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たとえ今、好かれなくても…  作者: 秋元智也
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第四話

いきなりハンカチを差し出されて、驚いた拍子に転ぶそうに

なったらそのまま引き寄せられる形で抱きしめられたのだった。


「大丈夫?」

「あ………うん……ごめん変なところ見せて…」

「それはいいけど…こっぴどく振られたね〜?」

「…うっ…ふぇ〜ん……もう嫌だよ……なんで女子を好きになれな

 いんだろう…僕が悪いの?」


さっき以上に泣き出すのを見るといたたまれなくなった。


「あのさ〜、先輩って男が好きなの?」

「…ぐすっ……う…うん」

「だったら俺はどうですか?」

「君…だれ?」

「あぁ、えーっと、一年の楠木祐介。これでも女子にはモテてる

 し、結構顔には自信があるんだけど…」

「ぷっ……あはっはっ、自分でそれ言っちゃうの?」

「やっぱり先輩は笑った顔のが可愛いです。」


いきなりの不意打ち的な言葉に顔を赤らめると立ち上がった。


「どこに行くんですか?」

「帰るんだよ…」

「待ってください。お試しで俺と付き合いませんか?今まで一条

 先輩とやってみたかった事を俺と一緒にやってみませんか?」

「君は何を言ってるか分かってるの?僕の事も知りもしないで…」

「知ってます。月島蛍、2年生。一条響に一目惚れして告白。付

 き合うもさっき振られた。そしてもうすぐ誕生日ですよね?」

「なんで知ってるの?」


いきなりの情報に後ずさった。


「待ってください。俺も恋愛対象は男なんです。だから同類って

 いうか…だから先輩の気持ちわかるんです。だからお試しで付

 き合ってみませんか?」


予想もしない申し出だった。

同じ同性愛者など滅多にいないと思っていた。

それがこんな近くにいるなんて…。


色々相談したいという気持ちもある。

が、彼が求めているのはお試しのお付き合いであって、友人では

ない。


「まずは友達とかじゃダメ?」

「ダメです!まずは恋人になりましょう?嫌なら言ってください。

 そこで辞めるって事でどうですか?」

「それって、君に得はないでしょ?」

「そんな事ないですよ?こんなに可愛い先輩を合法的に口説き落

 とせるんですから」

「ちょっと、近いって!」


ジリジリと滲み寄って行くと壁際まで追い詰めて行く。


「返事をください。今すぐに!」

「あ…えーっと……よろしくお願いします?」

「はい、こちらこそ。よろしくお願いします、せんぱーい」


なんだか丸め込まれた感が否めないが、それでも少し気持ちが楽

になった気がした。

さっきまでの辛い気持ちが彼に寄って解れた気がする。


「えーっとなんて呼べばいいかな?」

「あぁ、それなら…祐介と呼んでください」

「ひぇっ!名前!」

「嫌ですか?蛍先輩〜」


なんだかむずむずする気分だった。

それでも、やっとの事で呼び名を決めたのだった。


「またね、楠木くん」

「無難なところに落ち着きましたね〜、今度は名前で呼んでくだ

 さいよ〜蛍せんぱーい!」

「もうっ、帰るっ!!」



いじっぱりでちょっとおどじな先輩と完璧主義者の後輩の恋はこ

こから始まったのだった。

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