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第八十一話◆

第八十一話

 十一月も半ば。猛が告白されてあれから一週間が経った。まったくうわさもたたず、綺麗な彼女が隣にいるということも一度もない。このまま放っておいても絶対に猛は自分からそのことを話してくれないと考えていた。

「で、あれからどうしたのさ?」

 いい加減我慢の限界が近づいており、僕は猛に直接聞いてみることに……はぐらかすか?なんて考えてもみたのだが奴は素直だった。一つため息をついてつぶやいた。

「……ふったよ」

「え?」

 あんなかわいい子からの申し出を断るとは変わった奴だ……そんなことも考えていたが、猛の話はそれで終わりではなかった。

「……一年後、今度はこっちから告白したいっていってな……人は一年で変われるもんだ…いや、半年ぐらいで変われる」

 僕を見ながらそんなことを言う。何だろう?僕が変わったとでも言いたいのか?いや、ここじゃ僕のことは関係ない。しっかしまぁ、変な振り方をしたものだな。

「ま、そういうことだ」

 それだけ言って猛は教室を出て行った。

「………猛……」

 これから昼飯なのにどこに行く気だ?お弁当の包みを出してトイレにでも行く気か?



――――――



 その日、自宅でいつものように料理をしていた。ちなみに献立は肉じゃがとお味噌汁だ。お味噌汁という話題を振るとあなたは白か赤か?と尋ねてくる人がいたりする。ちなみにうちは大体赤味噌を使用しており、白味噌の味噌汁はめったに食べなかったりする。一度は挑戦してみたいのだが……

「白味噌なんて絶対嫌。そんなの作るなら出て行くから」

「……」

 いるんだよなぁ、こんな人が……カレーにソースかけただけで離婚したりとそんなことで熱くなっちゃう。嫌になっちゃう。

 そういうわけで悠子がいる限りはずっと赤味噌であろう。聞いた話だが由美子ちゃんは白のほうが好きだそうだ。

「♪〜」

「ご機嫌ね?」

「そうかな?」

 隣で肉じゃがの味を見ている悠子がそんなことを聞いてきた。

「何かいいことでもあった?」

「いいや、別に何もなかったよ」

「そう、幸せなものね」

「?」

 一つため息をついて悠子がこっちを見るが理由がわからないので首を傾げてしまう。そんなやり取りをしていると自宅電話が鳴り出した。

「ごめん、とってくれないかな?」

「わかったわ」

 受話器を耳に当て、二、三語言葉を相手と交わす。うん、味噌汁のほうはまぁまぁの出来だ。

 その間にどうやら相手の用も終わったようで悠子が戻ってきた。

「誰だった?」

「父さんから。一緒にご飯を食べに行こうって」

「……そっか、じゃあ悠子行ってきなよ」

 少々残念だが仕方ない話だ。親子水入らずでたまには食事をしてくるといい……いや、今じゃ僕の父でもあるんだけどねぇ……心の中でいまだ整理がついてないのだ。

「違うわよ、お兄さんと一緒に食べたいんだって……ほら、お兄さんって中学生のころからなんだか避けてたじゃない?」

 どうやらあちらさんの要望は悠子ではなく僕のようだ……しかも、避けてると悠子に言われてしまった。

「別に避けてないよ?」

「避けてたわよっ!!」

「……」

 悠子が大きな声を出したので驚いてしまった。ぼさっと悠子を見ていると怒鳴った悠子ははっとなり口に手を当てた。

 以前から気になっていたことが一つあったので僕は口にしてみることにした。

「……ねぇ、何で悠子は僕を生んだ母さんと仲がいいの?」

「家族だから」

「……」

 至極当然な答えだ。だが、僕は首をかしげるしかできない。理解ができないのだ。

「……僕には無理そうだよ」

「どうして?私とだって……仲良くなれたじゃない」

「そうだけどさ……」

 懇願するような顔を悠子が僕に見せた。初めて見せたその表情がどうにも脳裏から離れてくれようとしない。

「……お願い、父さんと一回でいいから話して」

「……わかった、わかったけどこの質問に答えて」

「何?」

「……もう一度聞くよ、僕を生んだ母さんと悠子は仲がいいの?」

 少しの沈黙、少しの不愉快。ちらりと僕を見た後にエプロンをはずしてテーブルへと座る。普通は拒絶するはずなのだ……見ず知らず、今日からあなたの親だといわれてはいそうですかとうなずくなんてばかげている……とまでは行かないが頭の中じゃ僕は理解ができない。

「……今のお母さん、お兄さんを生んだ花江さんと仲がいいのは当然よ……お母さんの職業は何かわかってる?」

 もちろんそんなの知っている。

「……小学校の先生」

「そう、そして私を三年間受け持って相談だって聞いてくれた。あの人がいるから今のわたしがいるといっても過言じゃないかもしれない……だから仲がいいのよ……どうってことない、これで満足?」

「……うん」

 淡く笑って悠子はケータイへと手を伸ばす。

「今から、行って」

「……え?今日?」

「うん」

 急すぎる。あったことなんて十回以下で話した回数はさらに少ないのだ。

「肉じゃがと味噌汁は私が片付けておくからさ」

 心の中にあるのは形にできない、言葉にしがたい、そんな代物。陳腐な言葉で飾るなら、拒否反応だ。

「……ごめん、悪いけど悠子もついてきてくれる?」

「え?」

 驚く悠子に頭を下げた。

「情けないけどさ、僕だけいっても意味がない気がする……来るのは母さんも入ってるの?」

「ううん、父さんとお兄さんだけ」

 一対一……父と息子の対談でもしたほうがいいときっと言ったに違いない。あの人はおせっかいだからなぁ……

「なんだか話の内容がなさそうだし」

「……わかったわ」

 肉じゃがはさて、どうしたものかと思ったがお隣の東結さんに渡すことにした。食費が浮いたと笑っていたのでよかった……。


高校一年生はさわりです、そして高校二年生が一番楽しめます。三年生になると進路の話がかかわってきて神経質になりいろいろと問題を起こすものなのです。夢を見たいのですが高校生ではさすがに自分の限界をすでに知っていたりします。そういうわけで結局のところは夢をあきらめざる終えません。雨月の夢?雨月の夢は面白い小説を書くことでしたよ?結果はいまいち手ごたえのないものばかりでした……次回、父親と霧之助がファミレスにて対談します。

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