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悪魔なカノジョ  作者: 佐久良
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2.再会

 先に来ていた元クラスメイトたちから次々に声を掛けられる。適当に挨拶を交わしながら部屋を見渡したが、彼女はまだ来ていないようだった。


「上原。来て早々で悪いけど、会費回収させて」


「ああ」


 俺は財布を取り出し、事前に聞いていた金額を幹事の高本(たかもと)に渡した。


「今日、何人くらい来るの?」


「あー……、十七人かな。今、上原入れて十二人来てて、あと五人来る予定だよ」


 その五人のなかに彼女も入っているはずだ。俺は、左腕に着けた時計に目をやった。時計の針は、十八時五十分を指していた。


「今日って澪も来るんだよね」


 誰かが、ふいにその名を口にした。久しぶりにその名を聞き、本人がいないと知っているのにドキッとする。


「澪ちゃんって今、読者モデルやってるんでしょ?」


「そうなの? すごーい」


 女子たちが勝手に盛り上がっている。俺は聞き耳を立てつつも、男子グループが集まっている場所に座った。

 彼女が読者モデルをやっているなんて初耳だ。まあ、彼女の現在の様子を知る人との付き合いもないのだからしょうがない。


「あ、澪。久しぶり」


 その声に、思わず部屋の出入り口の方を見た。


 そこには淡いピンクのストールを手にした彼女の姿があった。肩より少しだけ下まで伸びた髪は黒に近いけれど、茶色く染められている。

 彼女を目で追いながら隣にいる同級生たちと会話する。彼女は出入り口付近で、俺と同じように会費を徴収された後、女子たちが集まっている席へと移動した。


 わざわざ女子グループの輪の中へ入って行き、彼女に話しかける勇気はない。二十歳を超えても相変わらずな自分に思わず苦笑いする。


「直哉、何飲む? ビールでいい?」


 俺の正面に座っていた平井智樹(ひらいともき)に聞かれた。俺は智樹の方を見て「ああ」と頷いた。料理はコースで出てくるが、飲み物は飲み放題プランのため、その都度、店員に声を掛けて注文する仕組みらしい。


 智樹とは中学校のときに同じテニス部だったこともあり、今でも連絡を頻繁に取り合っていた。たまに、二人で飲みに行くこともあり、親友ともいえる存在だ。一つ上の先輩で、智樹の幼なじみである澤村恭子(さわむらきょうこ)とも仲が良く、三人で出掛けることもあった。


「澪に話し掛けないのかよ?」


 ニヤニヤという表現がよく似合う表情をした智樹が俺に小声で聞いてくる。酒が程よく回り始め、少し酔っているのだろう。周囲も同じようなもので、酒が進むにつれて賑やかになってくる。その騒がしさは、俺と智樹の会話をうまくかき消してくれる。


「何でだよ」


「さっきから澪のことチラチラ見てるのバレバレなんだよ。直哉、ずっと好きだったもんな?」


 否定も肯定もしなかった。

 中学生の頃、確かに彼女のことが好きだった。だが、高校に入れば他の人を好きになったり彼女ができたりもした。


 彼女のことを未練がましく、ずっと想い続けていたわけではない。だけど、今同じ部屋にいる彼女を見ると、あの頃のように心臓がドキドキと音を立てているのも事実だ。


 ふと彼女に目をやる。そのとき、彼女がなぜかこちらに目を向け、視線が合った。瞬間的に視線を逸らす。心臓がこれまでにないほどの速さで脈打つ。


「ナオちゃんだよね」


 近くで彼女の声がした。久しぶりに彼女の声が俺の名前を呼んだ。甘い匂いがして、そちらに目をやると、そこには彼女がいた。

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