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たとえ今、好かれなくても…  作者: 秋元智也
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第三話

いくら鈍感な月島でも、これほどはっきり聞けば気づかないふりは

出来なかった。


『俺、男を抱く趣味ねーし………』


少しは期待してしまっていた。

男だから抱く側とは限らない。

男だって、かっこいい男なら抱かれてみたいと思ってしまう事だっ

てあるのだ。


自分がゲイだと気づいてから、初めて好きになった先輩だった。

トイレに入るとチャイムが鳴っても出て行く勇気はなかった。


心配するようにLINEにメッセージが入った。

授業になっても一向に帰ってこない友人を心配した水戸からのもの

だった。


今は出たくない。

誰にも会いたくなかった。

でも…それでもわずかな期待を胸に確かめたくなった。


放課後、急いでカバンを持つと飛び止められるのも無視して下駄箱

へと向かっていた。


昨日の約束はどうなのだろう?

女子の手前、言っただけの嘘かもしれない。

先輩を見かけると大声で叫んでいた。


「一条先輩〜!」

「なっ……月島……」

「嘘ですよね?僕と付き合ってくれるって言いましたよね?今日も

 一緒に帰るって昨日約束しましたよね?」


他の帰りの生徒が見ている前で声をかけたせいで、周りがざわつき

始めた。


「おい、ちょっと来い!」

「一条先輩!」


いきなり腕を引かれると、いつもの休憩している空き教室へとと来

たのだった。


「お前、なんであんな事言ってんだよ!ふざけんなよ?」

「ふざけてなんてないです。僕は本気で一条先輩の事を…」

「知らねーよ!いつも付き合ってやってるだろ?昼買ってくるよう

 に言ってやってるし、わざわざ話してやってるだろ?これ以上何

 をしろってんだよ?」

「僕は……一緒に帰りたいです。デートや、抱きしめられたりした

 いんです!」

「はぁ?お前なぁ〜男同士でそんな事できるかよ!少しは考えろっ 

 て、な?」

「でもっ…それじゃ……僕はなんの為に付き合ってるのか……」


今にも泣きそうな顔で言うと、後ろから話が長いと女子が入って来た。


「ねぇ〜もう話は終わった?」

「ちょっと待ってろって…すぐに終わるから」

「響もはっきり言ってやればいいじゃん。良いパシリ君にしてるだけ

 で別に付き合うつもりもないって…それに行ってたじゃん?男を抱

 く趣味はないって。」

「当たり前だろ?男を抱くとかマジで無理。汚ねーだろ?それにキス

 とか無理すじだろ?」


今に言葉が本音なのだとしたら、自分は何を勘違いしていたのだろう。

あんなに浮かれて…まるで一人で踊っている道化師にようではないか。


「なら……どうして、あんな返事をしたんですか………酷いです」

「別にいいだろ?嬉しかっただろ?少しでも夢見れたんだからいいだ

 ろ?」

「悪い男だね〜。もういけそう?」

「あぁ、行こうか」


泣き崩れるのをチラリと眺めたが、すぐに女子と一緒に帰って行った。

悔しくて涙が止まらなかった。


あんな単純な嘘にだまされて。

毎日買いパシリにされていても幸せだったなんて…


「うぅっ………どうして………ぐすっ……」

「これ、どうぞ?」


急に現れた人影にびっくりして転びそうになるとグイッと引っ張られ

たのだった。

見知らぬ男子生徒の胸に引き寄せられるとしっかりした胸板に顔をぶ

つけたのだった。

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