第六話
隣のイケメンは後輩の楠木祐介だ。
今、自分たちは映画館に来ている。
それも、男同士でカップル席に座っているのだった。
「ここいいですよね〜こうやって手を繋ぐにも簡単で?」
「ひゃっ……あ……ご、ごめん…」
「なんで謝るんですか?」
「だって、僕みたいな人間と手を繋いでると、きっと間違われるし…」
少しイラッとすると、ちょうど映画が始まった。
いきなりグイッと抱き寄せると寝転がるような姿勢になってしまった。
他の人は映画に夢中で他人の座席など見ていない。
「楠木くんっ……ちょっと……」
「こんな風にくっついて見てみたくないですか?」
そういうと、横になりながら楠木の胸の上に頭を預けると横を眺めた。
まるで家で一緒にくつろぎながら見ているようでドキドキしてしまう。
2時間の映画だったがあっという間に終わってしまった。
エンドロールが流れているうちに起き上がると横に並んで座った。
さっきまでのが嘘のように感じたが、心臓の音は大きく脈打っていた。
「この後食事に行くましょうか?蛍先輩」
「えっ……あ、うん…」
これは彼の癖なのだろうか?
言葉を話す時の距離がやたらと近いのだった。
高校生の小遣いで行ける場所といえばファミレスが定番だった。
オシャレなイタリアンとか中華に行く余裕はない。
「先輩、つまらないですか?」
「え…そんな事ないよ……なんか不思議だなって思って…」
「そうですか?俺は嬉しいですよ〜、だって目の前に可愛い蛍先輩が
いて、俺たちお試しと言っても付き合ってるんですから」
「そうだ、気になってたんだけど、どうして僕なの?だって…楠木く
んってすごいモテるじゃない?」
一番の疑問だった。
一年の楠木といえば、王子様的存在だったらしい。
あまり興味なかったが、女子達には有名で誰にでも優しいとこぞって
告白したが誰にも靡かないと聞いていた。
それが、なぜ自分なんかに…
「それって答える必要あります?しいていえば……一目惚れですかね〜」
「こんなに親切にしてもらって申し訳ないけど…僕は……」
「それはいいんです。俺がしたいからやってるんで。それに…いつかは
俺に惚れさせる予定なんで」
「なにそれ…自信過剰すぎない?」
「それくらいがいいんです。先輩最近よく笑ってくれるし、それが嬉し
くって…」
「なっ……/////」
そんな事言われた事なかった。
いくらクズのような男を好きになっても、こんなに気にかけられた事な
んて初めてだった。
「惚れ直しました?」
「直してない!もう、一言多いんだから〜」
「そうだ、蛍先輩はあいつとやりたかった事ってなんですか?俺とやり
ませんか?ほら、俺ならなんでもやってあげられると思うんです。」
「それは………」
少し悩むとボソッと言葉に出したのだった。