表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/71

第8話 突然起きた破砕音! そしてショッピングモールで暴動が発生!? 

 ……冗談だろ。こんなの放送していいのかよ。


 鈍器で殴る鈍い音もそこから滴る赤い血もどうでもよかった。ただ、どんなに攻撃を加えても必ず向かってくるその姿に「こんな生物がいていいのか……?」と思わず呟いてしまう。


『ちょっと誰か、止めて止めてっ!』


 映像が切り替わり、スタジオに戻る。不思議そうに首をかしげるマリーさんと慌てふためくネイビーのスーツが映り、それからCMに変わった。

 完全に放送事故だ。アナウンサーの慌てっぷりが見ていて不憫なほどだった。


「まだ入り口にいたのか。探したぞ」


 声のした方を向くと、シャノンのむすっとした顔が拝めた。どうやら一周回ってきたらしく、ちょうどゲームセンターの右端に立っていた。


「ごめん。ちょっとテレビ見てた」

「テレビって……そんなの家でも見れるだろ。さっさと行くぞ。デイビスを待たせてる」


 そう言って歩みだすシャノン。今度こそ付いて来ているのを確認するように後ろをちらちらと振り向いてくる。この過保護とも思える仕草を目にすること数回。俺たちはクレーンゲームコーナーに入っていた。

 透明なケースに子供が欲しがりそうな可愛らしいぬいぐるみや、別のベクトルの可愛らしさを持つ美少女フィギュアが積み上がっていた。普段全然来ないから物珍しくきょろきょろと辺りを見回してみたが、人気の少なさが目立つ。3D映画や、バーチャル系のゲームのおかげでここら辺は寂れた街のようだ。

 まぁでも、レトロ好きな客や、クレーンゲーム限定品という響きに弱い人には好評らしい。


 だがそこで、まったく興味なさそうな表情のデイビスさんが見えてくる。待ちぼうけをくらったからか、目を細めてこちらを見据えてきた。

 これが普通の人だったなら眠たそうなだけに思えたが、不気味なほど鋭い。ゲームセンターにあるまじき迫力。獲物を発見したハンターみたいな仕草は子供にはきついのでやめてほしい。

 そんな俺の内心とは裏腹に、デイビスさんは気さくに笑いかけてきた。


「お、シュウ。どこ行ってたんだ? トイレとかだったら先に言ってくれよ。探し回らねぇといけなくなるからな」

「あ、はい。すみません」

「分かればいいが、お嬢も俺がゲーセンのアプリいじってる隙にいなくなるし」

「すまない。でもその時朱宇がいないって気づいたんだ。それでこの辺りを一周して……」


 少しばつが悪そうなシャノン。それで見つかったってわけか、とデイビスさんが言葉をかぶせると、シャノンは途端にしたり顔になった。


「ああ。夢中でテレビを見てたぞ」

「いや、あれはテレビが悪い。あのアドバイザーが目立ち過ぎたのと実験映像にビビらなかったら今頃は……ん?」


 そこで筐体の中に裸のまま無造作に入れられた丸っこい猫の群れが俺の目に入った。


「お目当ての物って、それか?」

「ん、まあな。クッションに使えそうだしな。うん、これでいい」


 シャノンは澄んだ瞳をモフモフの山に向けたままビシッと指差した。


「デイビス。このぬいぐるみが欲しい。頼めるか?」

「お嬢にそこまで言われちゃ仕方ねーな。よし、やってやろうじゃねぇか」


 デイビスさんは快く頷くとクレーンゲームの料金パネルに腕輪型の個人端末スマホをかざした。

 その時だった。


 ――――ドォゴォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオン!!


 どこからか伝ってくる破砕音。分厚い層が崩れ落ちるような、地響きにも似た振動。それからクレーンゲームのアームがギギッと止まり、ピロピロとうるさかったゲームセンターに静けさが広がる。だが少しすると、通路の方から人々のどよめきが聞こえてきた。そしてついには、スピーカーからサイレンが響きだし、アナウンスまで流れてきた。


『モール内のお客様にご連絡します。現在、北口の博物館、一階展示場で暴動が起きています。スタッフが対応中ですが安全のため、ただちに避難してください。お近くのスタッフの指示に従って、どうか落ち着いて避難してください』


(次回に続く)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ