148 ハッピーバレンタイン・バースデー
2月14日(金)
咲間 恵
来週の月曜日から期末試験が始まるというのに、今日は私の誕生日だということでコトねんや千弦っち、仄香さんや遥香っちが祝ってくれることになった。
私の家は兄さんと母さん、そして私が住む2DKの小さなアパートだ。部屋だってそれぞれ六畳しかない。
そんな小さな家でできる誕生日だから毎年うちの店の廃棄商品のショートケーキを食べて終わりにしていたんだけど、今年はかなり派手な誕生日になりそうだ。
放課後、待ち合わせ場所の校門に向かうと、そこにはすでにみんなが揃っていた。
なぜかエルまでいるのには驚いたけど。
「あ、咲間さん、来た!仄香、これでみんな揃ったね。今日は特別な会場を用意したって言ってたけど、ここからどうやって行くの?車?電車?」
《仄香さんのことだからすごい場所を会場にしそうだけど・・・?》
コトねんと千弦っち、今日は両方とも眼鏡をかけてないから区別がつかないな。
遥香は今日も杖の中か。
「移動は長距離跳躍魔法を使います。電車や車だと一日二日で移動できる距離ではないですからね。皆さん、こちらへ。」
仄香さんの言葉に従い、みんなでぞろぞろと校門横にある高校校舎棟の陰に入っていく。
「みなさん、準備はよろしいですか?・・・では、私たちの隠れ家に移動します。」
「隠れ家?それってどこにあるの?」
「台湾です。・・・勇壮たる風よ。汝が翼を今ひと時我に貸し与え給え!」
「え・・・。あ、パスポートがないと密出国・・・うわっ。わあぁぁぁぁぁぁ!」
仄香さんが魔法の詠唱を終えると同時に、全身に強いGがかかり、目を開けば眼下には青い地球、四方には星の海が広がっている。
台湾旅行の時に一度経験はしているものの、なかなか慣れることができない。
いや、これぞまさしく魔法、って感じはするけどさ。
「・・・つきましたよ。ちょっと空気が薄いから早く中に入りましょうか。定点間中距離転移術式を発動。」
仄香さんが再び何かをつぶやくと、瞬時に景色が切り替わる。
気が付けば眼前には、リノリウムの床と並び立つ鉄筋コンクリートの柱、そして暖かな木材の壁やアーチ状の天井を持つ大空間のエントランスが広がっていた。
一瞬のことでよくわからなかったけど、外は恐ろしく高い山の中のようだ。空気もすごく薄いし、とても寒かった。
「ん。帰ってきた。ようこそ恵。ここが私とマスターの家。」
エルが自慢げに胸を張る。
笹穂状の耳がピコピコと動いているのが妙にかわいらしい。
「うわ~。これ、もしかして例のダンジョンの中の隠れ家ってやつね!すごい!廊下の端が見えない!」
「きゃ~。見て見て!廊下のガラス張りの壁から小さな町みたいなのか広がってるのが見えるよ!」
コトねんと千弦っちがピョンピョンと飛び回ってはしゃいでいる。
いや、ちょっとスケールが大きすぎてついていけないんだけど・・・?
《咲間さん。私も最初に仄香さんに連れてこられたときはそういう反応だったよ。》
ボケーっとしていると、杖の中で遥香が同意してくれた。
「みなさん、ようこそ。ここが私の隠れ家、魔女の館です。生身でここに入った人間はあなた方以外では今のところ一人のみです。」
「・・・マスター?私のことカウントしてない。」
《仄香さん、その一人って私?》
「グローリエルはエルフでしょう?遥香さんは生身というのとはちょっと違うかと。」
エントランスホールというイメージの広間は、テニスコート2面くらいの広さがあって天井は4階建てのマンションがすっぽり入りそうな高さがある。
そして、その天井から下がったシャンデリアは、直径が10メートルを軽く超えている。
奥に続く廊下?いや、車が3台くらい並んで走れそうな道は、赤い絨毯が敷かれていて、ガラス張りになった壁の向こうには様々な施設が並んでいるのが見えた。
「奥へどうぞ、とは言ってもかなりの距離がありますから、こちらへ。」
仄香さんの案内に従い、エントランスホール横の自動ドアをくぐると、そこには細長い部屋があり、一段下がったところにはいくつもの青く光る円盤が浮いていた。
「みなさん、これに乗ってついてきてください。」
光る円盤の一つに足を乗せる。
床から十数センチの高さに浮いているそれは、直径が2メートルくらいあり、体重をかけても全く揺れることもなく浮遊している。
仄香さんが乗った円盤が音もなくスゥーっと動き出すと、それにつられるかのように私たちが乗る円盤も加速を感じさせることもなく動き始めた。
「うわ、あっち見て!あれプールじゃない!?それと・・・あっちは映画館って看板がある!うわ、あれ、温泉のマークじゃん!」
「あ、漫画喫茶だって。うわ、ボーリング場まであるじゃん!え?あれ、サーキット?どんだけ娯楽があふれてるのよ!」
《千弦ちゃん!シューティングレンジもあるんだよ!しかも本物が撃てるんだよ!》
コトねんと千弦っち、そして杖の中の遥香っちが大騒ぎをしているが、手すりもなく動く円盤がちょっと怖い。
30秒ほど乗っただろうか。
円盤は高校の教室くらいの大きさの部屋の前にゆっくりと止まった。
そこには、天井や壁に一目見て誕生パーティー会場とわかる飾り付けがされた部屋だった。
「さ、主賓はこちらへ。今、グローリエルが料理を持ってきますので。琴音さん。千弦さん。手伝ってあげてください。」
三人はキッチン・・・いや、厨房のようなところに入っていった。
仄香さんに促されるまま席に着くと、目の前にはものすごく豪勢な料理が並べられていた。
ふと壇上を見ると、半透明の妖精のような姿の人たちが楽器を演奏している。
「仄香さん、あの人たちは?」
「彼らはムーサと呼ばれる女神です。ギリシャ神話に登場する女神で、ミューズとも呼ばれ、ミュージックの語源となった神々ですね。とはいえ、精神世界で人間の思念によって結像した存在ですから、一般の人が考える神々とは少し異なりますが。」
・・・?いくらあたしが音楽家志望だからって、女子高生の誕生日にわざわざ神様を呼ぶか?しかも、九柱も!?
なんというか、緊張しすぎて何が何だか分からなくなってきたよ。
◇ ◇ ◇
南雲 琴音
初めのうちはガッチガチに固まっていた咲間さんも、仄香の非常識さに慣れてきたのか、今では普通に楽しんでいるように見える。
しっかし・・・BGMをかけるのにわざわざ召喚魔法を使って音楽の神々を呼ぶかね?しかも九柱も。
まあいいや。
メインの料理も終わって、今はエルが作ったケーキをみんなでおいしく食べている。
バレンタインも兼ねているらしく、今日はチョコレートとアイス、そしてフルーツをふんだんに使ったケーキがふるまわれた。
「ね、そろそろいいかな。」
ふと見れば、姉さんがプレゼントの箱が入った紙袋を準備している。
ふふ、仄香の誕生日の時にはちょっと遅れをとったけど、今回は負けないよ。
「よし。じゃあ、今回は私から行かせてもらうね。・・・仄香、そろそろプレゼントの時間にしない?」
「ええ、ひととおり料理も終わりましたし、そうしましょうか。じゃあ、誰から渡します?」
「ふふ、じゃあ、私から!ハッピーバースデー!咲間さん。これからもよろしくね!」
今回は健治郎叔父さんに手伝ってもらったし、かなり自信があるのだ。
「あ、ありがとう。コトねん。開けていい?」
私が頷くと、咲間さんは中から包装された箱を取り出し、丁寧に開いていく。
「うわ・・・すごい!指輪だ。カッコよくてカワイイ。それにサイズは・・・すごい。どの指でもフィットする。これ、もしかして魔法の指輪?」
ふふふ、驚くのはまだ早い。
「その指輪にはサイズを自動で調節する機能がついてるからね。それだけじゃないよ。咲間さんが常時放出している微弱な魔力から回復治癒魔法を作って、ギターとかで傷めた指先を治癒してくれる機能がついてるんだ。骨折や大きな切り傷はすぐには無理だけど、皸や霜焼けなんかは一時間もしないうちに治るっていう効果付きだよ。」
「うわ、じゃあ、これ、魔法の指輪なの!すごい!ありがとう、コトねん!」
よしよし、喜んでもらえて何よりだ。
「・・・やるわね。まさか師匠の力を借りるとは思わなかったけど。じゃあ、次は私ね。誕生日おめでとう、咲間さん。」
姉さんも咲間さんに紙袋を渡した。
中から出てきたのは、、私が用意したプレゼントと同じくらいの箱だ。
まさか・・・姉さんもアクセサリー?
「ありがとう、千弦っち。・・・これはピアス?うわ、すごい、この石、中で炎が踊ってる。もしかしてこれも魔法のピアス?」
ふと姉さんのほうを見ると、ものすごくドヤ顔をしている。う、何かイヤな予感が・・・。
「ふふん、前に咲間さんが絶対音感がないって嘆いてたじゃない?だから作ってみました。絶対音感が身につくピアス。それだけじゃないよ。ノイズキャンセリング機能と騒音防止機能を持たせたんだ。音楽家は耳が命だからね。これをつけている限り、絶対に外傷性難聴にはならないよ。」
こんな小さなピアスに、どんだけの機能をつぎ込んでるんだ。
・・・って、ちょっと待って。絶対音感って、外から入ってきた音をすべて音階に分けて認識するっていう、アレよね?
「ね、姉さん。ちょっと、そこまでの術式を動かそうと思ったら、咲間さんの魔力じゃあ足りないんじゃないの?耳につけると魔力欠乏症になるピアスとか怖いよ?」
私の言葉に、一瞬咲間さんの手が止まる。だが、姉さんはさらにドヤ顔を強くした。
そこに、仄香の思わぬ声がかかる。
「・・・千弦さん。その石、どこで手に入れました?魔石じゃないですか。しかも・・・まさか人造?」
「え?これ、魔石っていうの?いや、この前のイベントで手に入れたんだけど、調べれば調べるほど不思議な石でね。術式も組まれていないし、呪いもかかっていない。それどころか一切の情報が含まれていないのに魔力を大量に含んでいるなんてちょっと珍しくてさ。せっかくだから活用しようと思ったんだけど、まずかった?」
魔石・・・?初めて聞いた。魔力結晶と何が違うんだろう?
「魔石というのは、幻想種・・・魔力溜まり産の生命体がその体の中に持つ核のような石で、幻想種はその中に魔力を蓄えたり、人格情報や記憶情報を蓄えたりしています。グローリエルの体の中にもありますね。彼らが人間と違って非常に長命なのも魔石によるものですが・・・。それ、何者かが魔石を模して作った人造魔石ですね。」
「それって危険なの?もしかして誰かの命と引き換えに作った、とか?」
「いえ、魔力結晶に比べると全く危険はありません。砕いても磨いても爆発はしませんし、魔力密度はそこまで高くありませんから。それより、すごいですね。この魔石、植物から作られている。しかも、元になった植物を犠牲にしていない?どうやって作ったんだろう?」
仄香が知らない魔法の知識なんてあったんだ。ってか、なんてものを見つけてくるのよ。また姉さんの勝ちじゃない。
「ふ~ん。ま、いいや。咲間さん。危険はないみたいだよ。つけてみて。」
姉さんの言葉に咲間さんは恐る恐るピアスを耳につける。
「うわ、すごい。音階が頭の中に入ってくる。すごい!音がこんなにクリアに聞こえるなんて!」
う~ん。咲間さんが喜んでるならいいや。
「ん。次は私の番。はい、誕生日おめでとう。」
興奮冷めやらない咲間さんにエルが大きな包みを渡す。あの感じだとぬいぐるみ?いや、クッションか?
・・・うわ、すごい。リザードスキンか何かの赤い革ジャンだ。スタイルがいい咲間さんにすごく似合いそう。
「あ、ありがとう。・・・うわ、すごい。革ジャンだ。それも、爬虫類系?それにしてはウロコがでかくて硬いね。もしかして手作り?これって何の革?」
「私が作った。フレイムドラゴンの革。玉山の魔力溜まりの。断熱性能は魔法瓶並み。耐火性能はタングステン並み。刃物や銃弾も通さない。」
・・・なんてもん作ってるんだ、このエルフ。
「あ、あはは、・・・マジ?」
「ん。でも術式はかかってない。ただの革ジャン。」
「「ただの革ジャンなわけあるか~!」」
あ、姉さんと声がハモった。じゃあなくて。ドラゴンの革とか、伝説級のシロモノを使って革ジャンを作った!?
ドラゴンレザーって、伝説級の鎧の素材だよ!?それも、フレイムドラゴン?咲間さんを魔王とでも戦わせるつもりか?
「・・・うん。いいね。ぴったりだ。しかもすごくあったかい。ありがとう、エル!」
あ、咲間さん、とうとう考えるのをやめたっぽい。
でも、本当によくできてるな。エルは裁縫の才能まであったのか。・・・ん?ドラゴンの革を、縫った?どうやって?
「琴音。考えたら負けだと思うよ。まだ仄香のプレゼントが控えてるんだから。」
う、そうだった。一番常識がなさそうな仄香のプレゼントがまだだったよ。
「ふふ、みんないろいろ考えてすごいものをプレゼントしましたね。私は遥香さんと一緒に考えたんですけど、一番普通のものになりましたね。」
そう言いながら、テーブルの下から小さな紙袋を出し、咲間さんに渡した。
彼女はお礼を言いながら丁寧に包装を開き、中の箱を開ける。
「うわ、チョーカーだ。へぇ~。すごいオシャレじゃん。この赤い宝石、ルビーじゃないし、ガーネット?いや、なんだろう?」
咲間さんはさっそくチョーカーを首につけている。
シルバーの鳥の羽が放射状に3枚巻き付き、中心に丸く赤い宝石があしらわれているのがとても上品だ。
「人工魔力結晶です。」
「「ブフォォォ!」」
姉さんと二人そろって吹き出してしまう。
なんという呪物を渡してるのよ!何人分の命が込められているのよ!?
「仄香・・・いくらなんでもそれは・・・。」
「・・・?私の魔力を固めただけですよ?」
「そ、そう・・・個人の魔力で人工魔力結晶って作れるもんなんだ・・・。」
「あはは、それで、このチョーカーにはすごい魔法とかかかってるんでしょ?どんな魔法がかかってるんだい?」
ま、まあ、咲間さんがいいんならいいけどさ。
「咲間さんはギターボーカルでしたよね。このチョーカーをつけていれば、どんなに歌っても、どんなに大声を張り上げても声が枯れることはありません。千弦さんのピアスが耳を守るモノであるように、喉、つまりは声帯を守ってくれる術式が組まれています。」
うわ、仄香の回復治癒系魔術か。私の指輪の機能と重なっちゃったな。でも仄香の術式に勝てるわけないんだよな・・・。
「ねえ、仄香。そのチョーカー、回復治癒の術式が組まれてるの?琴音の術式に比べて妙に複雑さを感じるんだけど?」
姉さんが咲間さんの首につけられたチョーカーをのぞき込んでいる。
「いいえ?回復治癒魔術なんて使ってませんよ。使っているのは時空間干渉魔術です。ノルンの三女神の術式で状態維持と遡行による修復を行っているだけですね。」
「そ、そう?よくわからないけど琴音の術式とは違うのね。」
う~ん?ノルンの三女神?確か運命をつかさどる女神の名前だったような気が・・・。でも姉さんでもわからない術式を組むって、やっぱり仄香は魔女なんだなぁ。
まあ、いいや。
咲間さんも喜んでいることだし、バースデーパーティーは大成功ってことで。
それにしてもエルのケーキはおいしいな。
何皿でも食べられそうだよ。
◇ ◇ ◇
蓮華・アナスタシア・スミルノフ(ナーシャ/半分頭)
今日はいよいよ佐世保の児童養護施設に向かう日だ。
あたしが働くことになる児童養護施設は、超党派議員たちの声掛けで国内外のいくつかのNPO法人が協力して、保護者がいない中学卒業までの子供に対し、必要な衣食住と十分な教育を与えることを目的に今年の初めに設立されたらしい。
運営開始は2月半ばから、今はまだ準備期間だそうだ。
つまりは、あたしはスタートメンバーの一人になる。
美代(バイオレット)さんや九重総理、浅尾副総理には一生頭が上がらないだろうなと思う。
荷物をまとめ、ホテルをチェックアウトする。
宿泊費がいくらになるか、最後まで分からなかったよ。
きっと見たこともないような金額になるんだろうな。
残念ながら美代さんの見送りはなしだ。
今日は大事な用事があるらしく、メールで激励の言葉だけもらった。
彼女の勧めどおりにメールで今日あったことや日常で気付いたことなどを毎晩寝る前にメールしているけど、毎回的確なアドバイスをもらえるのがとてもうれしい。
空港に向かう電車の中、新しく買ってもらった洋服や参考書の入ったキャリーカートの重さがとても心地よく感じる。
あたしが生活するためのアパートは3月1日からの契約になるが、先方はすぐにでも人手が欲しいらしく、しばらくは児童養護施設の宿直室に寝泊まりすることになる。
だが、ネットカフェで慣らしたこの身体がどうにかなることはないだろう。
次に美代さんに会う時には胸を張って人のために役に立っているあたしを見てもらおうと、車窓に映る良く晴れた空に誓いを立てた。
◇ ◇ ◇
三条 満里奈
横須賀の人工魔力結晶抽出施設が私の視察の後すぐに大火災を起こし、研究員4名と信徒1名、アンデッド1体を失ったとの報告を受けた。
近隣にいたほかの信徒に確認に行かせたが、跡地は完全に焼け落ち、孤児院も教会も跡形もなくなっているという。
人工魔力結晶のすべてを持ち出せたのは幸いだった。
1gでも残っていようものなら、小規模でも魔力災害を引き起こしていたに違いない。
だが、この火災は不審な点が多すぎる。
あそこにはそれほどの可燃物はなかったはずだ。
それに、孤児院や教会施設は完全に焼け落ちたにもかかわらず、近くに立つ私立高校には全く被害がなかったという。
何者かが教会施設に対する攻撃を行っている?
かつてプラハやニューヨークで起きた教会襲撃事件のように?
「・・・考えても始まりません。まずは情報、次に戦力ですね。」
手元にある鈴を鳴らすと、控えの間にいる侍女がすぐに参上する。
「今すぐにヴァシレ・アントネスクを呼びなさい。それと・・・マフディ・ジャハーンもです。」
「かしこまりました。猟犬ヴァシレと屍霊術師マフディですね。直ちに。」
ヴァシレは新潟の妙高のあたりで鬼とやらを探して聞き込みを行っているはずだ。十二使徒の第十席で、あまり戦闘力は高くはないが情報取集力に長けている。
また、マフディは強力なアンデッドを作成し、同時に数十体を操ることができる。
十二使徒の第四席で本人も強力な魔法使いであり、連携を行った時の戦力は極めて高い。
過剰戦力のように感じるが、九重総理の周辺に魔女の影がちらつく以上は、私自身も戦う可能性を考慮しておいたほうがいいだろう。
「忌々しい・・・。魔女め。どこにいるというのですか。見つけたら特大の魔力結晶にしてやるものを。」
「聖女様。ヴァシレは明朝、マフディは来週の月曜には到着するとのことです。」
「よろしい。では後のことは良しなに。」
ヴァシレが到着次第、横須賀の火災についてはすぐに調査を命じよう。
週明けにはマフディも到着するのだから、そちらは任せておけばいい。
さて・・・。いつまでも失った手駒を悔やんでいても仕方がない。
来週半ばまでには、我々の信徒がNPO法人の名を借りて設立した新しい人工魔力結晶の抽出施設の視察を行わなければならない。
手駒と材料。良いものが集まることを期待したいものだ。