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たとえ今、好かれなくても…  作者: 秋元智也
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楠木side

楠木side


一年の楠木祐介は、顔がいい。

女子にもモテて、いつも楠木を巡って女子同士の言い合いになって

いた。

そんな煩いのが嫌で、いち早く空き教室の奥に陣取っていた。


そこに3年のだらしない男、一条響がよく来るようになっていた。

今日も慌ただしい足音が聞こえてくるとガラッとドアが開く。

可愛らしい先輩が入ってくると満面の笑顔で一条を見つめていた。


頭を撫でられると嬉しそうに言われた物を買って来た。


帰ってくると女子が一条の横に座っていて、自分の居場所はなく、

寂しそうに教室へと帰って行く。


あの顔は忘れもしない、入学試験の時だった。

緊張して早めに来すぎて近くのコンビニでジュースを飲みすぎたせ

いで、試験前にトイレを催したのだった。


試験会場も分からないし、トイレの位置も分からない。

そんな時に、声をかけてくれたのが彼だった。


「どうしたの?試験会場はあっちだけど、分かる?」

「えっと……トイレって……」

「あぁ、トイレね、それならこっちおいで…本当は内緒ね!」


そう言って一番近い職員トイレへ案内してくれた。

そして出てくるまだ待ってくれたと思うと試験会場まで連れて行って

くれたのだ。


ギリギリだったせいで、すぐに会場に入ったせいで名前すら聞けなか

った。


そして、やっと彼を見つけたのだった。


何度も彼を見かけた。

毎日飽きもせずに一条のお願いを聞いていた。

もう、とっくに気づいているはずなのに、気づかないふりをして、

自分に言い聞かせているようで痛々しかった。

そして、今目の前で泣き腫らしているのを見ていると我慢できず起き

上がると出て来たのだった。


「大丈夫?」

「あ………うん……ごめん変なところ見せて…」

「それはいいけど…こっぴどく振られたね〜?」

「…うっ…ふぇ〜ん……もう嫌だよ……なんで女子を好きになれないん

 だろう…僕が悪いの?」


さっき以上に泣き出すのを見るといたたまれなくなった。


「あのさ〜、先輩って男が好きなの?」

「…ぐすっ……う…うん」

「だったら俺はどうですか?」

「君…だれ?」

「あぁ、えーっと、一年の楠木祐介。これでも女子にはモテてるし、

 結構顔には自信があるんだけど…」

「ぷっ……あはっはっ、自分でそれ言っちゃうの?」

「やっぱり先輩は笑った顔のが可愛いです。」


いきなり言われた言葉に顔を真っ赤にしたのだった。


さっきまでの辛い気持ちがパッと消えて行くようだった。

だからといって、すぐに別の人に乗り換えれるほど器用でもない。


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