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121 誰が為に少女は星を撃つ

 1994年 8月13日(土)


 ジェーン・ドゥ


 オーストラリア、ウーメラ砂漠から長距離跳躍魔法で飛び立った数分後、極超音速で南インド洋のはるか上空、亜宇宙空間を西に向かって飛翔している最中に念話でメネフネの慌てた声が聞こえた。


《マスター!新たな敵性飛翔体を検知!これは・・・ミサイル!?恐ろしく速イ!長距離跳躍魔法の進路と交差シマス!》


 長距離跳躍魔法で亜宇宙空間を飛翔中の私を追尾できるミサイル?なんだそれ!?そんなものが存在するのか!?

 ってか、私の今の速度はマッハ30、第二宇宙速度の一歩手前だぞ!?


《ミサイル、直上!弾数4!直撃まであと3秒!》


 直上!?下からではなく!?


「く、四連術式(テトラスペル)、923,521発動!」


 あわてて防御障壁を4枚展開、っていうか、長距離跳躍魔法を使ってる最中に防御障壁を4枚も展開したのってこれが初めてだよ!


《ミサイル!直撃しマス!》


 メネフネの叫び声とともに真上から襲い掛かったミサイル、いや、恐ろしく重い金属の槍は3枚の防御障壁を打ち砕き、衝撃で破片をまき散らしながら海に落ちていく。


「これは・・・対地攻撃衛星か!?」


 常温常圧窒素酸化触媒(CONANTAP)術式が普及する前、ちょうど私の陽電子加速衝撃魔法の試し打ちをした後、合衆国(ステイツ)が新兵器を所有したと宣言した時に、合衆国(ステイツ)とソ連が核兵器の代用品として作ったアレか!


 電柱ほどの太さを持つタングステンと炭素の合金の槍を、地球の重力加速度とロケットの推進力を使って音速の数十倍まで加速して相手の頭上に叩き落すという、まるで出来の悪い漫画のような運動エネルギー兵器だ。


 鳴り物入りで作られた挙句、大した威力がないということですべて廃棄されたと思っていたが、まだ稼働状態の衛星があったとは!


 砕け散った防御障壁が大きな抵抗になったことにより、長距離跳躍魔法は一瞬で推進力を失い、私の身体は海に向かって落下し始める。


 亜宇宙空間から一気に高度3万まで降下、空力加熱で残った一枚の防御障壁が赤熱し始めた。


「くそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


 長距離跳躍魔法の二重起動はできない。

 飛翔魔法を使って、どこかの島に不時着を・・・ってか、見渡す限り海しか見えないじゃないか!


 高度を何とか1万で保ち、西に向かって飛び始めた。


「なんでインド洋は海しかないのよ!っていうか、飛翔魔法だけでこんな距離跳びたくないわよ!」


 そんな私をあざ笑うかのように、西の空に黒いシミのようなものが5つ、そして海面に灰色の船のようなものが3つ現れる。


《マスター。付近を航行中の船舶にも注意を・・・いや駆逐艦デス!発砲を確認!対空ミサイルデス!弾数・・・12!気を付けてクダサイ!弾頭は・・・ヒスイ輝石デス!》


「ふっざけんじゃないわよ!この忙しいときにどこのバカよ!」


 どういう理屈かは知らないが、ヒスイというシロモノは概念精霊(スピリット)元素精霊(エレメント)揺蕩(たゆた)精神世界(アストラルサイド)に直接つながっていると言われているもので、その質量が大きければ大きいほど魔力を周囲から吸い上げるという、迷惑極まりない石だ。


 そんな性質を持っているおかげでヒスイだけは何としても魔法や魔術で合成することができない。


 しかし、ヒスイだって一応は宝石だ。ミサイルの弾頭にできるほどの大きさの石を使い捨てにするなんて、正気の沙汰とは思えない。


「くっそ!四十連唱(テトラコンタスペル)()()()()()()()()()()()五十連唱(ペンタコンタスペル)()()()()()()!」


 弾頭がヒスイである以上、防御障壁術式はほとんど意味をなさない。っていうかアレ、障壁系の術式を素通りするんだよ!

 そんなものを弾頭にされたら避けるか撃ち落とすしかないじゃないか!


 40本の光線が迫りくるミサイルに次々に襲い掛かり、一瞬おくれて50本の太い雷光がその後を追う。

 12発のミサイルのうち、10発は叩き落したが2発がそのまま向かってくる。


 くそ、回避の時間が足りない!ならば無理やりにでも時間を作る!

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


 加速空間魔法を自分に向かって行使する。魔力を集中する時間がなかったから、たったの4倍速。持続時間も客観時間でわずか1分。

 でもこれならギリギリ直撃はしない!


 すんでのところで回避したが近接信管が作動する。よし、何とか破片を受けないで済んだ。


 ヒスイの破片が体に刺さると、その部分の魔力回路(サーキット)が使えなくなるからな。

 刃物で穿(ほじく)りだせば魔法が使えるようにはなるけどさ。


 空中に飛び散った破片を吸わないように回避しながら、飛翔魔法を加速してどこか着陸できるところを探す。


 ・・・あった!東水平線上にやや大きめの島が!

 あれはモーリシャス諸島か!

 今高度は1万メートル、ってことは水平線まであと単純計算で356kmもあるのか!


 飛翔魔法の出力を上げて、海面ぎりぎりを飛ぶ。

 残念ながらこの魔法では音速を超えて飛ぶミサイルやジェット機を振り切ることはできない。


 西の上空から5つの黒い影が襲い掛かる。

 この機影はMiG29、東側の機体だ。

 おいおい、国務省の連中、ソ連にも中国にも話は通ってるって言ってたよな!?

 それともアラブ世界の連中か?

 国籍マークは・・・だめだ、遠すぎて見えない!


《マスター!SL9-2の迎撃可能領域への到達まで3時間を切りマシタ!急いでクダサイ!》


《分かっている!くそ、こんな時に邪魔しやがって!どこの阿呆だ!》


 飛翔魔法では空中戦はできない。

 とにかくあの島に着陸を!


《マスター!後ろデス!》


 振り返るとそこには、先ほど黒い点のように見えていたMiG29が発射した空対空ミサイルが迫っていた。


四連術式(テトラスペル)!923,521発動!」


 飛来するミサイルに正対して4枚の防御障壁を発動。だがミサイルはその障壁を素通りし、私の眼前で炸裂した。


「ぐぅ!?」


 反射的に体の左側を、左足を盾にするような形で身を守る。

 頭と胸をかばった両手と足に無数の破片が降りかかり、肉や骨を引きちぎっていく。

 ・・・くそ、戦闘機のミサイルにまでヒスイを仕込んでやがったのか。


 私は眼前でバラバラになる自分の両手と左足を見ながら、まっすぐ海面に落下していく。

 このままではいけない。どこか、足の着くところを・・・。

 っていうか、片方しか足がないけどさ!?


 だが幸い、ヒスイの分量が少なかったのか、あるいは破片が集中しなかったのか。

 身体の中に入ったヒスイの破片はそう多くないようだ。魔力回路(サーキット)の半数は正常に作動している。


 残された魔力回路(サーキット)を振り絞り、飛翔魔法の詠唱を再度行おうとしたとき、斜め下に一隻の、いや一艘の船が見えた。


「何とか、あの船に・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 クルーザー、いやこれはプレジャーボートか?陽気そうな男女が二組、ワイングラスを片手に楽しそうに笑っている甲板に直接落下する。

 飛翔魔法で落下速度をかなり殺したが、甲板をへこませるほどの勢いでたたきつけられた私を見て、二人の女性は悲鳴を上げ、男性の一人は慌てて跳びあがった。


「ぐ、げほっ。私の腕は、足はどこ!?・・・くそ、また質量が足りない!そこのあなた!なんでもいい、肉か魚はない!?調理前でも構わないから!」


 甲板に流れ出る血を前に急いで回復治癒呪で止血を行う。

 だが右腕は肘の上から、左腕は肩の先からズタズタになり、かろうじて肉片が残る骨がそれぞれつながっている状態だ。盾にした左足は、腿から先が完全に消失していた。

 ・・・あ、下腹からも何かがはみ出してる。


 慌てて駆け寄ってくれた男性が、恐る恐る近くのデッキのウインチに吊り下げられたカジキを指さす。

 よし!蛹化術式でも十分な質量がある!しかも新鮮で内臓から肉、そして骨まですべての栄養素が揃っている!

 

「そこのカジキもらうわよ!蛹化術式を展開!セット10min!そこのあなた!10分ほど逃げ回って!」


「え?何から・・・?」


「コレからよ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


 唯一残った右足で甲板の端まで身体を引きずり、海に向かって召喚魔法を唱え、ユダヤに伝わる巨大怪鳥「ジズ」を()び出す。


 翼開長が10km、頭長4kmの白い巨体を翻し、レヴィアタン・べへモスと並ぶ大いなる神鳥は私の意思に従って洋上の駆逐艦、そして空中を飛び回るMiG29に向かって雄叫びを上げる。


「ななななな!」

「きゃあぁぁぁ!」

 プレジャーボートの男女は狼狽し、頭を抱えてそのキャビンに逃げ込んだ。


 ああ見えてジズはレヴィアタンやべへモスと違い、極めて冷静で一切の無駄な行動を行わない。

 現にあれほどの巨体を振るいながら私の乗っているプレジャーボートには大きな波も来ず、沈むこともない。


「ジズ、後は任せるわ。敵性航空機及び船舶はすべて破壊して。もちろん、殺していいわよ。」


《了解した。マスター。シェイプシフターから事情は聴いている。早く身体の修復を。》


「そうね。そうさせてもらうわ。」


 すでに準備をしていた蛹化術式を用いて、勝手に拝借したカジキの肉と骨を使い、自分の身体を修復していく。


 素早く蛹化術式を発動。細かいところは省略して重要なところだけ治していく。

 なんとか体の修復が完了するころ、シェイプシフターから念話が入る。


《マスター。あと30分デス。移動は可能デスカ?》


《ああ、あと15秒で完了する。・・・よし、今からすぐに移動するぞ。》


 絹色のような繭を破り、脱ぎ捨てていた服を手に取るが、すでにズタズタで着られそうにない。


 敵性航空機と船舶は・・・。いつのまにかジズが片付けてくれていたらしく、ジズはその巨体を羽ばたかせもせず、悠然と空を飛んでいた。

 

「あの、これ・・・。」


 先ほどキャビンに逃げ込んだ男性の一人が、おそるおそる女物の服を一着差し出してきた。

 その後ろにいるのは服の持ち主だろうか、女性の一人が心配そうな、それでいて恐ろしいものを見るような顔でこちらを見ている。


「サイズが合うかどうか分からないけど、これ、ビーチサンダルも・・・。」


 おずおずといった感じで差し出してきたそれを受け取り、礼を言う。


「ありがとう、感謝するわ。・・・アメリカ航空宇宙局(NASA)所属、ゴダード宇宙研究機関のマックスウェルに連絡をいただけるかしら。必ずお礼をするわ。必ずね。」


 差し出された服に袖を通し、ビーチサンダルを履く。下着がないのでスカートの中がスースーするが、文句を言うのは贅沢だ。


《シェイプシフター!準備ができた!これよりプランBの発射地点に向かう。誘導を頼む!」


《了解!マスター!急いでクダサイ!」


「では!良い旅を!カジキ、最高においしかったわ!・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


 あ、カジキ、口で食ってないから味は分からなかったんだっけ。


 あっけにとられる4人の男女を見ながら、手を振り、空に飛びあがる。

 モガディシュまでは約20分、とにかく急がなくては!


 ◇  ◇  ◇


 長距離跳躍魔法でソマリアの首都、モガデッシュの市場に地響きとともに着地すると、周囲の露店で買い物をしていた主婦らしき女性が悲鳴を上げて逃げて行った。


 露店の店主らしき男性が怒鳴り声をあげながら私に襲い掛かるが、説明している時間も惜しい。


 その手を振り払いもせずにただ、雷撃魔法を行使する。


()()()()()()。」


 バチンという大きな音とともに、露店の店主は全身を硬直させ、その場に転倒した。

 今彼を殺してしまってもその運命はかわりはしないが、一秒でも長く生きていてほしいと思うのは完全に私の自己満足だ。


 この町の人間は、私が迎撃に成功してもしなくても、関係なく全員が死に絶えるだろう。

 悪いが、逡巡している時間すらないのだ。

 申し訳ないと思うことすら後にしなければならないのだ。


「こちらマクスウェル!パインギャップ(スパイ衛星管理)がSL9を捕捉!データを今送った!」

 ヘッドセットから緊張を隠し切れない声が響き渡る。


「了解!これから迎撃を開始するわ!」


 ・・・マクスウェルから送られてきたデータはシェイプシフターが計算したものとほぼ一緒だ。ギリギリ間に合わせられるか!?


《マスター!SL9の迎撃可能領域まであと3分を切りマシタ!急いでクダサイ!》


 シェイプシフターの声に、SL9のデータから意識を戻し空を仰ぎ見ようとした瞬間、私を取り囲む人々の不安そうな姿がはっきりと見えた。


 ウーメラ砂漠ではすでに太陽が地平線に沈み、空に星が輝き始めていたが、ここソマリアではまだ日没まで時間がある。


 約6時間の時差のおかげで空はまだ十分に明るかったが、町は喧騒に包まれており、これから私が殺すであろう罪なき人々の顔が私のことを責めるように睨んでいるのに気付く。


「くっ・・・。術式束(パッケージ)、26,162、術式束(パッケージ)、32,635、術式束(パッケージ)、45,017、術式束(パッケージ)、24,973を連続発動。術式制御リミッターをオフ。九重術式(ノナスペル)26,439,622,160,671を全力発動!」


 先程と全く同じ手順を繰り返す。まるでオルゴールのように。


《目標、まもなく迎撃可能領域に侵入シマス!メネフネ!カウントスタート!》


《カウント、60!59!58!・・・》


「女!手を頭の後ろに組んで(ひざまず)け!」


 作業服、いやあれは制服か。自警団のような恰好をした警察官らしき男たちが私の周囲を囲み、統一感のない小火器を携えている。


「・・・すべての予備術式および予備魔法陣を緊急展開。すべてのチェック項目を省略。展開後ただちに起動!」


 周囲で騒ぐ男たちを完全に無視し、陽電子加速衝撃魔法の発射に必要な敷設型魔法陣(サークル)と反動軽減・防御術式を展開していく。


 あと45秒。今度の迎撃タイミングは非常にシビアだ。迎撃可能領域を通過する時間がたったの0.8秒しかない。


 両手を空にかざし、彼らにとっては理解できない言葉を紡ぎ続ける私に業を煮やしたのか、警察官らしき男たちは一斉に銃を構えた。


「構わん!撃て!撃ち殺せ!」


 展開した9枚の防御障壁の一番外側で、雨水が(ひさし)に当たるような情けない音を立て続ける銃弾の音を完全に放置して、すべての魔法陣(サークル)と術式に魔力を流していく。


 あと30秒、すべての魔法陣(サークル)、術式が起動。


 男たちの怒号が聞こえる。

 すまない、謝罪の言葉もかけられない。

 たとえ、私が君たちの犠牲を無駄にしなくても、君たちにはそんなの関係ないだろう。


 謝罪の言葉の代わりに口をついて出たのは、魔法の詠唱だ。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()(ことわり)()()()()()()()()()()()()()()()根源精霊(オリジン)()()()()()()()()()()(ともしび)()()()()()(ともがら)()()()()()()()()()()()()()()()。」


 ドン!という大きな音が市場に響き渡る。


 警察官たちの後ろには、トヨタ車の荷台に機関砲を積載した、いわゆるテクニカルと呼ばれる戦闘車両がその姿を現していた。


 テクニカルの射撃手はその大口径の砲を私に向かって連射するも、9枚の防御障壁に包まれた私を傷つけることはできない。


 あと10秒。


 銃弾や砲弾の雨にも構わずに詠唱を続ける。


()()()()()()()()()()根源精霊(オリジン)()()()()()()()()()()()()()()()()()甲矢(はや)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


《マスター!SL9-2、迎撃可能領域に突入します!》


 念話でシェイプシフターの声が頭の中に響き渡る。

 安心しろ、魔法は今完成した!


《2!1!今!》


「せいやあぁぁぁ!」

 全身を莫大な魔力が循環し、体中の治したばかりの魔力回路(サーキット)が悲鳴を上げる。


 轟音のような、嵐のような爆風が周囲のものを吹き飛ばしていく。

 安い石造りの建築物、ついさっきまでにぎわっていた市場と人々、そして私に向かって銃弾を浴びせていた警察官たち。

 聞こえるはずがない彼らの怨嗟の声が体中に響き渡る。


 次の瞬間、真昼の太陽のような輝きを放つ閃光の柱が立ち上り、漆黒の陽電子塊を亜光速まで加速し、SL9-2に向かって力強く撃ち出した。


 0.1秒余りで着弾。陽電子塊がSL9-2の通常物質と対消滅を起こし、その運動エネルギーと質量のほとんどをエネルギーとして解き放つ。


 空を見れば、寸分違わず撃ち抜かれたSL9-2の破片が、地上3万8千kmの上空で発生した対消滅反応の輻射熱で打ち砕かれ、あるいは蒸発し、眩い輝きを放っているのが見えた。


「ジェーン!成功だ!SL9の完全消滅を確認!・・・お疲れ様、今夜は祝勝会だ!リザも待ってるってよ!」


 マクスウェルの声がヘッドセットの中から聞こえる。まるで先程の怨嗟の声を上書きするかのように。


《マスター。お疲れ様デシタ。スカイゼリー(ブラボー)3より、SL9の破片はすべて大気圏突入時に燃え尽きるようデス。》


《そうか、さて、大仕事が終わったな。やっとこれで・・・!!》


 ゾクリとする感覚に驚いて振り向くと、視界いっぱいに広がっていたのは一切の光を通さない漆黒の闇だった。

 ・・・これは!空間浸食魔法による攻撃か!


 反射的に全魔力を開放、相手を上回る密度で魔力を解き放ち、空間に対する魔力干渉を打ち消す。

 いったい誰が!?魔法使いや魔術師に行使できるような魔力量ではないはず!


 まさかエルフ・・・いや、魔族か!?


 あらゆるものが吹き飛ばされ、がれきの山になっていたモガディシュの通りを、がれきを吹き飛ばしながら接近する人影が一つ、目に入る。


 そこには15年前に消息を絶ったバイオレットがその瞳を深紫色に輝かせ、一振りの槍を持って不敵な笑みを浮かべながら私の前に立ちはだかっていた。




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