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第九十三話◆

今回で一端の区切りを終え……まぁ、あれです。詳しいことは後書きで。

第九十三話

 呼び出し音が三回ほどしてからなんとなく久しぶりといった感じの声が聞こえてきた。

『もしもし?霧之助どうかしたの?』

「どうかしたって……水臭いじゃないか……留学するなんて黙ってて……」

『ああ、だってちょっとの間じゃない?そんな大げさにしなくてもいいって』

 軽く笑った調子でそんなあっけらかんと言う。なんとなくだが、寂しさがにおう感じだったが……だが、そういわれてしまっては責めるに責められなかったりする自分がまだまだ甘ちゃんだと思われる。間山霧之助、甘口……一パック398円なり。せめて中辛と呼ばれたいものだ。

「でもさ、ちょっと悠がいなくなっちゃうと寂しくなるんだけど……」

 そういうと押し黙られた。なんとなく、喜んでいるような気がするのだが何故、喜んでいるのだろうか?

『そ、それだけあたしの比率が霧之助の中じゃ大きいってとっていいわよね?』

「まぁ、そりゃあ確かに僕って友人少ないから。数じゃないよ、友達は大切にするものだから……おかしいかな?」

『安心して、あたしだって同じ意見よ』

 そういってくれるのはうれしかったりする。ああ、そうそうと言い出して悠はこんなことを言ってくれた。

『今からさ、霧之助のケータイにあたしの写メ送るからつらいとき、困ったとき、世界が滅亡しそうになったときにこれみて元気出して?』

「うん、ありがとう」

 あえて突っ込まない、それが僕の新たなポリシー。世界が滅亡するときはきっと悠と悠子が仲良くするときに違いない。

『あ、あのさぁ、あたしもその、へこんだときは霧之助と一緒に写ってる写真をみて元気出すから!がんばるからね!』

「がんばって!」

 その後、寒い中三十分間ほど電話をしたのであった。鼻水だらだら……汚いとも思ったが電話じゃ相手の顔は見えない。



――――――――



 冬休みというものは案外短いものである。気がつけば悠子と由美子ちゃんの誕生日である一月十日になっており、僕は二人におそろいの腕時計をプレゼントした。そのときのことは……伏せておこう。

 そんなこんなで気がついてみれば悠子と悠が海外へと旅立つときがやってきた。あっという間に日々が過ぎていくと感じているときはきっと老化現象が早まっているに違いない。すでに目を覚ましたときには悠子の姿はなく、用意されていた朝食に手をつける。

「霧之助、残念だったわね」

「何が?」

「見送りいけなくて」

 母さんがそんなことを言う。ちょっと形の崩れている目玉焼きをさっさとほおばる。こんな料理を誰が作ったのかいちいち想像しなくてもよかった。それを食べ終えるとあらかじめ準備していたかばんを持ってついでに財布があることも確認する。

「いいよ、別にこれで最後ってわけじゃないんだし。家族だからさ」

 そうねとつぶやいて僕は僕で悠子とともに住んでいたアパートへと向かうためマンションを後にしたのであった。



――――――――



「あ〜あ、霧之助と最後に会えなくて残念だった〜」

 すでに機上の人となっているコート、いや白衣の下にセーラー服をきた少女はそんな風につぶやいた。

「……」

 もちろん、そんなつぶやきは独り言ではなく隣に座っている同年代の女の子に対してのものだ。

「ねぇ、ちょっと聞いてる?」

 無視されるのが一番嫌いな白衣の少女は眉毛を若干不機嫌そうに動かして隣を見る。その女の子はどうやら故意に無視をしているわけではなさそうで一枚の写真を眺めているようだ。どうにも、それが原因らしい。不思議に思い覗き込むとその写真には父親、そして母親にその子どもと思われる三人の子どもが写っている。

「家族写真?」

「ん……?ええ、そうよ。家族で撮った、最初の写真」

「へぇ、珍しい……あんたにも血が流れてるのねぇ」

 いつもだったらそんな売り言葉を絶対に買ってしまう女の子だったが、軽くうなずくだけだった。

「そうね、流れてるみたい……去年の春には流れてなかったはずなのに」

「は?変なの………ん?もう一枚持ってるわね?」

「あ、ちょっと!」

 家族写真の下の写真を取り上げてみる。見知った顔を見つけてつい頬が緩んでしまう。

「何もこんな固い顔でとらなくたっていいじゃない?せっかくなんだから笑顔で撮ればよかったのに。ブラコンってやつかしら?」

 おちょくってみるのだが、女の子は間をおくことなくいったのだった。

「……そうよっ、何か文句でもあるのっ?」

 勢いよくその写真を取り上げて相手をにらみつける。

 そんなことがありながらも、飛行機は難なく地上から蒼空へと飛び立ったのであった。



さて、宣言したとおりここで一端の区切りです。メインヒロインが欠けちゃったら終わりを迎えるしかないでしょうし。しかし、実際のところ主人公は霧之助なので話は続いちゃったりします。今後もまだ読み続けてくれる方がいるのならうれしいことです。一応、今後も更新されていきますので(内容はもちろん悠子、悠がいなくなった後の話です)よろしくお願いします。できましたら、感想、評価お願いしたいと思います。続きじゃあの子ががんばる予定です。

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