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第31話 模擬戦開始! ヒロインに良いところを見せたい!

 仕切り直しである。

 クレアを死体袋に詰めて路肩に転がすと、


「さぁ、どこからでもかかってきていいわよぉー」


 ゆったりとした体勢で佇むマリーさん。手には何も持っていないし、何の構えも取っていない。だが隙がない。さっきクレアを攫った動きを見た後じゃ、普通に立っているだけでもどんな格闘家よりも威圧的だ。こんなの、どうやったって勝ち目がない。

 俺は戦う前から負けていた。

 や、やべっ! どうしよう……!? とりあえずナイフでも構えて様子を見るか……。

 腰からナイフを抜き、俺はフェンシングでもするように切っ先を前に突き出す。


「朱宇、ナイフのリーチをいかすんだ。今度はさっきみたいに無抵抗にやられるんじゃないぞ」

「簡単に知ってくれるよな……それができれば苦労しねぇっての……」


 ありがたいアドバイスをくれるシャノンに、俺は弱弱しい笑みを返した。

 余裕がない俺でも分かる。このアドバイザーの言う通りにしても勝てる未来は訪れない。幸いマリーさんはこちらが動かない限り仕掛けてくるつもりはないようで、相変わらずケージに入ったハムスターを愛でるような視線を向けてきている。


「ほら、シャノンちゃんもああ言ってるわよ? カッコいいところ見せないとね」

「最初はそのつもりでしたが、気が変わりました。そんないい格好をしようとか思ってちゃダメだって。だから俺はどんな汚い手でも使いますよ」

「汚い手? ライトで目を潰してから襲うのかな? それとも石でも投げる?」

「フ……どっちでしょうね」

「さっさと始めないか。正道でも邪道でもいいから」

「まぁ焦るな、シャノン。すでに今、俺の作戦は始まっているんだ……!」


 シャノンに急かされても、俺は胸を張って答えた。油断なくマリーさんを見据え、その作戦の進行具合を確認する。

 腰のポーチに手を入れ、ライトをいじるように動かす。だがマリーさんに警戒する素振りはない。続いて、地面をちらちらと見て石を探すように目配せする。これも特にマリーさんは気にしていない。やはり何をやられても対処できる自信があるんだろうか。

 こうなったら会話を引き伸ばしつつ接近して不意打ちを、と俺の頭に最終作戦がちらついたところで、シャノンが口を開いた。

「ん? この無駄に芝居がかった中身のない感じ……もしかして――おい朱宇、会話で隙を作ろうとしても無駄だぞ」

「おまっ、シャノン……!? 手の内を――んんっ、中身がないとは失敬な!」


 とりあえず大声で誤魔化した。


「ふふっ。そうよ、さすがにそんな姑息な……ふふっ。中身がないのに会話で隙を作るって、絶対失敗するやつでしょう。ねぇ朱宇くん?」

「…………」

「あれ? どうしたの? ねぇ、そろそろ始めてほしいんだけど……」

「朱宇のやつめ。相手にあらためて絶対失敗するって言われて萎縮してるな。まったくしょうがないな……根は小心者なんだから」


 万策尽きた。そうだ。姑息な上に中身がない。これから戦う相手に絶対失敗すると笑われ、シャノンにも見透かされて、自信のグラフは地の底へ急降下。もはや手足が強張って動かないほどだ。

 そんな俺を見かねたマリーさんが「そうよね。会話で隙を作る演出って映画とかゲームとかでもよくあるから真似したくなっちゃったのよね。わかるわよ、その気持ち」などと慰めてくるがそれが逆にきつい。優しく叱られているようでなおさら痛かった。

 まさか余計落ち込むとは思わなかったのだろう。マリーさんは腫れ物に触るように両手を頼りなくわちゃわちゃとさせている。


「まりりん、いい方法があるよ」


 クレアが静かに路肩に立っていた。死体袋から抜け出したんだ。


「ちょっとクレア、まだ反省タイムは終わってないわよ」

「それは今問題じゃない。シュウくんにやる気になってもらわなくちゃ話にならないでしょ。それでね……まりりんちょっと屈んで」

「う、うん……」


(次回に続く)


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