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三国志演義

三国志演義・曹操の南進~臥龍水火の計~

作者: 霧夜シオン
掲載日:2023/09/19

はじめに:この一連の三国志声劇台本は、

     故・横山光輝先生著 三国志

     故・吉川英治先生著 三国志

     北方健三先生著 三国志

     王欣汰先生著 蒼天航路

     Wikipedia

     各種解説動画

     正史・三国志

     羅貫中著 三国志演義

     の三国志系小説・マンガや各種ゲーム等に加え、

     【作者の想像】

     を加えた台本となっています。

     またこの作品でこのキャラが喋っていた台詞を他のキャラが

     喋っているという事も多々あります。

     なお、人名・地名に漢字がない(UNIコード関連に引っかかっ

     て変換表示できない)場合、誠に遺憾ながらカタカナ表記と

     させていただいております。

     また、役の性別転換は基本的に禁止とさせていただきます。

     名前のない武将たち(例:〇〇軍部将や〇〇軍兵士など)

     が性別不問なのは、過去の歴史においていないわけではない

     、いたかもしれない、という考えに基づくものです。


     ある程度ルビは振っておりますが、一度振ったルビは同じ、

     または他のキャラに同じのが登場しても打っていない場合

     がありますので、注意してください。


     上演の際はしっかり漢字チェックを行い、

     【決してお金の絡まない上演方法】でお願いいたします。


     長くなりましたが、以上の点をご理解いただけた上で

     演じてみたい、と思われた方はぜひやってみていただけれ

     ばと思います。     


三国志演義・曹操(そうそう)の南進(なんしん)~臥龍水火(がりゅうすいか)の計~


作者:霧夜シオン


所要時間:約30分


必要演者数:8~10人

     (8:1)

     (9:0)

     (9:1)

     (10:0)


はじめに:この一連の三国志声劇台本は、

     故・横山光輝先生著 三国志

     故・吉川英治先生著 三国志

     北方健三先生著 三国志

     王欣汰先生著 蒼天航路

     Wikipedia

     各種解説動画

     正史・三国志

     羅貫中著 三国志演義

     の三国志系小説・マンガや各種ゲーム等に加え、

     【作者の想像】

     を加えた台本となっています。

     またこの作品でこのキャラが喋っていた台詞を他のキャラが

     喋っているという事も多々あります。

     なお、人名・地名に漢字がない(UNIコード関連に引っかかっ

     て変換表示できない)場合、誠に遺憾ながらカタカナ表記と

     させていただいております。

     また、役の性別転換は基本的に禁止とさせていただきます。

     名前のない武将たち(例:〇〇軍部将や〇〇軍兵士など)

     が性別不問なのは、過去の歴史においていないわけではない

     、いたかもしれない、という考えに基づくものです。


     ある程度ルビは振っておりますが、一度振ったルビは同じ、

     または他のキャラに同じのが登場しても打っていない場合

     がありますので、注意してください。


     上演の際はしっかり漢字チェックを行い、

     【決してお金の絡まない上演方法】でお願いいたします。


     長くなりましたが、以上の点をご理解いただけた上で

     演じてみたい、と思われた方はぜひやってみていただけれ

     ばと思います。



●登場人物


劉備(りゅうび)・♂:字(あざな)は玄徳(げんとく)。

     中山靖王(ちゅうざんせいおう)・劉勝(りゅうしょう)の末孫(まっそん)にして漢の景帝(けいてい)の玄孫(げんそん)を自称。

     諸葛亮(しょかつりょう)と言う傑物(けつぶつ)を家臣に得るが、未だその勢力は弱く、曹操(そうそう)軍の侵攻

     の前に退却を余儀(よぎ)なくされる。


諸葛亮(しょかつりょう)・♂:字(あざな)は孔明(こうめい)。

      中国史上屈指の名宰相(めいさいしょう)として名を残しているが、現在は弱小と言って

      いい劉備(りゅうび)軍の軍師という位置づけ。

      三顧(さんこ)の礼をもって劉備(りゅうび)に仕え、本作では曹操(そうそう)から逃れるため、策を用

      いて敵先鋒を水・火の計略で屠(ほふ)る。


趙雲(ちょううん)・♂:字は子龍(しりゅう)。

     袁紹(えんしょう)、公孫瓚(こうそんさん)を経て劉備(りゅうび)に仕える。智勇に優れた名将で、今回の退却戦

     では特に劉備の家族である、甘夫人(かんふじん)、糜夫人(びふじん)、阿斗(あと)【後の劉禅(りゅうぜん)】の守護

     を命じられている。


張飛(ちょうひ)・♂:字(あざな)は翼徳(よくとく)。

     一丈八尺(いちじょうはっしゃく)の蛇矛(じゃほこ)を軽々と振り回す酒を愛する豪傑。劉備(りゅうび)の義弟。

     酒による失敗も多いが、その武勇は劉備(りゅうび)軍の中でもトップクラス。

     これより少し後の長坂(ちょうはん)の戦いにおいてはのちの語り草となる、

     長坂橋(ちょうはんきょう)仁王立ちをしてのけることになる。


関羽(かんう)・♂:字(あざな)は雲長(うんちょう)。

     美髯公(びぜんこう)とあだ名される長い髯(ひげ)の持ち主で、知勇に優れた名将。

     義に厚く、上に不遜(ふそん)で下に慈悲深い。


曹仁(そうじん)・♂:字(あざな)は子孝(しこう)。

     曹操(そうそう)の旗揚げ時から付き従っている百戦錬磨の古参の将。劉備(りゅうび)が軍師を

     得てからは良い戦績を残せておらず、大敗北を喫することが多いが、本

     来は優秀な将。


曹洪(そうこう)・♂:字(あざな)は子廉(しれん)。

     兄の曹仁(そうじん)と共に従兄弟の曹操に旗揚げ時から仕えている勇将。許チョや

     他の猛将の影に隠れてしまいがちだが武勇に秀でている。


許(きょ)チョ・♂:字(あざな)は仲康(ちゅうこう)。

     猛る牛の尾を引いて引き戻したという怪力の持ち主。

     もとは農民であったが、黄巾賊残党討伐(こうきんぞくざんとうとうばつ)の為やって来た曹操に見出

     されて仕える。既に故人の典韋(てんい)と共に曹操軍の親衛隊を束ねる。


徐庶(じょしょ)・♂:字(あざな)は元直(げんちょく)。

     もと劉備(りゅうび)の軍師だが、曹操(そうそう)に母親を人質に取られて偽手紙で誘き寄

     せられ、失望した母の自害によってそのまま曹操(そうそう)に仕えることにな

     る。しかし、決して劉備(りゅうび)の為にならないような策を献策しないと自

     身に誓っている。


ナレーション・♂♀不問:雰囲気を大事に。


※演者数が少ない状態で上演する際は、被らないように兼ね役でお願いしま

 す。


・キャスト例

劉備:

諸葛亮:

趙雲:

張飛:

関羽:

曹仁:

曹洪・徐庶:

許チョ:

ナレ:


・徐庶役は基本的に曹洪・許チョのいずれか、もしくはナレが男性だった場

 合はナレと兼ねた方がセリフ数のバランスがとれます。

 (劉備軍サイドとは全員被るため、兼ねられません。)



――――――――――――――――――――――――――――――――――


ナレ:曹操(そうそう)、南方攻略の軍を興す。その数、百万。

   雷鳴の如く伝わってきた凶報は、劉備(りゅうび)らを震撼させた。

   劉表(りゅうひょう)亡きあと、荊州(けいしゅう)の実権を握っている蔡瑁(さいぼう)ら兄妹は劉備(りゅうび)や前妻

   の子である劉琦(りゅうき)を無視し、遺言を書き換えて異母弟の劉琮(りゅうそう)を国主の座

   に据えたばかりか、曹操(そうそう)へ無条件降伏を決めてしまう。

   諸葛亮(しょかつりょう)は、今こそ亡き劉表(りゅうひょう)に代わって荊州(けいしゅう)を治め、

   蔡瑁(さいぼう)一族を排除して曹操軍を防ぐべきだと進言するが、

   劉備(りゅうび)の態度は煮え切らなかった。


劉備:軍師…余(よ)に亡き劉表(りゅうひょう)殿を裏切る真似はどうしても出来ぬ。

   すまぬが、他に策はないだろうか?


諸葛亮:…やむを得ませぬな。

    承知しました、我が君。ともかく御心(みこころ)を安んじたまえ。

    この孔明(こうめい)にお任せを。


劉備:頼むぞ、軍師。


ナレ:諸葛亮(しょかつりょう)は、劉備(りゅうび)の意をくんで新たな策を胸の内に描くと、主だった将たちを

   集めた。


諸葛亮:諸将よ、すでに話は聞いていることと思う。

    曹操(そうそう)がついに南方攻略の軍を興した。

    我らは敵先鋒(てきせんぽう)を撃退しつつ、まずは樊城(はんじょう)へ入る!


    【二拍】


    孫乾(そんかん)、糜竺(びじく)は城内に立札を立て、民達を樊城(はんじょう)へ避難させよ。

    次に関羽(かんう)は兵千人を率い、白河(はくが)の上流に土のうを築いて川の流れをせき

    止めよ。

    そして明日の夜、下流にて兵の叫びや馬のいななきが聞こえたら、

    一斉に堰(せき)を切って曹操軍を濁流で押し流し、同時に攻めかかれ!


関羽:ははっ、承知しました。

   ただちに向かいまする!


諸葛亮:張飛(ちょうひ)は同じく兵千人を率い、白河(はくが)の渡しに兵を伏せよ。

    関羽(かんう)の水計が成功したのを見たら、共に曹操(そうそう)軍の中核(ちゅうかく)を徹底的に粉砕

    するのだ!


張飛:おうッ、心得た!!

   ようし出陣じゃあ!


諸葛亮:次に趙雲(ちょううん)、これへ!


趙雲:はッ!! 


諸葛亮:汝(なんじ)に兵三千を預ける。

    乾燥した柴や葦(あし)、茅(かや)を十分に用意せよ。

    それに硫黄(いおう)や煙硝(えんしょう)を包んで城の各所に隠せ。

    明日の天候は夕方から大風(おおかぜ)が吹くであろう。曹操(そうそう)軍はこれを避けようと

    して、必ず新野城内(しんやじょうない)に陣を移す。


趙雲:本当に夕方から大風(おおかぜ)が吹くのでございますか?


諸葛亮:うむ。必ず吹く。

    その時を見計らい、東門(ひがしもん)を除く三方の門から火をかけるのだ。

    城が炎に包まれ、敵が混乱に落ちたら東門(ひがしもん)へ移動し、

    曹操(そうそう)軍を待ち受けよ。

    敵は必ずそこを目がけて殺到するゆえ、存分に打ちのめすのだ。


趙雲:城ごと用いて火計とは…なんという思い切った策だ。


諸葛亮:頃合いを見てすぐに白河(はくが)の関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)と合流し、樊城(はんじょう)へ急いで退却せ

    よ。


趙雲:心得ました!

   すぐに火計の準備にかかります!


諸葛亮:糜芳(びほう)、汝(なんじ)にはこの紅い旗を、劉封(りゅうほう)には青い旗を渡す。

    それぞれ兵千人を率いて新野城郊外(しんやじょうこうがい)にある山へ向かい、敵が来たら

    計略があるかのように旗を打ち振り、敵を惑わすのだ。

    その後、白河(はくが)と新野城(しんやじょう)の中間あたりに伏兵として潜み、初めは敵をやり

    過ごせ。城が燃えるのを見たら曹操軍が必ず逃げてくるゆえ、そこを襲

    うのだ。


ナレ:一方、曹操(そうそう)は曹仁(そうじん)、曹洪(そうこう)を大将とし、これに自身の親衛隊長である許(きょ)チョ

   を加えて先鋒(せんぽう)とし、総勢十万の軍を新野(しんや)へ進撃させる。

   命(めい)を受けた曹仁(そうじん)らは怒涛(どとう)の如く新野(しんや)近くまで迫(せま)ったが、先頭を進む

   許(きょ)チョが見たものは、左右の山の峰に布陣する劉備(りゅうび)軍だった。


許チョ:偵察の報告にあった敵軍はあれか。

    む、右側の峰の軍が紅い旗を振りだしたぞ。

    左側の峰の軍がそれに応じるように青い旗を振っている…。

    何かの合図なのか?

    これはうかつに進めぬな…。


曹洪:どうした、許(きょ)チョ!

   なぜ進軍を止めている!?


許チョ:これは曹洪(そうこう)様!

    ご覧くだされ。敵は何やら怪しげな合図を交わしている様子。

    それゆえ、ご報告のうえ指令を仰ごうと思っていた所です。


曹洪:なるほど…意味ありげな合図だな。

   よし、兄者の判断を求めよう。


許チョ:はっ。

    お前達はここで待て!

    周囲に注意を怠るな!


    【三拍】


曹洪:…というわけだ兄者、初戦ゆえ大事は取らねばならないだろうが、

   どうしたものだろうか?


曹仁:はっはっは! 曹洪(そうこう)、そんなものは子供だましにすぎん!

   おそらくは我々を疑心暗鬼(ぎしんあんき)に陥(おちい)らせようとしているのだろう。

   許(きょ)チョにしても常日頃(つねひごろ)の汝(なんじ)らしくもない! さあ、進軍だ!


許チョ:はっははッ、ただちに!


ナレ:しかし、行けども行けども劉備(りゅうび)軍はあれきり影も形も見えず、かえって

   それが不気味さを誘った。

   そんな中、突如(とつじょ)響いた法螺貝(ほらがい)の音に驚いて足を止めると、前方の峰(みね)の

   上に敵の大将・劉備(りゅうび)と、軍師・諸葛亮(しょかつりょう)が相対(あいたい)して酒を

   酌(く)み交わして

   いるのが見えた。


許チョ:ぬううう、なんという憎い敵か! 余裕を見せつけおって!

    者共かかれェ!!

    敵の大将は手の届くところにいるぞ! 討ち取れッ!!


許チョ・劉備・女性演者以外:【喚声・SE代用可】


劉備:軍師、敵がしゃにむに登ってきたようだな。

   旗印は…許(きょ)チョか。

   曹操(そうそう)の護衛が先陣を任されたのか。


諸葛亮:そのようですな。

    しかし、いくら勇猛であろうと、何の備えもなく突撃してくるとは愚か

    な…それッ、合図を!


【岩や大木が転がり落ちるSE】


許チョ:うっ、こ、これは、岩や大木が!!

    おのれ、落石の計か!

    ひけっ、ひけっ!!


諸葛亮:よし、これでよい。

    我が君、あとは趙雲(ちょううん)らに任せてここは引き上げましょう。


劉備:うむ。

   …皆、頼んだぞ…!


許チョ:ちいい、逃げるなッ、劉備(りゅうび)!!

! ッこの音は…太鼓だと!?


曹洪:もしや…すでに包囲されているのでは…!?


許チョ:ぬぬぬ、どうするか…。

    ! あれは…曹仁(そうじん)将軍!

    曹洪(そうこう)様、味方の本隊が到着しましたぞ!


曹仁:許(きょ)チョ! この程度の岩や木にひるんでどうする!

   一気に新野(しんや)城へ進むのだ!!


許チョ:は、ははっ! 者共、我に続けェ!!


ナレ:曹仁(そうじん)の督戦(とくせん)を受け、曹操(そうそう)軍十万の軍勢は、勢いに任せてそのまま新野城内(しんやじょうない)

   まで押し入ってしまう。

   城内は人っ子一人おらず、まるで死の街のようであった。


曹仁:ふん、見よ者共!

   劉備(りゅうび)に諸葛亮(しょかつりょう)め、あのような小細工を弄(ろう)したのは、

   万策(ばんさく)尽きて逃げ出す為の時間稼ぎだったのであろう。


曹洪:確かに、慌てぶりが目に浮かぶようだ。

   兄者! 急いで追撃して殲滅しよう!


曹仁:いや待て、もう日も暮れてきた。それに先程から風も強くなっている。

   行軍につぐ行軍で兵も馬も疲れていよう。

   今宵(こよい)はこの城で休み、明日未明から追撃にかかるのだ。


許チョ:ははっ、では兵糧(ひょうろう)を使わせると致しましょう。


    【三拍】


    城のおかげで風はだいぶ防げていますな。野営(やえい)ではちとこの強風はこたえ

    たかと思われます。


曹仁:うむ、劉備どもは今頃、この風に難儀(なんぎ)しているであろうよ!

   ははは!


ナレ:曹仁(そうじん)達はここまでの劉備軍の行動を悪あがきと思い込み、嘲笑う。

   その油断と目も開けられない程の強風に覆い隠され、

   城の周囲に現れた趙雲とその部隊に気づかなかった。


趙雲:曹操(そうそう)軍が全て城に入ったか。

   しかしこの強風…孔明(こうめい)軍師は天候まで熟知している。

   徐庶(じょしょ)軍師もそうであったが、兵法とはここまで計算するものなの

   か…。

   皆、策の通り東門(ひがしもん)以外の三方から火をかけるぞ!


   【二拍】


   よし、やれッッ!!!


   【二拍】


曹洪:ん? なんだ…っ!?

   不審火(ふしんび)か!?

   兵どもめ、兵糧(ひょうろう)を使う際に火の始末をしておかなかったな!?

   者ども、うろたえずに急いで火を消すのだ!


趙雲:ふふふ、敵は慌てて消火作業に入ったか、無駄な事を…。

   火計にこの大風(おおかぜ)、食い止められるものか!

   さあ、我らは東門(ひがしもん)に潜むぞ!

   我に続け!


曹洪:おかしい、風の勢いがあるとはいえ、火の回りが早すぎる…!


   うッ! こ、これは硫黄(いおう)に焔硝(えんしょう)ではないか!?

   いかん、敵の火計に違いない! 兄者に知らせねば!


ナレ:曹洪(そうこう)は慌てて本陣幕舎(ほんじんばくしゃ)まで駆け出す。

   その間にも陣の各所で火の手が上がり、混乱に落ちた兵達が右往左

   往していた。

   いっぽう、新野(しんや)郊外の白河(はくが)に潜んだ関羽(かんう)と張飛(ちょうひ)の目にも

   、赤々と燃え盛る炎が臨まれた。


関羽:おお、あれは新野(しんや)城の方角だな。

   火炎が空を焦がしているということは…火計は無事に成功したか!

   後はこの白河(はくが)まで曹操(そうそう)軍が逃げて来るのを待つだけだな。

   皆、気を引き締めよ!


張飛:おう、新野(しんや)城から火の手が上がったか!

   趙雲(ちょううん)め、やったな!

   ようし俺達も負けてられん!

   出番はこれからだ! お前ら、抜かるなよ!


ナレ:そうとは知らない曹仁(そうじん)は、本陣の幕舎(ばくしゃ)で己の武威(ぶい)を誇っていたが、

   それを聞いていた許(きょ)チョの耳に、不審な物音が届く。


許チョ:?

    【耳をすます】


    将軍、いま妙な物音が。

    しばしお待ちを…。


    うッ、こ、これは!!

    辺り一面、火の海ではないか!

    将軍、これはおそらく敵の計略です!


曹仁:ばっバカな! 敵はすでに逃げ去った後ではないか!

   引っ返してきたとでも言うのか!?

   !? あ、あれは曹洪(そうこう)か!?


曹洪:はあっ、はあっ、はあっ…!

   兄者、敵だ! 劉備(りゅうび)軍の火計だ!!


曹仁:なッ! なんだとォ!?!


曹洪:西門、南門、北門、ことごとく火の海だ!

   東門のみまだ火が回ってないゆえ、早く撤退を!


許チョ:ぬぬぬ、なんてことだ!

    曹仁(そうじん)様、急いで城から脱出を!

    しんがりはそれがしが務めます!


曹洪:兄者、早く!

   ここは許(きょ)チョに任せましょう!


曹仁:おのれえええまたしても!!

   ひけ、ひけェ!!


ナレ:城内に密集していた曹操(そうそう)軍十万は、風と火で大混乱に陥った。

   曹仁(そうじん)たちは急いで火の回っていない東門(ひがしもん)からの脱出を試みる。

   だが、安全と思われたその場所には、すでに劉備(りゅうび)軍

   が待ち受けていた。

   敵影(てきえい)を見た趙雲(ちょううん)は、ほくそ笑みながら部隊に号令を下す。


趙雲:ふふふ、来たな…。

   こちらは追い風か。

   それっ、弓隊、放てッ!!


曹洪:うっ、あ、あれは劉備(りゅうび)軍!!

   伏兵か!?


曹仁:まさか、わざと東門(ひがしもん)に火を放たなかったのはこの

   為か!!


趙雲:常山(じょうざん)の趙子龍(ちょうしりゅう)、これにあり!

   焼け残った曹操(そうそう)軍ども、どこへ行くつもりだ!


曹洪:くっ、趙雲(ちょううん)だと!?

   ぬうぅなんとしても突破するのだ!


許チョ:うおおおおどけどけェェェい!!


    どぉうッ!

    曹仁(そうじん)様ァッ、あの敵はそれがしにお任せを!!


曹仁:おおっ許(きょ)チョ、無事であったか!

   よし、頼んだぞ!


許チョ:ははっ!


    趙雲(ちょううん)、貴様の相手はこの許仲康(きょちゅうこう)がしてやるぞ!

    ぬぅああああああッ!!


趙雲:おぉうッ!!

   曹操(そうそう)の親衛隊を任されている許(きょ)チョか!

   おもしろい! 相手にとって不足は…ないッッ!


許チョ:ッぬうぅぅぅ!

    なんという鋭い槍さばきだ!


趙雲:どうした!

   猛(たけ)る牛の尾を引戻す怪力だと聞くが、噂ほどでもないようだな!


許チョ:おのれェ、それがしを侮(あなど)るなァ!

    ぅおおおおおおッ!!


趙雲:むうっ、やるな!!

   そうこなくては!


許チョ:曹仁(そうじん)様、曹洪(そうこう)様、お早く!

    うぉうりゃあああ!!!


曹仁:すまぬ、許(きょ)チョ!!


曹洪:急いで白河(はくが)まで退(ひ)けェ!!


趙雲:ちいぃ、者共、逃がすなァ!!


許チョ:防げェーーーーーッ!!


   【三拍】


曹仁:はぁ、はぁ…く、くそっ、前回は徐庶(じょしょ)にしてやられたが、

   今度は諸葛亮(しょかつりょう)とやらにか!


曹洪:歳はまだ三十にもならぬと聞いていますが…。


曹仁:ぐぬぬぬう…この度重(たびかさ)なる敗北…司空(しくう)閣下に申し訳が立たぬわ…!


曹洪・曹仁役以外:【喚声・SE代用可】


曹洪:うっ!?

   あれは…劉備(りゅうび)軍!?

   糜芳(びほう)に劉封(りゅうほう)か!


曹仁:ま、また伏兵(ふくへい)だと!?

   おのれ小癪(こしゃく)な!

   蹴散らしてくれる!!


曹洪:兄者に続け!!

   曹操(そうそう)軍精鋭の力を見せよ!!


曹洪・ナレ以外:【喚声・SE代用可】


ナレ:曹仁(そうじん)・曹洪(そうこう)の武勇に勇気を得た曹操軍将士(そうそうぐんしょうし)は、

   からくも糜芳(びほう)らの伏兵を突破、やっとのことで白河(はくが)まで逃げのびて

   きた。


曹仁:ハァ、ハァ…ここまで来れば安全だろう。

   許(きょ)チョは無事であろうか…。


曹洪:あやつなら大丈夫でしょう。

   しかし…我らをこんな目にあわせるとは…諸葛亮(しょかつりょう)め、

   このままでは済まさぬぞ…!


許チョ:はぁ…はぁ…。

    曹仁(そうじん)様達は無事に逃げのびられたであろうか。

    早く追いつかねば…。


   【二拍】


関羽:むっ…下流の方で声や馬のいななきが聞こえる…。

   間違いない、曹操(そうそう)軍だ!

   よし、荒れ狂う濁流(だくりゅう)で押し流してくれよう!!

   堰(せき)を破壊するのだ!


【SEあれば激しい水の流れ】


曹仁:ん?

   なんだこの地鳴(じな)りのような音は…?


曹洪:あ、兄者!

   あれを!


曹仁:な、何ィ!? 水が!!

   いかん、皆早く川を渡れ!!


曹洪:急げーーーッ!

   飲み込まれるぞォーーーッ!!


ナレ:上流から押し寄せた怒涛(どとう)の奔流(ほんりゅう)は、曹操(そうそう)軍数万の兵をあっという間に

   呑(の)み消してしまった。

   曹仁(そうじん)、曹洪(そうこう)らは既に対岸に渡っていて難を逃れたものの、目の前で部下達

   が水に押し流されていく無惨な光景を、為す術(すべ)もなく眺めている事し

   かできなかった。


曹洪:な、なんてことだ…十万の兵が…。


曹仁:くそっ、早く態勢を立て直さねば…


張飛:【↑の語尾に被せるようにして】

   おうおう、曹操(そうそう)軍の残兵ども、どこへ逃げるつもりだ!

   この燕人張飛(えんひとちょうひ)があの世へ送ってやるぞ!


曹洪:こ、ここにも伏兵が!?


曹仁:ぐぬうう、張飛(ちょうひ)だと!?


曹洪:兄者、兵どもは疲れ切っている!

   これではまともな戦いにならん!


曹仁:ぬううう…うっ!?


   【喚声・SE代用可】


   上流からも喚声が…!?

   あ、あれはもしや劉備(りゅうび)軍の新手(あらて)か!?


関羽:関雲長(かんうんちょう)、これにあり!

   白河(はくが)の水に洗い残された曹操(そうそう)軍よ、今追い落としてやろうぞ!


曹洪:な、何ィ、関羽(かんう)!?

   水を流したのは貴様か!


曹仁:バカな…ここまで動きを読まれているというのか…。

   諸葛亮(しょかつりょう)、なんと恐るべき奴か…!


張飛:おう、そこにいるのは敵大将の曹仁(そうじん)だな!

   俺様がお前の首をもらってやるぜ!


曹洪:い、いかん、兄者!


関羽:貴公の相手はそれがしだ!

   はああッ!!


曹洪:ぐうッ!

   なんと重い一撃だ…!


関羽:観念されい、曹洪(そうこう)!


曹洪:ッッッええェェい!!

   はぁ、はぁ…貴様の相手など、してはおれん!

   後日必ず借りを返してくれる!


関羽:待てィッ!

   おのれ、名を惜しまぬのか!!


張飛:さあ覚悟しろッ!! ぬりゃああッ!


曹仁:ぐっ、ぬううっ!

   そう簡単に首はくれてやらぁぁんッ!


張飛:ケッ、疲れきってる奴がよく吠えるぜ!

   そんな力の入ってない槍なんざ、当たりもしねえわ!!

   おらぁぁぁッ!!!


曹仁:うう、も、もはやこれまでか…!?


許チョ:待てええぇぇい!

    曹仁(そうじん)様は討たせん!!

    ぬぅあああああッ!!


張飛:うおッ!?

   ッ貴様は許(きょ)チョか!


許チョ:曹仁(そうじん)様、早くお退(ひ)きあれ!

    ここはそれがしが!!

    行かせんぞ張飛(ちょうひ)!!


張飛:ええいどけぇィ!

   邪魔をするんじゃねぇッッ!!

   どりゃああッ!!


許チョ:ぐッッッ!

    こ、ここが踏ん張りどころ…!!

    どぉぉおああッ!!


張飛:ッちぃぃぃぃ!!

   小癪(こしゃく)なァ!!


曹仁:い、今だ、全軍退(ぜんぐんひ)けえ!!


張飛:おのれッ逃げるか曹仁(そうじん)!!

   敵に背を見せるとは恥を忘れたな!!


曹仁:っぬうぅぅううう!

   その言葉ッ、覚えておれよーーーッッ!!!


関羽:皆、追うのだ! 逃してはならん!


曹洪:相手にするな!

   ひけッ、ひけーーーーッ!!


ナレ:白河(はくが)でも曹仁(そうじん)達は散々に痛めつけられ、からくも逃げ延びていった。

   大物(おおもの)を逃したものの、存分に勝利を収めた関羽(かんう)・張飛両雄(ちょうひりょうゆう)は、劉備(りゅうび)の

   本隊へ合流した。


張飛:ああ愉快だ!

   胸のすくような勝利だったわ!

   これくらい叩きのめせば、まずよかろう。


関羽:うむ、今頃は少数と侮った事を再び後悔しているであろう。


劉備:おお、雲長(うんちょう)! 翼徳(よくとく)! 戻ったか!


関羽:我が君、ただいま戻りました!

   曹操(そうそう)軍十万の兵、火計にて焼き払い、水計にて押し流し、

   その大半を殲滅(せんめつ)してございます!


張飛:いやあ、面白いように勝ちました!

   曹仁(そうじん)の首を取れなかった事だけが心残りですわい!


劉備:ははは、お前達に本気で打ちかかられては、曹仁(そうじん)達も生きた心地(ここち)

   がなかったであろうな。


諸葛亮:両将軍ともご苦労であった。

    すぐに川を渡るゆえ、船に乗るがよい。


張飛:はっ。

   お前ら、急げ! 


関羽:曹操軍の新手(あらて)が来る前に、樊城(はんじょう)へ入るのだ!


諸葛亮:よし、全軍、川を渡り終えたら、船は全て焼き捨てよ!


ナレ:劉備(りゅうび)は曹仁(そうじん)率いる大軍を関羽(かんう)達の武、諸葛亮(しょかつりょう)の策を用いて鮮やかに

   撃砕(げきさい)、民を引き連れて樊城(はんじょう)へ入る。

   かたや曹操(そうそう)は敗北の知らせに激怒するも参謀・劉曄(りゅうよう)の意見を

   容(い)れ、かつて劉備(りゅうび)の軍師を務めた過去を持つ徐庶(じょしょ)を派遣した。


徐庶:一度ならず二度までも孔明(こうめい)の策にかかり、差し向けた大軍が壊滅し

、

   一族の曹仁(そうじん)さえもが敗北している。

   本来なら自らでもって踏みつぶしたいはずだ…。


   …和睦(わぼく)の使者か。

   おそらく劉曄(りゅうよう)あたりの献策(けんさく)。

   それがしがこの使いから戻らなければ…劉備(りゅうび)殿共々不義理の謗(そし)りを

   受けるだろう。

   …ッ、大義名分欲しさの姑息(こそく)な手を…!

   

ナレ:曹操(そうそう)からは和睦(わぼく)についてしか聞かされていなかった徐庶(じょしょ)だったが、

   すでに曹操(そうそう)の真意を読み取っていた。

   それゆえに使者に向かうその足取りは重かったが、再び劉備(りゅうび)達に、

   そして盟友の諸葛亮(しょかつりょう)に会える嬉しさもあった。


徐庶:…樊城(はんじょう)が見えてきた。

   今すぐに駆けだしていきたいこの気持ちと、急いではならぬという

   この思い…なんと苦しく、なんともどかしいことか…。


   【二拍】


   それがしは曹司空(そうしくう)閣下の使者として参った、徐庶(じょしょ)だ!

   劉備(りゅうび)殿にお目にかかりたい!!


関羽:何ッ、徐庶(じょしょ)と申したか!?


   【一拍】


   おおお、徐庶(じょしょ)殿!!

   それがしだ、雲長(うんちょう)でござる!


徐庶:その声は関羽(かんう)殿!

   そうです、徐庶元直(じょしょげんちょく)です!


関羽:しばし待たれよ!

   すぐに我が君にお取次ぎいたす!


   【二拍】


   我が君、軍師、申し上げます。

   ただいま曹操(そうそう)軍より、徐庶(じょしょ)殿が使者として参られました。


劉備:なに、徐庶(じょしょ)が!?

   すぐに通すのだ!


関羽:ははっ。


張飛:徐庶殿が来たのか!?

   懐かしいぜ!


趙雲:今は曹操の下におられる身ですが、またお会いできるとは…。


関羽:徐庶殿、お待たせいたした!

   門を開けよ!

   

   一別以来、息災であられましたか。

   それがしも折にふれて、遠く許昌にある徐庶殿の事を思い出してお

   りました。


徐庶:それがしも関羽殿はじめ、皆さまの事を忘れた日は一日としてあり

   ませぬ。


関羽:うむ、我が君も軍師も心待ちにしておられる。

   さあこちらへ。


   【二拍】


   徐庶(じょしょ)殿をお連れしました!


徐庶:我が君、そして皆様…ご無沙汰しております…!


趙雲:おお、お久しぶりです、徐庶(じょしょ)殿!


張飛:久しいなあ、徐庶(じょしょ)殿!

   あれから元気でいたか!?


徐庶:はい、おかげさまで…!


劉備:このような時にそなたと再会しようとは…!


諸葛亮:元直(げんちょく)…息災(そくさい)なようで何よりです。


徐庶:孔明(こうめい)、久しいな。

   あれこれ活躍は聞いているよ。


諸葛亮:もしやとは思いますが、今日これへ参ったのは…。


徐庶:ああ、君なら察していよう。

   我が君、本日は曹操(そうそう)からの和睦(わぼく)の使者として参りました。


劉備:なに、和睦(わぼく)…曹操(そうそう)が?


徐庶:はい。

   ですが、もし受け入れれば待っているのは後悔でしょう。

   曹操(そうそう)が狙っているのは、心にもない慈悲を見せて荊州(けいしゅう)の民の信望を買おう

   としているにすぎません。


劉備:では、真の狙いは…。


徐庶:本心は荊州(けいしゅう)はおろか、呉(ご)の孫権(そんけん)の根拠地、揚州(ようしゅう)まで手に入れんとするもの

   です。


劉備:ぬうう曹操(そうそう)め、そこまで見すえているのか…!

   しかし徐庶(じょしょ)、こうしてまた再び会えたのは幸い、我らと共に行かぬか?


徐庶:ッ…そうしたいのはやまやまながら、それはできませぬ。


劉備:どうしてだ?

   今ならこのままここに留まる事もできよう。


徐庶:それがしの母が亡くなった時、曹操(そうそう)は丁重に弔い、墓まで建てました。


劉備:なに、そこまでしたという事は…。


徐庶:ええ、自分の手から放さぬ為なのは明らかです。

   ここで使いから帰らねば、世間はそれがしの節操(せっそう)を疑い、

   笑い物とするでしょう。


張飛:くそっ、曹操(そうそう)め、やることがいちいち汚ねぇぜ!


関羽:まったくだ…それがしの時を思い出す。


趙雲:相変わらず人材を得る為には手段を選ばないな…。


諸葛亮:元直(げんちょく)、その事は私にも責任がある。

    あの時伝えていれば…。


徐庶:良いのだ、孔明(こうめい)。

   今更言っても仕方のない事だし、君を恨んだりするのは

   すじ違いも良い所だ。

   我が君、これからはしばらく逆境が続くでしょう。

   しかし、以前と違って今は孔明(こうめい)がお傍におります。

   必ず我が君の大望(たいぼう)を叶えるべく、力を尽くしてくれる事でしょう。

   それがしはなるべくゆっくりと戻るようにしますゆえ、

   その間に一刻も早くこの地から逃れ遊ばしませ。 

   では…。


諸葛亮:さらばです…元直(げんちょく)。


劉備:いつか…いつかまた会おうぞ、徐庶(じょしょ)…!


関羽:徐庶(じょしょ)殿、また必ずお会いしましょうぞ!


張飛:それまで体を大切にな!


趙雲:次にお会いする時は、味方同士で笑いあいたいものです…!


徐庶:は、はい…!!

   では、これにて…。


   【二拍】


劉備:徐庶(じょしょ)も辛い立場だな…。

   軍師、これからいかがすべきか?


諸葛亮:襄陽(じょうよう)へ避けましょう。

    この樊城(はんじょう)よりは遥かに守りやすいです。


劉備:うむ。

   …だが、余(よ)と共にこの樊城(はんじょう)へ参った無数の民達はどうしたらよいだろうか?


諸葛亮:我が君と共にどこまでもと慕って付いてくるのです。

    たとえ足手まといとなろうとも、共にお逃げあるべきでしょう。


劉備:よし、分かった。

   皆の者、これより樊城(はんじょう)を捨て、襄陽(じょうよう)へ向かう!

   関羽(かんう)達は民達に共に参るか、それともここに残るかを選ぶよう伝え

   よ!


関羽:ははっ。


   【二拍】


   みな、よく聞くのだ!

   曹操(そうそう)軍の追撃から逃れる為、この城を捨ててねばならなくな

   った!


張飛:俺達はここから襄陽(じょうよう)へ向かう!


趙雲:手向(てむ)かわぬ者を曹操(そうそう)軍も殺しはするまい!

   無理強(むりじ)いはせぬ!

   その上で共に参る者はあるか!


ナレ:庁舎(ちょうしゃ)の前に集った新野(しんや)の民達は、大音声(だいおんじょう)で呼びかける関羽(かんう)達に対し、

   それに負けぬほどの声量をもって応えた。


   途中で食糧が尽きて飢えようと、どこまでも劉備(りゅうび)に付いて行く。

   たとえ曹操(そうそう)軍に殺されても、劉備(りゅうび)達を決して恨んだりしない。

   だからどうか、自分達を共に連れて行ってくれと。


   民達の魂から発せられた叫びを感じ取り、三人は身を感動に震わせて応え

   た。


関羽:よしッ、そなたたちの気持ちはよく分かった!


趙雲:ここまで我が君を慕ってくれるとは…!


張飛:珍しく七年もの間、一つ所(ところ)にいたもんなあ。

   よォし、お前ら行くぞォ!

   急いで出発の準備をするんだ!


ナレ:徐庶(じょしょ)は涙ながらに別れを告げて帰っていき、劉備(りゅうび)は樊城(はんじょう)を捨てて新たに

   襄陽(じょうよう)を目指し、移動を開始した。

   諸葛亮(しょかつりょう)と言う不世出(ふせいしゅつ)の人材を得た一方で、未だ自分の領土を持たぬ劉備(りゅうび)。

   数万の民百姓たちと共にその運命は定まらず、木の葉の如く乱世の烈風に

   弄ばれるのであった。



END





曹操の荊州及び大陸南部への侵攻。

その序章ともいえる戦いを声劇台本化してみました。

有名な長坂の戦いの少し前の時間軸です。

楽しんでいただけたなら幸いです。

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