132 双子の恋の斑模様
1月13日(月)
南雲 千弦
今日は琴音に連れられて、羽田空港第2ターミナルまで来ている。
今さっき、遥香を問い詰めて判明したんだけど、なんでも一昨日咲間さんや遥香と一緒にガドガン先生のひ孫さんと東京観光をしていたらしい。
・・・なにそれ。聞いてないんですけど。
しかもそれだけでなく、観光の終わりには赤坂の高級料亭でふぐ鍋をごちそうになったという。
なにそれ!なんで私も誘ってくれなかったのよ!
「あ、姉さん。ほら、アレクが来たよ。彼がガドガン先生のひ孫さんだよ。」
「・・・イケメンじゃない。なんでイケメンは全部琴音のところに行くのよ。なんか、ズルくない?」
細身でダークブラウンの髪の青年が、キャリーバッグを片手に手を振りながらこちらに向かって歩いてきた。
「やあ、琴音。遥香。恵。わざわざ見送りに来てくれるなんて。それと、君が千弦さんかい?いや、本当にそっくりじゃないか。これは区別がつかないよ。」
「・・・驚いた。今、琴音と私の区別ついてなかった?」
いや、初見で琴音と私の区別がついた人って、仄香以外では初めてなんだけど。
「ハハハ。今のはたまたまさ。でもまずは一回目でカウントしてもいいかい?」
アレクさんは琴音のほうを振り向くと、ニヤッと笑いながらそう言った。
カウント?何の話だ?それとなく咲間さんのほうを見ると、何とも言えないような困った顔をしている。
「コトねん、アレックスさんと賭けをしたんだよ。三回連続でコトねんと千弦っちの区別がついたら、コトねんと付き合えるんだってさ。」
なるほど。そういうことか。
いきなり私をたたき起こして、頭のてっぺんからつま先まで同じデザインの服や靴を着せて、バックなどの小物まで揃えたうえで眼鏡までかけさせたのはそれが理由か。
っていうか、絶対外すなと言われてる九重の爺様からもらったピアスまで外させられたし・・・。
だが残念だったな。
私は昨日と一昨日は術式回路の研究で寝ていないのだ!
目の下にはファンデーションで隠し切れない大きなクマが出ているのだ!
・・・あれ?そうすると琴音に彼氏ができるってことになるのか?
なんというか、それは・・・許せないな。
《ねえ、仄香。アレクさんは琴音と私の区別、ついてるのかな?》
《多分、その眼の下のクマで判別してると思う。・・・少し目が泳いでいたからな。》
《じゃあ、話は早い。次に琴音が何か言う前に、パパっと消しちゃってくれない?ついでに琴音の目の下にもクマを張り付けてさ。》
《おいおい、疲労を回復したり睡眠不足を解消したりすることはできるが、その逆はできない・・・いや、あれを使えばいけるか?おもしろい。やってみようか。》
「・・・仄香さんと千弦ちゃんがまた何か悪だくみをしてるよ。でも、そのクマを消すのは賛成かな。とりあえず、仄香さん、交代しよっか。」
よし、遥香も賛成してくれたみたいだ。杖を片手にそっと目をつむり、再び目を開くとそれまで立っていたアホ毛がふわっと倒れ、雰囲気が変わる。
・・・ん?そういえばあのアホ毛、仄香の時は立っていないかったような気が・・・。
「さて、まずはそのクマを消しましょうか。」
仄香はそう言うと、私の顔に左手をかざし、ゆっくりと息を吐いた。
それまで感じていた、頭に靄がかかっていたような感覚と、首や後頭部のコリがなくなっていく。
完全に眠気が飛んだ頭を軽く振り、スマホをインカメラにして自分の顔を確認してみると、あれほどひどかった目の下のクマがすっかり消えていた。
「うわぁ・・・。なんというか、相変わらずすごいわね。回復治癒呪って。もしかして、それがあれば何日か徹夜とかできそうじゃない?」
「ええ。効率よく使えば2〜3年は寝ないで活動できますが、あまりお勧めしませんよ?・・・目の下のクマの原因は眼輪筋の血行不良により酸素が欠乏して起きるもの。ならば、ピンポイントでそのあたりの酸素濃度を下げてやれば・・・。」
仄香はそう言って琴音に近づき、小さな声でそっと詠唱を始めた。
「彼の者の生命を育みし血潮よ。第八、第二十六の元素精霊よ。わが意に従い、疎となりて今ひと時その御手を休ませたまえ。・・・う〜ん。結構制御が難しいですね。」
琴音はアレクさんとの話が楽しいらしくて、後ろで仄香が魔法を使ったことに気づいていないようだ。
相変わらず魔力検知が苦手だな。これほど近くで魔法を使われても気づかないとは。
「お、あそこがブリティッシュエアウェイズのカウンターだね。チェックインの手続きをしてくるからちょっと待っててくれるかい?」
アレクさんは琴音に軽く手を振り、航空会社のカウンターへキャリーバッグを引いて歩いて行った。
「よし、姉さん。二度目のチャレンジよ!・・・ってあれ?さっきよりずいぶんと血色がよくなったわね?顔でも洗ってきたの?」
そういって振り向いた琴音の目の下には、うっすらとクマのようなものが浮き出ている。
《すごいわね!?この短時間でこうも変わるもんなの?っていうか、まだ5分もたってないわよ!》
《いや、元素精霊魔法で眼輪筋ピンポイントで血行不良を起こさせるのは初めてだったからな。健康状態に影響しないように制御するのが大変だったよ。》
「仄香さんと千弦っち、そんなにしてまでコトねんとアレックスさんの恋路を邪魔する必要なんてないと思うんだけどな・・・。あ、アレックスさん、終わったみたいだよ。」
航空会社のカウンターで手続きを済ませ、あとは手荷物検査と保安検査場でのセキュリティチェックだけとなったアレクさんが戻ってくると、琴音はいきなり私の横に立ち、再びアレクさんに声をかけようとした。
そうはいくか。ここからは私のターンだ。
「アレクさん。さて二回目のチャレンジよ?さて、どちらが琴音でしょう?」
琴音に先んじて私がアレクさんに問いかける。すると、アレクさんは一瞬困ったような顔をした後、ゆっくりと答えた。
「・・・君は千弦さんだね。琴音はこっち。合ってるかな?」
・・・!?
彼が即答したことに驚き、固まってしまった。
なぜ、これほど早く分かった・・・?
思わず琴音のほうを見ると、妙にうっとりしているような表情をしている。
さては、自分と私の区別がつく男性に初めて会って、感動しているのが恋愛感情とごっちゃになってるな?
「・・・ねえ、千弦っち。コトねんはアレックスさんのことを『アレク』って呼ぶんだよ。今、千弦っちは『アレクさん』って呼んでたよね。それでバレたんじゃない?」
咲間さんの鋭いツッコミに、思わずよろめいてしまう。
仄香に魔法まで使わせたのに、そんなに単純なことで見破られるとは。
「くそ、次がラストチャンス!今度は負けないわよ・・・!!」
「姉さん。私の恋路を邪魔してそんなに楽しいの・・・?」
さっきまでうっとりしていた琴音が、あきれたような声を出している。
「なんでいつも琴音ばかりなのよ!私だって普通に彼氏とかほしいわよぉー!」
あまりの不公平さに地団駄を踏んでしまう。
っていうか、顔もスタイルも全く変わらないのに、指紋や虹彩紋以外、それこそ声紋認証や歩容認証、顔認証システムまでごまかせるほど似てるのに、なんで私には色恋沙汰が全く来ないんだ!
「・・・何をやってるんですか、まったく・・・仕方ありませんね。手荷物検査と保安検査場での手続き前が最後のチャレンジでしたっけ。二人とも、こちらへ来てください。」
そう言って仄香は私たちを近くの女子トイレに連れていく。いったいどうするつもりだろう?
「まず、琴音さんはアレックスさんが自分を正しく認識してくれるかを確認したい、それでいいですか?」
「うん。姉さんと私の区別がつくなら付き合ってもいいかな、なんて思ってる。」
「・・・じゃあ、千弦さんは、琴音さんの恋路を邪魔したい・・・わけではなくて、アレックスさんが本当は区別がついてないんじゃないかと疑ってる、これでいいですか?」
「そう!それよ!だってさっきからアレクさんは目の下のクマとか自分の呼ばれ方とかで区別してたじゃん!そんなんで済し崩し的に琴音にだけ彼氏ができるなんて面白くないわよ!っていうか、理君のことはどうするのよ!」
「ぇええ・・・。まるで八つ当たりじゃない。それに理君からはまだ付き合ってほしいとか言われてないんだけど・・・?」
ぐ、くうぅぅ!あの臆病者!とっとと琴音に告白してフラれてくれていれば私がアプローチすることだって出来たのに!
「仕方ありませんね・・・ちょっと待っててください。」
そう言うと、仄香は懐から一枚の術札を取り出した。そして素早く魔力を流し込み、女子トイレに小さな結界を構築する。
これは・・・人払いの結界か。トイレを探している人たち、ごめんなさい。
続けて、その鈴が鳴るような美しい声で、歌うように詠唱を始めた。
「黄金の毛皮を持つ者、鋭き牙爪なく神秘の鏝を携えし獣よ。汝は奇跡の体現者なり。なればその御業、只人が解すること能わず。ただ我が解するのみ。来たれ、シェイプシフター。」
仄香がかざした右手の先の空間が一瞬ゆがんだかと思うと、目を丸くした二号さんが現れる。
・・・毛玉だらけのパジャマを着て、遥香そっくりな姿で、その手に食べかけの生魚を握ったまま。
「ウワァ・・・。マスター。喚ぶなら先に一言ほしかったデス。この魚、食べ終わるマデ待ってもらってもイイデスカ?」
「あら。・・・ごめんなさいね。向こう側から喚ぶ時の癖が抜けてなかったわ。まさか食事中だとは思わなくて。」
仄香がそう言うと、二号さんは20センチはありそうな、フナによく似た生魚を大きく口を開けて頬張った。
女子トイレの中には、彼が生魚を咀嚼するボリボリという音が響いている。
・・・うわ、アレ、血抜きしてないよ。内臓も抜いてないし、エラもそのままだ。それどころか鱗も落としていないよ!?
《きゃぁー!私の顔でそんな食べ方しないでー!》
杖の中で遥香が悲鳴を上げている。当然、琴音もドン引きしている。
「フウ。ゴチソウサマデシタ。で、ボクは何をすればイイデスカ?」
二号さんは生魚の血で汚れた口の周りを洗面所で洗い、どこからともなく取り出したハンカチでぬぐい取った。
・・・今ちらっと見えたのは・・・おなかに袋がある?こいつ、まさか有袋類?
「早速だけど千弦さんに化けてもらえるかしら。服装は・・・琴音さん。着ているものを貸してもらえますか?」
琴音は目を丸くしたままカクカクと首を縦に振り、自分の着ているものを二号さんに渡した後、彼が着ていたパジャマのような洋服と、スリッパのような履物を身に着ける。
その後、すっかり私と同じ姿になった二号さんを連れて女子トイレから出ようとしたとき、琴音が絞り出すように言った。
「ちょっと待って。この格好で空港内を歩けって言うの?」
・・・うん。ちょっと可哀そうになったので、電磁熱光学迷彩術式を仄香にかけてもらったよ。
◇ ◇ ◇
アレックス・ガドガン
チェックインの手続きが終わり、あとは手荷物検査と保安検査を残すのみとなった。そこから先は制限エリアになるので、見送りはここまでとなる。
それにしても、琴音と千弦さんについては驚かされるばかりだ。
あそこまでそっくりな双子は見たことがない。
ホクロの位置から歯並び、声質、イントネーションまで区別がつかない。
幸い、最初は目の下のクマで、次は僕の呼び方で区別がついたが、今頃は化粧室で目の下のクマを消したり、僕の呼び方やしゃべり方を考えているんだろうか。
考えてみれば、僕はイギリスでそれなりに名前が知られているバンドグループのリーダーだ。
本業は学生だけど、バンドでそれなりに稼いでいる。
ファンの女の子も結構いる。
だが、琴音はそういった、後から身に着けたものを気にせずに話ができる女性のような気がした。
爺さんの言うとおりにするつもりはなかったんだが、いまは遠距離でもいいから文通くらいはしてみたいという思いがある。
二度目のチャレンジに成功したところで、琴音の姉の千弦さんが地団駄を踏んで悔しがり、それを同行している遥香さんが宥めながら三人で女子トイレに向かって歩いて行った。
おそらく、最後のチャレンジの仕込みをするつもりだろう。
僕と、もう一人残った恵さん、みんなからは咲間さんと呼ばれる少女がその場に取り残された。
「あちゃ~。あれ、いよいよ本気になったみたいだね。次は多分、魔法を使ってくると思うから、アレックスさんも用心したほうがいいよ。で、コトねんと本気で付き合うつもりなの?」
最初のうちは態度が硬かった彼女も、何度か話すうちに砕けた態度になっている。
「付き合う、というか、文通くらいでも僕は満足なんだけどね。それにしても魔法?・・・こまったな。僕は魔法については完全に素人なんだけど・・・。まあ、いいや。二人の言動や表情、洋服についても注意深く観察しよう。」
「・・・ま、ラストチャレンジだし、確率は二分の一、そんなに構える必要もないと思うけどね。」
恵さんの言葉が終わるころ、遥香さんに連れられた琴音と千弦さんがこちらに向かって歩いてきた。
二人ともあまり変わってないように見えるが・・・。
「さあ、ラストチャレンジです。アレックスさんが琴音さんだと思う人を指さしてください。見事正解すれば、私も琴音さんと正式にお付き合いを認めましょう!」
遥香さんが自信たっぷりな声でそう宣言する。
爺さんは、落とせそうなら遥香さんを最優先で落とせと言っていたが、この娘、ちょっと怖いんだよな。
あらためてその場に並んだ二人を見比べる。
目の下のクマは完全になくなっているところを見ると、ファンデーションか何かで隠したのか?
二人とも先ほどの千弦さんの状態とほとんど変わらない。
洋服についたしわの形、メガネの模様・・・琴音はこっちか?
いや、交換されていたとしたらもう分からない。
「・・・困ったな。二人とも全く同じだ。というか、先ほどの千弦さんと区別がつかない。二人とも千弦ってことはないだろうし、これほどまでに区別がつかなくなるとは。ごめん、降参だ。」
残念だけど、琴音と付き合うことは無理らしい。肩を落とし、諦めかけたその時、後ろから誰かが飛びついてきた。
「アレク!すごい!両方とも私じゃないって気付くなんて!」
真後ろから聞こえてきた声に気付き、反射的に振り向くと、そこにはパジャマのような服にスリッパをはいた琴音が満面の笑みを浮かべて抱き着いていた。
「・・・信じられない・・・私と琴音の区別がつくだなんて・・・。」
二人並んで立っている片方が驚きの声を上げる。
・・・いや、本当に分からなかっただけなんだが。というか、今からでも、実は区別がついてませんと正直に言うべきか?
というか、もう片方の少女は誰なんだ?魔法?分身の術的な?
「意外でシタ。でもボクが千弦さんに化けずに琴音さんに化けてイレバ、ごまかせていタかもしれマセンガ。」
分身の方もしゃべったところをみると、変化の術のような魔法なのだろうか?
「琴音さん、ちょっとフライング気味でしたよ。でもアレックスさん、どんな形であれ、二人の区別がついたことは認めましょう。よかったですね。私はお二人を祝福します。」
遥香さんが僕たちのことを祝福している。困ったな。今更実は区別がついてません、服装や言動で無理やり言い当ててました、なんて言える空気ではなくなってしまった。
「ねえ、アレク!次は私がロンドンに行くからね!あ、安心して!姉さんは連れて行かないから!」
琴音は僕の首に抱き着いたまま離れてくれない。
「ぐ、なんでいつも琴音だけ・・・。いいわよ!理君は私がもらうから!もう琴音のことなんて知らないんだから!」
「・・・ま、がんばってね。」
恵さんが僕の肩をポンと叩く。
どうやら彼女だけは、ぼくが二人を完璧に識別できていないことに気付いているようだ。
仕方がない。万が一備えて、恵さんにはいろいろ相談に乗ってもらおうか。
あ、それと爺さんは何故、遥香さんか琴音を落とせといったんだろう?千弦さんだってよかったんじゃないか?とりあえず理由をメールで聞いておこうか。ついでに二人の区別の仕方も教えてもらおう。
名残惜しくも見送りに来た3人+1人?と別れ、保安検査場を抜けて搭乗を済ませる。
ブリティッシュエアウェイズの機内でスマホを機内モードに切り替えようとしたところでメールのアイコンの上に受信のマークがついていることに気付いた。
・・・お?爺さんに送ったメールに返事が来ている。
琴音と千弦さんの違いについては・・・うん。相変わらず何の参考にもならなかったよ。
爺さんからのメールにはただ一言、「抗魔力がずば抜けて高い方が琴音、魔法を使ってないときは分からん」とだけ書いてあった。
魔力検知どころか魔法も使えない僕にどうしろって言うんだか。
◇ ◇ ◇
南雲 琴音
羽田空港から戻るモノレールの中、一人ニヤニヤが止まらない。我慢しなければ鼻歌を歌い出してしまいそうだ。
生まれて初めての彼氏ができた。それも、私と姉さんの区別がつく人だ。
仄香以外で私たち二人の区別がついた人は一人もいなかった。もしかしてこれって運命なんじゃないの!?
ふふふ、どうやらガドガン先生も認めてくれているみたいだし、家柄的にも九重の爺様が文句をつける可能性も低い。
家に帰ったらパスポートの有効期限を確認しなきゃ。あ、それだけじゃダメね。英語の勉強も頑張らなくちゃ。いや、手っ取り早く魔法でもいいか。
「ねえ、仄香。英語を手っ取り早く話せるようになる魔法とかないの?」
「何を考えてるか分かりますけどね。特定の言語をすぐに話せるような魔法なんてありませんよ。そんな魔法があったら、魔法や魔術の暗号化を簡単に突破できるじゃないですか。」
う~ん。やっぱりそんなにうまくいかないか。でもうちの学校って進学校だし、まじめに勉強してるから日常英会話くらいならいけそうな気もするんだけど、恋人との会話が辿々しいのも嫌なのよね。
「・・・なによ?もうアレクさんとの愛を語らうつもりでいるの?っていうか、私、完全な当て馬にされたんだけど?これ、高くつくわよ?」
さっきから姉さんの機嫌が直らない。理君とのこと、ちゃんと応援するって約束したんだけどな?
「ねえ、コトねん。理君のこと、どうするの?ものすごいクリスマスプレゼントを受け取ったんでしょ?ちょっと可哀そうな気もするんだけどな?それに・・・。」
咲間さんが何か言い淀んでいる。だが心配はいらない。私と姉さんは顔もスタイルもほとんど変わらない。
アレクと違って私たちの区別がつかない理君なら、私じゃなくて姉さんでもかまわないはずだ。
「大丈夫よ!さあ、姉さん。明日の放課後に理君を呼び出してもう一組、カップルを成立させるわよ!楽しみね!」
楽しかった冬休みが終わって少しゲンナリしていたけど、三学期始まってすぐにこんな大イベントがあるなんて思わなかった。
「・・・なんか、私、すごくみじめなんだけど・・・?」
何か姉さんがボソッといったけど、はっきり聞こえなかった。
さあ、帰ったら明日の放課後の作戦を考えるわよ!
次話から少し不定期更新になります。
不定期といっても、毎週金曜日には必ず1話、アップする予定です。