ケテル
迷宮と魔力のイメージは某なまいきなゲームをイメージしています。
あと説明のタイミングがなさそうなので補足すると、ステータスは「同レベルの人物と比較してどれくらい優れているか」なので、レベル差が異常にあれば筋力Eでも筋力Aより強いこともあり得ます。
…【鑑定】スキル。
このスキルは通用さえすれば相手の名前・種族・スキル・その他諸々…
様々な情報を獲得することができる、非常に強力なスキルである。
しかし、万能なものでは断じてなく、特殊な状況下でない限りは「自分のレベル+【鑑定】のレベルの3倍」より上の相手には妨害されてしまうのだ。
俺の今の【鑑定】レベルは2。つまり相手は少なくとも、レベル31以上の相手である。
俺はテトのレベリングの成果を確認したが…
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名称:テト
種族:迷宮獣人族(猫)
レベル:30
性別:女
称号:【迷宮守護者】
スキル:【剣術Lv5】【身体強化Lv5】【直観Lv3】【氷魔法Lv2】
能力値
体力:C
筋力:C
防御力:E
俊敏性:B
魔力:C
幸運:F-
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かなり成長しているが…奴に勝てるかと言われると微妙なところだ。
テトは【鑑定】が使えないが、相手の強さは【直観】を用いて察せるはずだ。
だが、テトは俺を庇うように前に出た。
「おい!何してるんだ、逃げるって言ってるだろ!?」
「ご主人が生き残れば私は復活できるのでしょう?ならば私が囮になった方が逃走率は上がる」
そう言うや否や、テトは呪妖樹に向かって攻撃を仕掛けた。
氷魔法と斬撃による集中砲火。
今まで戦ってきた相手なら、一撃ごとに数体は倒せてもおかしくない。
だが、呪妖樹はまるで効いていないかのように迫り、その根を鞭のようにしならせてテトを吹き飛ばし、俺に激突させた。
内臓が潰れる感覚とともに、俺は口から大量の血を吐き出した。
かなりの致命傷だが、俺はまだましだ。
テトは上半身と下半身が衝撃で分かれ、触れた肌から感じる熱がどんどんと冷えていっている。
いくら蘇生が可能とはいえテトが戦闘力の大半を担っている以上、絶体絶命の状況であることに変わりない。
確かにテトは強くなってはいる。俺よりも、ずっと。
だがヤツ相手には勝つためにはおろか、時間稼ぎにすら力不足であった。
俺はテトの手を握り、【迷宮の主】の権限である転移を発動しようとした。
しかし、それを止めたのは…
まるで血の霧の如き深紅の長髪を靡かせた女性が、片手に持った悍ましい武器から放たれる一閃で呪妖樹を一刀両断する音だった。
「…大丈夫か?」
そう言って彼女はテトの口をこじ開け、真っ赤な回復薬を呑み込ませた。
その薬の効能は凄まじく、見る間に足が生え直っていった。
「完全回復薬だ。失った体力までは回復しないが…休息を十分にとれば回復する。君の分も必要か?」
「い、いえっ!私は回復魔法使えますし…」
「そうか…無理はするな。このあたりではまず見ない強さの魔物だ。手遅れになる前に見つけられて本当に良かった」
「あ、ありがとうございます…私はパル。この子はテト。あなたは…?」
「あぁ、紹介が遅れたな。私はケテル、冒険者をしている」
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名称:ケテル
種族:人間族
レベル:妨害
性別:女
称号:妨害
スキル:妨害
能力値
妨害
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名称:禍者
武器種:大剣
等級:妨害
特殊効果:妨害
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名前を聞くと同時に【鑑定】を使ってはみたが…ほとんど妨害されて見えない。
武器の名前と種族以外は見た目通りだったので、ほぼそれ以外の情報はなかった。
「まさか呪妖樹…それもレベル10程度のエリアにレベル53のヤツが現れるとはな…君たちはどうしてここでアイツと戦っていたんだ?」
「冒険者になるために森を抜けてルンツ王国に行こうとしたんです。そうしたらいきなり…護衛のテトが一撃であんな姿にされてしまって…」
「そうか…ならばコレを渡しておこう」
そう言って手渡してくれたのは、蒼い光を放つ水晶だった。
「これは…?」
「【消滅石】と言ってな、魔物は魔力と匂いで獲物を探すんだが、その両方を遮断できる。効果は丸一日はもつ」
「なにからなにまで…ありがとうございます」
「大したことじゃないさ。本当は護衛として同行したいところだが、急ぎの用事があってね…それじゃ、幸運を祈るよ」
そう言い残して、彼女は赤い閃光のごとき動きで、ルンツ王国…俺たちが向かうつもりだった国…の方角へと飛び去って行った。
俺が自分の体を回復していると…
「う…」
「テト!よかった、無事で…」
俺は無意識に大粒の涙を流し、テトに抱き着いていた。
「ご主人…そうだ、私…」
「いいんだ。結局助かったんだし」
そう言ってひとしきり頭を撫でたのち、消滅石を携えて俺たちはルンツ王国へ向かったのだった。
ケテルさんの元ネタがわかる人は作者と握手。
元ネタに恥じぬ程度には強いです。