第九十五話◆
第九十五話
悠子がいなくなってそろそろ一ヶ月。そして二月、二月の楽しみといえばなんだろうか?二月の楽しみなんて高校生活には何もなかったりして……
「今年もこの年がやってきたぜ♪野郎ども!」
「「「うをおぉぉぉぉぉぉぉ」」」
クラス中の男子が騒いでいた。どうかしたのだろうか?
「今年はきっと両手いっぱいのチョコレートをもらえるに違いないぜ?」
「うっは♪それってめっちゃ楽しみ〜だよなぁ!」
「やっぱり中学時代より高校のほうがモテ度がぜんぜん違うもんなぁ」
はて?チョコ?ああ、そうか、二月はバレンタインがあるんだった。
元気いっぱい騒いでいる連中に僕は言ってやった。
「そんな騒いでもらえるものじゃないだろうに。期待するだけ無駄なんじゃない?」
ぎょろりとした目がこっちに向けられる。怖い…
「吊るせ、こいつをチョコ漬けにして吊るしてしまえ!」
「チョコ漬けって……」
僕に群がろうとした連中だったが、授業が始まる音に阻まれる。どの生徒たちもまるで親の敵を見るような目でこちらを見ている。おいおい、そんなにきれなくたっていいだろうに。
「……月夜じゃない日は気をつけな」
そんな闇討ち宣言を堂々している困ったクラスメート。お茶目だろうけど怖いよ。
まぁ、あれだよ。そんなこと言う僕だってバレンタインがあると聞いてからは楽しみだし、これまでに一個ぐらいは貰ったこと確かあるさ。だから、一個以上貰えればそれでいいのである。高望みほど落胆させてくれるものはないだろうから。
―――――――
そして、当日である。下足箱の中にチョコレートなぞ発見されなかった。まぁ、予想はしてたさ。今時さ、下駄箱の中に入ってるわけないじゃん、気を落とすなよ僕。
自分のクラスへ向かおうとしていると雪ちゃんが立っていた。つんと何かを差し出される。
「はい」
「え?」
「今日はバレンタインだからそれだけです」
そういってあっという間に行ってしまった。それが何なのかすぐにわかった。こんな日に爆弾なんて送りつけるはずがない。
綺麗に包装された真っ赤なプレゼントを大切にかばんの中にしまった。
「♪」
いつもの見慣れた学校でさえ幸せでいっぱいにならないこともないなぁ〜そう、一個でももらえたら勝ち組なのである。
―――――――
「霧之助、これ、やるから」
「百合ちゃん……ありがとう」
教室で手渡されたチョコ、それをクラスの男子が見ていた。
「「「霧之助、お前、殺るから!!!」」」
「みんな……遠慮しとくよ」
まぁ、そんなことを言っているのだがちゃっかりこの連中はチョコレートを貰っていたりするのである。やれやれ、ねたましい連中だ。
―――――――
家に帰ってくると僕の家の前で東結さんが会釈をしてくれた。
「間山霧之助さん、今日はバレンタインデーですね?」
「そうですね……もしかして、東結さんも僕に何かくれるんですか?」
ふふふと笑う。うわぁ、きっとくれるんだぁと、子ども張りの期待を寄せていたのだが両手をさっとあげる。
「いえ、わたくしはそのような恋人でもなんでもない方に上げるチョコレートなどもっていませんよ」
「そ、そんなぁ……」
しょげていてもどうにもこうにも何にもならないのだから立ち上がった。
「バレンタインデーで何もなかったとしてもまぁ、それが普通なんでしょうね?」
「ええ、そうですよ……代わりにお帰りといってあげましょう」
「……ありがとうございます」
―――――――
郵便受けの中には三つの小包が入っており、それぞれに東結、野々村悠、そして間山悠子とかかれたものが置いてあったのだった。
三人のうち、二人は手紙と一緒に……
「なんじゃこりゃあああ!?」
全て英語……苦手な英語を克服して欲しいという妹、そしてその友人からの挑戦状だろうか?
あえて本編のことには触れないでおきましょう。さて、第百話についてここでも一応触れておこうかなぁなんて思っています。主体的に、これまた番外編であって悠が主人公です。登場人物の数が異様に少なく、三名。悠は決定されていますがさて、残りの二人は誰でしょうか?二人当てきった人は敬礼し、今後足を向けて眠れません。さすがにこれを当てるのは至難の業でしょうから。ああ、そうでした。続き読みたいなぁって人がいるのかどうか、わかりませんが……第百話までに来ましたらこのまま続けさせていただきます。最近、妙に自信がなくなるときがあるんですよ。三週間は持つかなぁと思いましたが見事にエンストを起こしてしまいました……気合と根性、そして努力がサンタさんにもらえるといいなぁと思います。まだ時期じゃありませんけどね。よゐこじゃないとサンタークロースはやってこないそうですが、実際のところあのおじいさんは悪いこのところにやってきて悪いこをさらうという話もあります。気をつけてください。じゃあ、いつものことをやっておきましょう。感想評価、その他ありましたらぜひ、雨月へお願いします。