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第21話 クソダサTシャツを着た個性的なロリは好きですか?

 絨毯にぺたんと座ったままのクレアさんは、自分で最高のロリだというがその服装は子供らしからぬもの。黒字で『I AM KING』と書かれた白の無地。いわゆるクソダザTシャツだ。全然可愛くない。しかも下はズボンも靴下も履いてないというズボラの化身みたいなやつだ。


「君、シャノンちゃんのお友達?」

「え、まぁそうだけど……えっと、クレアさん?」

「クレアでいいよ。敬称つけられちゃ、今後のこと考えるとちょっとやりにくくなるし」

「今後? ああなんだ、もう朱宇がここに引っ越すって聞いてたのか?」

「へーそうなんだ。じゃあシュウくん、先輩としてこの館で暮らす作法をレクチャーしてあげるねぇ」


 家主の目の前でよく言うが、先輩というからには、クレアもフェシュネール邸に住まわせてもらっているようだ。このアットホームな振る舞いはひょっとしてシャノンの遠い親戚か?

 俺がそんなことを思っていると、ドアが開く音が聞こえてきた。


「あ、ちょうど良かった。二人ともここにいたのね」


 振り向くと、マリーさんが歩み寄ってきていた。白いラインが入った黒いスカートを揺らし、俺たちのところまで来て立ち止まった。


「あー、クレアまたそんな格好で出てきて。恥ずかしくないの?」


 そういうマリーさん自身も、パーカーを羽織っていても胸元が強調されているので、そこのちんちくりんよりもよっぽど目のやり場に困る。

 だがクレアはマリーさんに張り合うように胸を――というよりTシャツの文字を強調するように胸を張った。


「あいあむきんぐぅ」

「もうこの子は……アナタが王なら私は女帝よ。アナタの上司なんだから」


 そう言うとマリーさんは、こっちにきなさい、と問答無用で小さな王様を小脇に抱えた。


「なんでズボンくらい穿かないのよ……」

「そうだね。でも朝になると毎回なくなってる。なんでかな、おかしいな?」

「ベッドの下に丸まってるからよ。寝てる時に脱いでるんでしょう」


 リビングを出て行こうとしたマリーさんだったが、そこで何かを思い出したようにはっと眉を上げ、こちらに振り向いた。


「あ、そうだ。朱宇くん、荷物は私の部下に運ばせるから。それで、どこになったの?」

「二階の角部屋です。玄関から入って右の」

「あー、あそこ。じゃあ伝えておくわね」


 クレアを抱えたままマリーさんは慣れた調子で玄関ホールに出て行く。それを見た俺は、思わず唇を緩ませた。


「ふふっ……賑やかになりそうだな」

「まあなぁ。だが、退屈するよりかはよっぽどいいだろ?」


 そのシャノンの言葉には全力で同意したい。

 母さんを失った日常は、どこか物足りなくて、色あせて見えていた。だがこれなら、寂しいと思う暇はなさそうだった。

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