第八十話◆
第八十話
僕と百合ちゃんを図書館か連れ出してそのまま屋上へと連れて行った。
「……うちのお兄さんに変なことをさせないで」
「はぁ?」
百合ちゃんが悠子を驚いたように見ている。悠子の視線は厳しく、僕はひやひやとした感じでそのやり取りを見ていた。
「お兄さんが変なことをしていたらとめてくれそうだって思ってたけど間違いだったみたい。普通はあんな覗きなんてさせないでしょ」
「私は別に覗きなんてさせてない」
百合ちゃんがそういうが悠子の視線は冷ややか。僕をちらりと一瞥すると鋭くにらんだ。
「……お兄さん、あれはとても大切なことだから好奇な目でみちゃ駄目。わかった?」
「ごめん、今後は気をつけるよ」
これ以上悠子を怒らせるようなことはしたくなかったので素直に謝っておく。
「さ、もう今日は帰ろう」
「うん……じゃあね、百合ちゃん」
百合ちゃんに手を上げて帰ろうとしたのだが、右手が掴まれる。
その目が燃えていた。
「……変なこと、それはお前が決めてることだろ?別に私はあれが変なこととはおもっちゃいない」
ぐっと僕を引き寄せて悠子を指差す。
「お前がただ単に決めてるだけだろ」
悠子はにやりと笑って僕の左手を引っ張りなおした。
「……それ、自分で言って変だなって気がつかなかった?それじゃ、主観的な話にしかなってない。逆を言わせて貰えばあなたもただ単に変じゃないって決めてるだけでしょ?」
「うぐぅ」
悠子に言われて黙り込む百合ちゃん。だが、手を離そうとはしてくれない。
「……ま、まぁまぁ、けんかはよくないよ」
「お兄さんはどう考えてる?自分の行動をさ」
「……お前は間違っちゃいないぞ」
「えーと、僕は……」
両者がぐっと掴んでいる腕が痛くなってきた……だが、困ったことにまだ離してくれる気はなさそうである。
「その場その場で、その、対処をしたほうが……」
「「どっち?」」
「……」
ああ、なんだか地獄だ。
ほとほと困りかけているとそこに救世主がやってきてくれた。
「……姉さん、何してるの?」
「雪……」
雪ちゃんが頭にはてなマークを出しながら百合ちゃんを見ている。
「今日は母さんと会う日だからほら、帰ろう」
「……そっか、そうだった……じゃあな、霧之助と間山悠子」
それだけ言って名残惜しそうだったが僕の手を離した。悠子は僕を隠すようにして百合ちゃんをいまだにらみつけてる。雪ちゃんは僕に頭を下げて先に屋上を出て行き、百合ちゃんはもう一度だけ僕に手を振った。
完全に二人の後姿が消えたことを確認して悠子は一つため息をついた。
「……帰ろう、お兄さん」
「え?あ、ああ、うん」
悠子に手を引かれて僕たちも屋上を後にしたのだった。
――――――
「私、威圧的な態度をとる人が大嫌い」
ぼそりと帰宅途中悠子がそういった。
「威圧的な態度?」
「……そう、あの宮川百合とかそういった人。しかも上から目線だから」
そりゃまぁ、あっちのほうが同級生だが先輩だ。飛び級した悠子にいたっては二歳年上になるのである。
夕日を見つめながら悠子はふとこちらを振り返った。
「……けどさ、お兄さんの友達だから黙ってみてる。お兄さんが楽しそうにしてるし、本当にうれしそう…」
それだけ言ってまた前を見る。
「ん〜そっか、周りからはそう見えてるんだ」
「違うの?」
「違いないんだけどね……」
「……図書館で告白してたあの子さ、私のクラスの子」
そういってぽつりぽつりと悠子は話し始めたのだった。
「……ほら、この前の文化祭のときにお兄さんたちのクラスは演劇やってたでしょ?」
「うん、やったねぇ……あれで停学になったんだっけ?」
「そう、それでなんだか一目ぼれって言うか初めてあの人を見たって言ってた。それから勉強とかも手がつけられなくて大変だって言ったから私がラブレター書いて出したらって言ったのよ。それで、今日そうなったわけ」
なるほど、ラブレターは悠子の入れ知恵……もとより、誰もが考えることだろう。まぁ、最近じゃめっきり少なくなったはずだろうけど。
「……」
それ以上は何も語らず、僕と悠子は連なって歩いて帰るだけだった。
どうでもいいことだが、こんな僕らを他の人が見たらどう見えるのだろうか?恋人?それとも兄妹?
起爆剤入れっぱなしの雨月です。このままいくと音速を超える可能性が出てきました……嘘です、ごめんなさい。まぁ、とにもかくにも八十話。お暇なときに読まれていると幸いなのですがここで一つ気がつきました……あらすじがいまいちだ。内容がうまく表現できていない気がしてなりません……それならばやっぱり考えたほうがいいということであらすじを変える予定です。ああ、余談ですがモンハント○イ、オンのほうもハンターG装備で乗り切れました。さて、この話題は流していただいて今後の展開でだいぶ変わってきてしまいます。最近影の薄かったあの人も登場するかも……しれませんよ?