第二話
帰りこそは一緒に帰りたい思って下駄箱の前で待っていると
昼とは別の女子を連れていた。
「一条先輩!」
「あれ、まだいたの?」
「はい、駅まで一緒に帰りませんか?」
「あ〜悪いけど、今日はこれから恭子ちゃんの家に寄ってく
から無理だな。また明日な?」
「明日ですね!分かりました」
少し残念だったが、また明日がある。
踵を返すと振り返らずに家へと帰ったのだった。
「ねぇ〜、あの子いいの?」
「いいって、使い勝手がいいだろ?俺の奴隷みたいなもんだ
なぁ〜」
「悪い男だね〜」
「賢いって言ってくれない?」
「あははっ…意地悪ばっかりしてると愛想尽かされるよ?」
「いいって、あいつ俺のことめっちゃ好きだから」
笑いながら彼女の家に行くといつものようにベッドへと直行
したのだった。
朝は、早く目が覚めた。
今日は一緒に帰ると約束してくれた日だった。
気分も上場、今日は今までで一番気持ちのいい目覚めになった
気がする。
「あれ…蛍?今日って日直だったっけ?」
「違うよ、僕ね、今日は先輩と一緒の帰るって約束したんだ〜」
「へ〜、蛍の勘違いじゃないといいな?」
「もう!意地悪〜」
学校に向かう道すがら、家の近い水戸と一緒になった。
水戸は運動部なので朝練の為に朝が早いのだった。
「かたちゃんも早いよね?」
「朝練あるからな〜、蛍は部活入らないのか?」
「僕はいいよ〜。それじゃなくても一条先輩との時間が少ないのに、
部活やったらすれ違っちゃうじゃん」
「そうか?今も、すれ違ってる気がするけど…」
「たかちゃんのバカ!今日は先輩から誘ってくれたんだから!」
べーっと舌を出すと、走っていった。
いくら走っても同じ電車なので、すぐに追いつく事になる。
「あんまり期待すんなよ?」
「たかちゃんって意地悪ばっかじゃん!」
「振られたら慰めてやるって…」
「もう!要らないから〜」
今日は一日中ソワソワしていた。
昼放課になるとすぐにいつもの空き教室へと向かった。
「先輩!」
「あぁ、来たのか?こっちこい」
「はいっ!」
喜んでそばに行くと間近まで一条の顔が近づいてきた。
そのままキスされるのかと目を瞑るとキュウっと鼻を摘まれた。
「今日は焼きそばパンな?ついでにコーヒーも、あったかいやつ
がいいなー」
「う…うん、すぐに買ってくるね」
淡い期待をしてしまっただけにちょっぴり寂しかった。
急いでかけていく姿を見ながら一人に女子が入って来た。
「あれ?あの子まだいるの?」
「あぁ、俺の奴隷ちゃんだからな〜。退屈しのぎにはいいだろ?」
「可哀想〜、でもさ〜可愛い顔してんじゃね?」
「そうか?彩はあんなのが好みか?」
「いんや〜?響のような悪っぽいのがいいかな〜。でも、ちょっと
味見してみたくなる顔してるよね〜」
「やめとけって、あいつ童貞だぜ?」
「分かってるわよ〜、いっそ響きが処女奪っちゃえば?」
「嫌だよ〜、だってあいつ男だぜ?俺、男抱く趣味とかねーもん」
「あの子遅くない?」
横に座っていた女子が立ち上がると教室のドアを開けた。
そこには袋に入った焼きそばパンと温かいコーヒーが入っていた。
「ねぇ〜これってさ〜…」
「聞かれても変わらねーだろ?あいつ俺に惚れてんだぜ?」
「そっか〜」
「だろ?卒業まで退屈しなくていいだろ?」
抱き寄せるように腕に抱くと袋をたぐり寄せた。
廊下を走ってくると息を整えてから入ろうと手をかけた瞬間、中
から一条先輩の声が聞こえて来ていた。