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第19話 金髪美少女幼馴染がヤバい単語を口走ってるんだが……

「どの部屋がいい?」

「選べるんなら角部屋がいいけど……」

「その理由は?」

「両隣に挨拶しなくて済むだろ。あと窓の数が多いのも日当たりが良くてグッドだ。部屋干しがはかどる」

「主婦みたいな意見だな……小学生とは思えない」

「シャノンにだけは言われたくないんだが……!?」


 どっと肩を落とす俺だったが「なぜ私は駄目なんだ?」と首を傾げられた。さっきから物騒なことを口走っている口にあるまじき無自覚っぷりだ。

 だがこんなのは今に始まった話じゃないのでスルーし、廊下の突き当たりまで歩む。そして分厚い木製のドアをシャノンが開けると、そこは館の印象通り浮世離れした部屋だった。

 革張りのソファーにふかふかの絨毯。奥には天蓋つきのベッドがあるが、壁の装飾がツートーンに分かれていてそちらも目を引く。こんなの、テレビで紹介されるような高級ホテルのスイートルームくらいでしか見たことねぇぞ。ただ家具や部屋の装飾がゴシック調で統一されているのは、中世のような古き良き時代を感じた。


「ここが……」

「うん、今日からここが朱宇の部屋だ。何もない所だが、まぁ広いし荷物が届けば不便はないだろう」


 何もないなんてとんでもない。こんなリッチな部屋が俺の部屋になるなんて、まだ信じられねぇくらいだ。


「なあシャノン。俺、貴族に転生した気分だ」

「転生って、じゃあ死因はなんなんだ?」

「暴走トラックでもなんでもいいよ。とにかく昨日までの俺は死んだ。今日からリッチな生活が待ってるんだ」

「そうか……まぁ私の部屋は四部屋あるから、何かあったら順繰りに回って呼んでくれ」

「何んだ自慢か?」

「違う、なんでそうなる。何か困ったことがあったら頼って欲しいだけなんだが……」


 シャノンは肩を落とし、むくれたように続ける。


「私だって面倒なんだぞ。毎晩違う部屋で寝なくちゃならないなんて。なんでも保安上の理由で居場所を特定されないようにするためらしいが、正直意味があるのか疑問だ。館が襲撃されたらそんな小細工通用しないだろ」

「いや俺に言われても、それこそ疑問なんだが……」


 とりあえず背負っていたリュックをソファーに置きながら俺は苦笑した。


「できれば私だって朱宇の隣の部屋がいいのに……せっかく同じ屋根の下で暮らすんだから。それに、シリ壁というのにも興味があるしな」

「し、しり? え、なに……?」

「父さんの部下たちが言っていた。悪戯するってことらしい。感度がどうのとも言っていたから、恐らく痴れるという言葉からきているのだろう。壁も使うみたいだし、きっと糸電話みたいな遊びなんだ」

「出所があの人たちか……」


 心配だ。これはマリーさんに聞いた話だが、シャノンの父はNOX軍の司令官で、その部下は屈強な軍人連中だ。そんな人たちが子供の悪戯レベルの話なんてしてるわけがない。念のため腕輪型の個人端末スマホで『シリ壁』を検索してみる。


「通気孔があるから、そこから糸でも通して壁を抜けさせれば無線通信ごっこができるぞ」

「ああ、感度は通信の感度のことか……ううん?」

「うん。あとちょっとした悪戯の相談もできる。通信端末じゃ会話ログが残るがこれなら問題ない」


 シャノンが楽しそうに声を弾ませているが、それどころじゃない。俺の端末の投影ウインドウには壁に挟まった女子高生の尻の画像がひしめいていた。

 これに悪戯って、しかも感度がいいだと……! 完全にアウトだろ!


「ちゃんと聞いてるのか? さっきから端末ばかり見ているようだが?」


 不味い。女子と会話中にコレを見られたら問答無用で変態扱いだ。

 さっと電源を落とし、俺は慌てて華奢な肩を押した。


(次回に続く)


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