楠木side
楠木side
あのクズ男が蛍先輩を泣かせたあの日以来、よく一緒に帰るように
なった。
少しは気を許してくれているのだろうか?
が、問題があった。
クラスの女子達だ。
帰り際になると、取り囲んで一緒に帰ろうと言ってくる。
誰か悲しくて好きでもない女と一緒にいなければならないんだ?
これでは先輩に誤解されてしまうじゃないか!
「ごめんね?しばらくは無理なんだ。それに…俺は一人なんて選べ
ないから誰とも一緒には帰れないよ」
「えぇぇーーー!でも、そこがかっこいい〜〜〜」
「マジ王子様みたーい」
「これからも誰とも付き合わないでほしい〜」
勝手に言ってる女子を放置して先輩の教室に向かった。
そこにはいつも先輩と仲良さそうに話している男がいた。
「あの〜月島先輩いますか?」
「あぁ、君が例の子かぁ〜……」
まるで値踏みするような視線に少しイラっとする。
「いや……あいつ男だけど、知ってるよね?」
「知ってますよ。俺も男なんで…」
「そう?なら言うけど、彼女とか作らないの?モテてるでしょ?」
「先輩、悪いんですけど、何が言いたいんですか?俺は今付き合
ってる人がいるんでそんな不義な事できると思います?」
「ふ〜ん、そう?」
「そうです!喧嘩売ってます?」
「いや……ほら、来たよ!」
後ろを指さされるとそこには掃除から帰って来た蛍先輩がいた。
やっぱりいつ見ても可愛い。
「蛍せんぱーい!一緒に帰りましょう!」
「あ、楠木くんまっててくれたの?ごめんね、今から日誌出し
たら帰れるからちょっと待っててくれる?」
「はい!」
先輩の前では極力笑顔を振り撒く。
そして振り返るとわざと作り笑いを浮かべた。
「遊びだったらほどほどしとけよ…」
「俺は本気ですから…絶対に落として見せます」
「あいつを泣かせたら許さないからな…」
「絶対にないですから!心配不要です」
教室に帰ってくる月島を見つけるとすぐに笑顔になってかけ
ていく。
一応は反対されているわけではなさそうだった。
「先輩、明日土曜ですよね?デートしませんか?」
「ぶっ……!デート?」
「そうです、付き合った記念のデートです」
「でも……外で会うのは……」
「不安ですか?俺がそばについてます」
月島の手をぎゅっと握るともっと近づく。
月島は迫られるのに弱いようだった。
「分かった…分かったから〜………近いよ……」
「そうですか?俺は嬉しいですけど?」
「うぅ……」
可愛い!
こんなに可愛い反応を見せてくれるのなら、明日はもっと喜ば
せてあげたいと思ったのだった。
「じゃ〜、明日10時にハチ公前に!先輩との初デートたのしみ
にしてますね!」
「もうっ!揶揄わないでよ!」
月島の家の前まで送ると手を振って帰ったのだった。
一条のことはもう吹っ切れたのか、最近では全く気にもかけて
いない様子だった。