第一話
どうしてだろう。
いつからかなんて覚えていない。
ただ、僕の恋愛対象は男であって、抜く時に使っている写真は
一個上の先輩だった。
「おい、月島ちゃーん。購買でクリームパン買って来て〜、あ
と、ついでに飲み物も欲しいんだけど〜」
「はい!飲み物はコーラでいいですか?」
「あ〜なんでもいいや。月島ちゃんのが俺の好きな物知ってる
でしょ?」
「行って来ます!」
ただこうやって言われるのが嬉しい。
先輩とやってみたい事その1、抱きしめて欲しい。
「いつかはか叶うといいな〜」
告白してからもう1ヶ月が経つ。
先輩の横には毎回違う女子が座っている。
いつの日にはそこに自分が座る事ができたらいいな〜。
そんな妄想を膨らませながら毎日を過ごしている。
「先輩買ってきました〜……あれ?先輩?」
「ご苦労様〜。もう帰っていいよ」
「えっ……あの一緒にご飯を……」
「気を使ってよ?今から美樹ちゃんと一緒に…ねぇ〜。」
「何この子。パシリ?」
「う〜ん、どうだろ?俺の唯一の彼氏?」
「うそぉ〜ウケるw」
「分かりました。今日は戻りますね!」
どんな事を言われても、それでもいい。
自分の事を彼氏と言ってくれるならいつかはわかってもらえる
日が来ると信じているのだ。
教室へと戻ると休み時間も残り半分になっていた。
「それで、また使いっぱしりにされて戻って来たのか?」
「もう!使いっ走りじゃないって…」
この目の前にいるのは水戸貴之。
月島蛍の友人にして、幼馴染みだった。
もちろん月島がゲイだという事も知っている。
弁当を開くと急いで駆け込む。
「ゆっくり食べないとむせるぞ?」
「大丈夫だって……ゴホッゴホッ…げほっ」
「言わんこっちゃない」
呆れるような視線を向けると背中をさすってやる。
月島が付き合っているのは一条響先輩。
女にだらしがなく、なぜか月島の告白をOKしたのだ。
しかし、恋人っぽいことは何もなく、ただの使いっ走りにさ
れているようにしか見えない。
本人は喜んでやっているのでそれ以上は言わないでいる。
「そういえばさ〜さっき僕の事彼氏だって言ってくれたんだよ」
「ふ〜ん…」
「もっと褒めてよ〜。すっごく嬉しかったんだから〜」
「うん、よかったね、てっきり騙されてると今でも思ってるけど
蛍が幸せそうで何より…」
「もうっ、なんか感情こもってなーい!」
浮かれる月島を見ながら水戸は溜息しか出てこない。
この幼馴染みは騙されているという事にいつ気づくだろうか…と。