第七十二話◆
第七十二話
僕は風邪で数日休んだ後、学校に行くのが嫌いだった。
なぜかって?そりゃ、よぉ、久しぶりだなって言われるのが嫌いだからさ。
一週間とちょっとを学校だが他の生徒とは違うところで過ごした僕と猛に対してきっとクラスはいつもと違った態度をとるのだろう。朝、みんなの好奇の目にさらされるのがいやなのだ。僕はシャイだからそんなことをされてしまうととろけてしまう。
「……おはよ〜」
しかし、それは遅れていくから間違いなのだ。誰よりもはやく、学校へきてしまえばそんなことを言われるはずない……
「や、おはよう」
右手をしゅたっとあげてそんなことを言ってくれる隣人さん。朝日を受けてそんな百合さんが珍しく、そう、珍しく輝いて見えた。
「百合さん!?珍しく早いですね?」
「何言ってんの?ここ一週間ずっとこの時間帯……ああ、そういえば行き過ぎたパフォーマンスしたから停学食らってたんだっけ?……まぁ、知っているとは思うけどそのおかげで私たちのクラスは優勝できたんだからよかったんだけどね。」
にっこり笑ってそういった百合さんだったがなんだか不満そうでもある。
「……けどなぁ、そういうことには一枚かませてくれたっていいだろ?私たち、親友じゃないか?」
「ま、まぁ、話が急だったし東結さんが発起人だからさ」
「……なるほど、そりゃ噛まなくてよかったよかった」
肩をぽんぽんとたたかれてふと、その手が止まった。不思議に思って百合さんのほうを見たのだが窓の外を、校庭をずっと見ているようだ。
「……この一週間、寂しかったぞ。まさかお前がいないだけでここまで寂しくなるなんて情けないぐらい……ケータイだって結構連絡入れたんだけど?」
ケータイは残念ながら両親に取り上げられていたのだ。いや、今も取り上げられている。自宅からかけてもよかったのだがあいにく、百合さんのケータイの番号を暗記でいえるほど記憶力はよろしくないほうなのだ。
「ごめんね、ケータイは取りあげられてたから……今もだけどね」
「………家まで行ったぞ」
「実家に帰ってたからさ」
「……そっか、そりゃ仕方ないな」
百合さんがこっちを見てくれる。心なしか、涙を流していたような……気がしないでもない。
「おかえり、霧之助」
「……ありがと、百合さん」
「おいおい、お前そこは『ただいま、百合ちゃん』だろ?」
「百合……ちゃん?」
爆弾を放り投げられたような薄ら寒い感じを覚える。じっと百合さんを凝視しているとこいつ、わかってねぇな?みたいな顔をされる。
「あのな、これだけ人を心配させて何だ?『さん』から『ちゃん』に変えることも許されないのか?」
「え?『さん』より『ちゃん』のほうが百合さん的にはいいの?」
「良いに決まってるだろ、バカ。それに、他の連中もあの文化祭から私のことを『百合さん』って呼ぶからな。判別がつかない」
「そ、そうなんだ……でも何か違和感が……」
「あ〜……それならほれ、練習あるのみ!練習すれば人は何でもできる」
練習すれば何でもできるというのなら誰だって選挙に受かる練習をするさ。
「百合……ちゃ……さん」
「駄目、もう一回」
「百合ちゃん……おえっ!駄目!無理!!僕にはこのちょっとした変化すら身体が受け付けなくて拒否反応が……蕁麻疹が!……うがっ!?」
竹刀を片手に持っている百合さんが地獄に住む悪魔に見えて仕方がなかった。
――――――――
「うぉ、霧之助……お前もしかして仕返しにあったのか?」
「……違うさ、くすん、百合ちゃんの私刑にあっただけさ」
「そっか……ん?何かおかしくないか?」
「突っ込まないで!これ以上突っ込むと僕の身体に蕁麻疹が……ぐはっぁ!?」
「……霧之助、いっぺん地獄を見たいようだな?」
「一回みましたから!生きている間に地獄を体感しましたから!」
「あ、百合さんおはよ〜」
「ああ、おはよう」
「百合さん、今日も元気っすね」
「私はいつでも元気だよ」
文化祭で百合さんさえも友達ができたようだ。
「あ、お前今失礼なこと考えただろ!?」
「考えてませんからっ!!!」
竹刀を振り回しながら追いかける百合ちゃんをみてなんとなくだが既視感を感じて懐かしいなぁと思った。
そして、僕の後頭部に直撃する痛みにも、既視感を覚えちゃったりした。
評価欄に書かれていることを参考に小説読んでます。ん?一体全体どうしたんだ?と思うかもしれませんが、とある完結された小説の評価欄をみたらまぁ、あまり芳しくなかったのですよ。今現在お二人の方がその小説を評価なさっていたのですがものすごくしっかりとした評価をしてましたのでああ、自分もこんな風に批評できたらいいなぁと思っていたわけです。いずれこの小説も突っ込まれるかも……そんな不安を胸に今も続けてます。では、いつものように感想、評価その他もろもろありましたらぜひ、雨月にご報告してください。九月七日月、八月二十分雨月。