3 サハルまでの道のり
この度は、この小説を開いていただき、または、この小説に少しでも興味を持っていただき、
本当にありがとうございます。
これから毎日投降をしていきたいと思っております。
応援していただけるととても励みになります。
ぜひ最後まで読んでいただけたら幸いです。
「はぁ…… 暑い……」
俺はミぜと別れてから一人延々と太陽が照らす砂漠の上を歩いていた。
とにかく暑い。汗が垂れ続けている。
あの後、ミぜと歩いてる中で様々な事を教えてもらった。
想像以上に親切な人でとても安心したというのが正直な感想だ。
もしかしたら、俺が信じるべきはミぜであの少女こそ疑うべきなのかもしれないと思った。
しかし、エルローシャに行かなかったのはミぜからの話を聞いたからでもあった。
まず、この世界は七つの宗派に分かれて、それぞれ国があるということを知った。
それぞれ祀られているのは想像主の鯨であり、
海鯨
地鯨
空鯨
薬鯨
妖鯨
岩鯨
????
この七頭がいるらしい。
ミぜさん曰く、それぞれの鯨が生息してる地域に国を築いている訳ではなく、
その昔に信仰を始めた人が決めた場所に国が築かれていったそうである。
また、そもそも鯨に定住場所はなく、その時々によって現れる場所は異なるらしい。
だからこそ、今回の事例は特別だったと言っていた。
巨大都市エルローシャは空鯨を祀っている国の内の一つで、
そのエルローシャに現れたタイミングで殺されたのはあまりにも都合がよすぎるとの事らしい。
他にも、一つの国は国自体が移動して存在しており、
どこにその国があるのか分かっていない都市も存在すると言っていた。
なかなかに複雑な世界だなと俺は思った。
あと、七頭目の鯨についてはミぜさんもよく知らないらしい。
それらに加えて、付随的に教えてもらったのは創生術という魔法のようなものだった。
大気中にあるマナを利用して使うのだと言っていた。
水を出したり、火を出したり、その人の特性によって変わるらしいが、
大体の人は生活できる程度には使えると話していた。
「砂漠で困ったら君も創生術を使うといいさ」
これが最後に彼女が放った言葉である。
そのタイミングで分かれ道に到着し、結局、創生術の使い方は教えてもらえなかった。
「創生術〝転移・エルローシャ〟」
彼女はそう言って消えてしまった。
便利な魔法だこと、本当に羨ましい。
#
あの少年、不思議だった。
貧民街出身というのは嘘だろう。
鯨子のなれ果てか? それとも正統継承者なのか?
流石にそれはないか。
だが、このタイミングで正統継承者の出現はまずいことになる。
殺しておくべきだったかもしれない。
とりあえず、今はエルローシャに行くのが優先かな。
戦争を始めないと……。
#
「創生術〝水〟」
一人で魔法っぽさを意識してやってみる。
しかし、一向に水は出ないし、なんならそろそろのどの渇きも限界だ。
ていうか、俺は気付いてしまった。
サハル砂漠へ向ってとは言われたけど、砂漠のどこに向かえばいいんだよ!!!
かれこれ二時間ほどは歩いている気がする。
しかし不思議なことが一つある。
さっきまで俺がいた草原は巨大な生物しかいなかったのに、
それが嘘のようにここには小さな生物しかいない。
トカゲっぽい奴やヤドカリみたいな奴もどれもみんなとても小さい。
「うおっ」
そんなことを考えていたら、地面の砂が急に動き始めた。
流砂か!?
今まで歩いてくる途中で砂が動いていることはあったが、ここまで大きいのはなかった。
しまった。動けば動くほど引き込まれていく。
息が、もうできない。
「………ゴホッ…ㇹッ」
「ここどこだ?」
気が付くと小さな祠の中のような場所に寝ていた。
最近は気絶することが多いなと思った。
道は真っ直ぐに一直線で、その先はかすかに光っている。
輝く鉱石や輝く虫などが飛び交っている。
その光の方向へ向かうと、そこには辺り一面砂漠が広がっていた。
「はぁ!?」
思わず声が出た。
さっき俺がいたのは砂漠のはず、だが、ここも砂漠。
不思議に思って上を見上げるとそこにも砂漠が広がっている。
所々に砂が上から落ちてきている。
さっき俺が落ちたのは洞窟みたいな場所で、中には特に何もなかった。
一面に広がる砂漠に呆然としていると、そこに小動物がやってきた。
ウサギやリスのような動物で、かわいらしい表情でこちらを見ている。
「かわいいな、お前も一人か?」
動物に同情を求めるなんてどうかしていると思ったが、
途方もない砂漠に嫌気がさす気持ちも分かってほしいものだ。
動物の頭を撫でる。かわいらしい様子でこちらを見て、次の瞬間
その小動物の口が大きく開いた。
「なんだよ……これ……」
「あ…うぁぁぁぁぁぁ!!」
撫でていた左手の肘から下が無くなっていた。
痛い。とてもつもなく痛い。
なんだ? 何が起こったんだ。
小動物はケロッとした表情でこちらを眺めていた。
その表情は恐怖そのものだった。
もう嫌だ。こんな場所嫌だ。
早く幸せに暮らしたい。もう懲り懲りだ。
俺は怖くなり、その場から必死に走って、洞窟の中へ逃げた。
奥の方へ奥の方へと、先を目指し続けて歩いた。
少し開けてた場所に着くと、そこは小さな穴が所々に空いていた。
そして、俺の左手からは血が流れ続けている。
片手は無く、血の出すぎだろうか、意識が朦朧としてきた。
「クゥー クゥーー」
「クゥーー」
何やら鳴き声が聞こえてきた。何の鳴き声だろうか。
音の聞こえてくる方向を振り向くと、
辺り一面の小さな穴から出てきたのは、さっき砂漠で出会った小動物だった。
「うそ……だろ…」
何匹いるかわからないその小動物に、俺は腰が抜けてしまった。
こんな奴、一匹でもどうしたらいいのか分からなかったのに、こんな大勢…。
=
「お前、歌あんまり上手くないよな」
「そうだよ、歌上手くなくても生きてはいけるって!」
「夢なんてさ、ない方が幸せかもよ? だって、俺なんて女の子と話すだけで幸せだもん」
「それなー! やっぱ人生楽しんだもん勝ちでしょ」
大学時代の飲み会を思い出した。思い切って自分の夢を打ち明けた直後、
初オーディションの結果を皆に知らせた後に行われた飲み会だ。
大学の友だち曰く、俺を励ます会だったそうだ。
「もう歌手なんて諦めるわ! なんていうか、ノリ的な感じで始めたことだしさ!」
俺は強がってみんなの前ではそう言ってしまった。きっとそれが間違っていたんだ。
いつだってそうだ、俺は自分を貫き続ける強さがない。
人に言われたことを信じる素直さも、努力し続ける根気も、俺には欠けている。
鼻から間違ってた。きっと転生したのも間違いだ。
ミぜさんがあの時に見せた真剣な表情も、あの助言をくれた少女のような他人を想う気持ちも
俺にはないんだ。
これが走馬灯ってやつなのかな。
現世で死んだときにはなかったから、今走馬灯が見れて良かった。
=
周りを見渡すと、一面に小動物に囲まれていた。
徐々に大きな口を開け始めた奴もいる。
早かったな。俺の転生ライフ。
「あーーーー!! 見つけた!
こんな所にたくさんいた!」
小学生くらいの甲高い男の声が洞窟に響き渡った。
ここまで読んでくださり、お疲れ様でした。また、同時に、ありがとうございます。
まだ拙い文章で、正直、面白くない部分もあるかもしれませんが、創作を続け、上達していきたいと思っております。
もしよろしければ、評価★★★★★、ブックマークなどしていただけるととても創作の励みになります。
応援していただけたら、とても嬉しいです。
これからもよろしくお願いいたします。