の肉体の質量を分解して魔力に変換し補いました。・・・封印を解析し、少しずつ分解する余裕ができたのは1000年ほど経過してからでしたね。」


「それで、封印を破って出てきたわけだ。よくまあ1700年も頑張れたものだ。」


「・・・いいえ、ギリギリ質量が足りないはずだったんです。そのままでは、あと300年以内に質量が尽きて、封印を破壊しきれずに終わるはずだったんです。」


「ということは、誰かが君を助けた?・・・神功海山・・・天皇海山群・・・そうか!しんかい12000!去年の秋ごろ、海洋研究開発機構が何か引き上げたって言ってたっけな。」


 しんかい12000・・・この国ではかなり有名なものなのだろうか。


 それとも、彼が何か関与しているのだろうか。


「僕が意識を取り戻したのは海の上に浮かぶ城のような船の甲板でした。矮小化した身体を引きずり、倉庫のような所に潜んでいたところ、しばらくしてこの国の港に着いたため、船を降りました。」


「なるほどね。君が入っていた石棺を引き上げた後のことは分かった。でも、随分と日本語が流暢だね。どこで習ったんだい?」


「港についてしばらくしたころ、基地のような所の敷地内で軍人らしき人が急性アルコール中毒で亡くなっていまして。彼の記憶を読ませてもらいました。」


 実際には魂の情報の一部を複製させてもらったんだが、それを説明するとなるとかなり時間がかかってしまうから割愛しよう。


「そうか。理解した。まるで仄香(ほのか)さんクラスの魔法使いだな。で、君はこれからどうする?子供たちの仇を討つなら付き合うが?」


 ・・・ホノカ?リリスを使役している魔法使いといい、宗一郎さんが褒める魔法使いといい、現代は強力な魔法使いがそこら中にいるということか。


 これは最大限の警戒をする必要があるな。

 やはり、装備を取りに行く必要があるか。


「・・・そこまでしていただくつもりはありません。僕はこれから野暮用を済ませたあと、自分の国に向かいます。後のことは国の現状を見てから考えようかと。」


 僕の予想が正しければ、相手は自称「聖者」、サン・ジェルマンだ。

 宗一郎さんやエルさんを巻き込むわけにはいかない。


「そうか。ま、そういうことなら止める理由はないな。・・・ほれ。餞別代りだ。もってけ。」


 彼はそう言って一枚のカードを僕に差し出した。

 受け取ってみると、銀色のプラスチック製のカードだ。


「これは?何に使うものです?」


「ああ、ディビットカードっていうんだ。そのカードを店で出すと金がなくても買い物ができる。請求は全部俺の口座から引き落とされるから安心しろ。口座には5千万くらいしか入ってないが、よほどデカいものさえ買わなければ何とかなるだろう。暗証番号は1234だ。」


 5千万円か。やっとこの国の通貨に慣れ始めたが、かなりの金額であることに間違いはない。


「感謝します。このお礼は必ず。」


 宗一郎さんにお礼を言い、その場を後にする。


 やるべきことは決まった。

 まずは壮介君と陽菜ちゃんの仇を討つ。

 その後、レギウム・ノクティスに戻り、現状を確認する。


「ん~?あの人、マスターと同じ気配がする?」


 その場を立ち去る僕の耳に、エルさんのつぶやきが聞こえたが、気にすることはなかった。


 ◇  ◇  ◇


 佐世保市内

 佐世保川のほとり

 

 蓮華(れんげ)・アナスタシア・スミルノフ(ナーシャ)


 先週の土曜日に、撮影した動画を美代(みよ)さんに送ったところ、その日のうちに来てくれた。

 美代(みよ)さんの話によれば、顔色の悪いほうがあの二人をアンデッドにしたらしい。

 二人の行方については彼女のほうで調べてくれると言っていた。


 それから、ヴァシレとかいう奴があたしや美代(みよ)さんの周辺を嗅ぎまわっている可能性があるらしい。

 もし、それらしい男を見つけたら美代(みよ)さんから新しく借りた召喚符のうちの一枚を使うように言われた。


 ・・・黒妖犬・・・ヘルハウンドを呼び出せる召喚符だそうだ。


 燃えるような赤い目に黒い体の大きな犬だそうで、戦闘能力はそれほど高くないものの、対象に硫黄のような臭いのマーキングをすることができるらしい。


 後のことは美代(みよ)さんが対応してくれると言っていた。


 それより、今日は新しく借りたマンションに入居する日だ。

 朝から美代(みよ)さんが手伝いに来てくれている。


「ナーシャ。不動産屋からカギは受け取った?」


「ああ。朝一番で行ってきたよ。初期費用は全部、九重総理と浅尾副総理が出してくれたんだよな。・・・申し訳なくて東に足を向けて眠れないよ。」


「ジャあ、サっそく中に入りましょう。今日は間取りを確認して家具も買いに行かなくてはいけないんだから。」


 ・・・美代(みよ)さん、風邪でも引いたのかな?ちょっと話し始めが濁るような気がするけど。


 マンションにしては少し大きめのエレベーターに乗り、5階で降りてすぐのところにオシャレなドアがある。

 不思議な模様のついたディンプルキーを差し込み、軽く回すと気持ちのいいクリック感が手元に伝わった。


 ドアを開くと、白一色で統一された壁紙に、造り付けの下駄箱とコートラック、そして全身が映って余りあるほど大きな姿見があった。

 前回、内見した時に説明は受けていたけど、新しくリフォームしてくれたらしい。


 玄関を上がって右側が洗面脱衣室と洗濯機置き場、その奥にトイレとバスルーム。

 トイレは温水洗浄便座付きで、バスルームは浴室乾燥機付きだ。


 左側には廊下に沿ってコンパクトなキッチンとダイニングがある。

 ありがたいことに2ドアの冷蔵庫と、二口のIHクッキングヒーター、そして電子レンジまで備え付けられている。

 広さとしては食器棚を置くスペースと、二人掛け程度の食卓を置く余裕がありそうだ。


「・・・これ、マジで共益費込みで5万?少し安くない?」


「ナーシャ。コノ物件の大家さんに感謝しておけばいいと思うわよ。」

 美代(みよ)さんはニヤリと笑いながらそう言った。


 美代(みよ)さんの言葉に気を取り直して居室に続くドアに手をかける。


 ドアを開けると、そこには東と南の二面からやわらかい日差しが差し込む、8畳ほどの居室が広がっていた。

 壁際には、まるで当然のようにエアコンがついている。


「うわ~。スゲー広いじゃん・・・。」


 南側の窓の外には、奥行きが1.5メートル、幅が3メートルくらいのバルコニーが広がっている。


「・・・佐世保だとコレくらいの金額なんじゃないかしら。それより、部屋の間取り図のコピーを出してくれる?」


 美代(みよ)さんは手慣れた様子でポケットからレーザー距離計を取り出し、部屋の正確な寸法を測っていく。


「・・・ヨシ。3.8メートル×3.8メートルの正方形、天井高は・・・2.8メートル。和室でいうと8畳より少し広いくらいか。ジャあ、家具とベッド・・・それから布団を見に行こうかしらね。」


 美代(みよ)さんは手早く間取り図のコピーに部屋の寸法を書き込むと、それをしまい、玄関に向かって歩き出した。


「あ、美代(みよ)さん。とりあえず最低限のものがあればいいからベッドはなくてもいいんだけど・・・。」


 なんといえばいいか、妙に美代(みよ)さんが楽しそうだ。きっと部屋の模様替えとかが大好きなんだろう。

 手伝ってもらっておいてなんだけど、美代(みよ)さんが楽しそうなのを見て、私まで嬉しくなってしまった。


 マンションから徒歩と電車で30分ほどのところにある、家具・電化製品売り場を併設したホームセンターに移動する。


「ナーシャ。新居デ必要ナ物で最優先は、ベッド・マットレス・ローテーブル・カーテンよ。すべての寸法は調べてきたから、まずはカーテンから調べましょう。あ、ダイニングも広いからダイニングテーブルも欲しいわね。」


 美代(みよ)さんは鼻歌を歌いながら足取り軽くホームセンターのエレベーターホールに向かっていく。

 彼女を見ていると、壮介君や陽菜ちゃんのことがあったからかなり不安の残る新生活だけど、ほんのちょっぴりだけ楽しんでもいいような気がしてしまった。


 ◇  ◇  ◇


 神奈川県川崎市中原区

 商店街はずれのコンビニエンスストア


 久神 遥香


「いらっしゃいませ~。」


 昨日から咲間さん(サクまん)のお母さんの経営するコンビニで午後5時から午後10時の5時間のアルバイトをさせてもらっている。


 ・・・実際に私が働くのはそのうちの1時間だけで、あとの4時間は仄香(ほのか)さんが働いてくれているんだけど。


「遥香さんはすごく物覚えがいい。レジの打ち方を一回説明しただけで覚えた人って遥香さんが初めてだよ。それによく動いてくれて助かるよ。」


「あたりまえだよ、母さん。遥香っちはウチの学校で学年主席なんだ。それも転入してきてから一度も満点以外とったことがないんだよ!」


 咲間さん(サクまん)とそのお母さんがやたらと褒めてくれるおかげで、妙にこそばゆく感じてしまう。

 本当に優秀なのは仄香(ほのか)さんであって、私は公立高校の平均より少ししたくらいの成績しかとったことがないんだけど。


《遥香さん。そろそろ1時間経過します。交代しますよ。》


 イヤーカフを通して仄香(ほのか)さんの声が頭の中に響く。

 そうか、もう1時間もたったのか。

 それにしても・・・。


「ねえ、咲間さん(サクまん)・・・恵ちゃん。このお店っていつもこんなに混むの?コンビニの仕事って大変なんだね。」


「あ~。いや、普段の夕方はこんなに混むはずないんだけどな。会社帰りには少し早いし、近所の大学生だって普段はこんなに多くないはずなんだよ。」


 そんな話をしているうちに、レジが大混雑し始める。

 どういうわけか、二つあるレジをフル稼働しているのに、お客さんは私のいるレジにだけ並ぼうとする。


「お待ちのお客様、こちらのレジへどうぞ!・・・やっぱり、男性は全部遥香さんのレジに並ぶね。これはやっぱり・・・。よし、恵。遥香さん、あとは任せた!」


 咲間さん(サクまん)のお母さんはニヤリと笑うと、そのままバックヤードに駆け込んでいった。


「母さん、何か悪だくみをしてるよ。発注量、間違えなければいいんだけど・・・。」


 教えられた通り、お客さんの差し出した手を左手で包むように持ち、右手でそっとお釣りを渡す。

 ほとんどのお客さんはニコニコと笑いながら頭を下げていってくれる。


 う~ん。なかなか仄香(ほのか)さんに交代するタイミングが取れない。


《・・・明日から最初の4時間を私が、最後の1時間を遥香さんが担当するように変更しましょう。あ、宅急便のお客さんですね。今のうちに交代しましょう!》


 何とか一息つく瞬間があったので目をつぶる。

 ふわっとした感覚とともに、身体の隅々まで温かい光が広がるのを感じた後、ゆっくりと仄香(ほのか)さんに委ねていった。


 ◇  ◇  ◇


 仄香(ほのか)


 コンビニのアルバイトを少し甘く見ていた。

 ・・・やることが多い!覚えることもやたらと多い!

 まあ、記憶補助術式を使わなくてもそれくらいは覚えられるけどさ。


 そして何より、レジの行列が絶えない!


 初日は仕事を覚えるだけが目的だったはずなのに、私がレジに立っていないと言って客が怒り始めるし、お釣りを渡そうとしたらいきなり手をつかまれるし。


 つい反射的に雷撃魔法を撃ち込んでしまった。


 静電気と言って誤魔化しておいたけど、その客は今日も同じように来やがった。

 どいつもこいつも鼻の下を伸ばしやがって。まったく、いい度胸をしているよ。


 ・・・しかし、これ、便利だな。

 全自動詠唱機構(フルオートチャンター)か。

 千弦から没収して少し手直ししてみたが、ほぼ完全に無詠唱で魔法が使えるじゃないか。


 若干だが微調整に難があることと、魔力の消費がかなり激しいことを除けば、エルリックの高速詠唱より役に立ちそうだ。

 今度、ちゃんとしたのを千弦に作ってもらおう。


 いつまでもレジ打ちだけしているわけにもいかず、咲間さん(サクまん)に交代をお願いする。


 この店は午後8時頃に雑貨とドリンクの共配があるので、その前にバックヤードからの品出しと前陳(棚にある商品を一番前まで出して整理すること)、賞味期限の管理、空いた時間で清掃作業をしなければならない。


 ウォークイン形式の冷蔵庫に入り、ドリンクを補充していく。

 ・・・どうせ後で発注作業もするのだ。残り本数は全部覚えてしまおう。


 続けて雑貨とスナック類の補充、乾麺、カップラーメン類の補充を終わらせる。


 一通り品出しと前陳作業が終わったところで賞味期限管理を行う。

 昨日は結構な数の廃棄商品が出ていたが、今日は少ない。


 廃棄商品の撤去を終えて、清掃作業に入る。

 ・・・ふう。トイレ掃除が一番楽だ。誰にも話しかけられないで済むからな。


「・・・遥香さん、ほんとによく働くわね。勤務二日目でそんなに楽しそうにトイレ掃除するアルバイトって初めて見たよ。いっそ、テスト休みが終わってからもウチで働くかい?」


 トイレ掃除を終わらせ、手を洗っていると咲間さん(サクまん)のお母さんが声をかけてきた。


「オーナー、お疲れ様です。そう・・・ですね。即答はできません。大変な仕事ですね。私では作業についていくのが精一杯です。」


「二日目で発注までこなせるアルバイトなんて、そうそういてたまるかね。ま、発注については私と恵がチェックしてるし、モノが来てからじゃないと上手くいったかどうかは分からない。・・・っと。話しているうちに雑貨とドリンクの共配が来たようだ。どっちをやるかい?」


 雑貨とドリンクの品出しか。うん、絶対にドリンクだな。

 バックヤードで作業できるし、こっそりと念動呪を使えるから体力的にも断然楽なんだよな。


「ではドリンクの品出しを。」


「遥香さん、わざわざ大変な作業を選ぶとはブレないねぇ。」


 私にとってはずっと気が楽なんだけどな。


ナーシャと家具屋に行ったのは仄香ではなくリリスです。

シェイプシフターとは違い、誰かになりすますことは苦手であるため、ここにきてやっと口調を仄香のソレに似せることが出来ました。

会話の出だしはやはり濁るようですが。

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