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第七十一話◆

第七十一話

「で、霧之助……お前は一体全体何をしているんだ?」

「何って……拷問だよ?」

 猛もおかしなことをいう……身体を縛ってへその上にカブトムシをおかれるのがどれだけ苦痛か知らないからそんなことをいえるのだ。

「……いや、それ拷問っていわねぇから」

「じゃあ、何ていうんだよ?」

「強いて言うなら罰ゲームだ」

「じゃあ、鼻をザリガニではさむ、もしくはクワガタではさむ」

「……それも罰ゲームだよ」

 猛にそういわれては仕方ない。そういうわけで哀れな不良三人組を開放してやる。

「で、何でお前は拷問なんてしてるんだ?」

「聞いてなかったの?こいつら、悠子にまで手を出そうとしてたんだよ……だからさ、二度とそんな気を起こさないようにしようとしてただけだから」

 悠子にまで何かちょっかいを出し始めるというのなら、ただで返してあげるほど僕は優しくない……というより、僕自身が厳しさの塊、ヴァッファリンの逆成分でできているのである。

 猛は縛られている三人の縄を解きながら相手に同情した感じで話しかけている。

「よかったな、お前ら……霧之助が優しいやつでよ……それより、俺たち五人、全員これから校長室にむかわねぇといけねぇ」

「……ばれちゃったの?」

 猛はどうでもよさそうにうなずく。

「ああ、だから俺はお前らをつれてくるように言われた。逃げ出そうとするのなら退学決定だそうだ……そういうわけで、お前らも行くぞ」

 ほら、さっさと歩けよつっけんどんに不良を押す。もう何もする気がないのだろうか?不良たちは一言もしゃべらずに黙ったままついてくる。



―――――――



「君たちは三沢高校の人たちだね?」

 僕らの高校の校長は若い。四十後半、下手したらクラスの担任教師より若いかもしれない。頭もはげていないし、柔和そうなイメージを与える校長だ。

「……ああ、そうだよ」

 不良生徒一人が代表して涙でしゃくりあげながらそういう。他の不良はまだ泣いていた。

「よろしい、それで……君たち二人は私の高校の生徒だろう?」

「ええ、そうです。俺は一年生の黄銅猛です」

「僕は間山霧之助です」

 僕の名前が出ると校長先生は一つ首をかしげた。

「……間山?間山霧之助君は……間山悠子君のお兄さんだろう?」

「ええ、そうです」

 隠すどころか、そのこと自体校長先生は知っているだろう。

「いやぁ、実に間山悠子君はすばらしい生徒だな。模範的な態度、オール百点はもちろんのことわが高校の鏡だ……君とは血がつながっていないが、君も十分成績がいい……それに素行もそれまで悪くないはずだ。だが、何故こんなことを?」

 すっと細められるまん丸の目は僕だけを捉えていた。鋭く、そしてどこまでも真摯なその目つきがおっさんのものとは思えない。

 さて、どうしたものだろうか……ここで嘘をいってもいいのだが……それでは根本的解決にはならず、繰り返し問題を起こしてしまいそうな気がした。

「……実は……」

 僕は洗いざらいこれまでの経緯を校長先生へと話したのだった。



―――――――



「しっかしまぁ、お互い停学を食らうとは思わなかったな」

「ああ、そうだね……けど、あの校長先生結構譲歩してくれたほうじゃないの?府警が見ているなかでの暴力事件。それを不問にした上に僕らのクラスを一位にしてくれたんだからさ」

「あっちはあっちで停学らしいから双方痛みわけって事だろうな」

 文化祭は幕を閉じ、あれから二日たった。僕らは生徒指導室にて雑談しながら反省文五枚にこれまでの復習プリントなどをやっている。学校にいるまは教室棟にはいってはならず、他の生徒と昼休みに遊んではいけないのである……そんなことを生活指導の先生に言われた。

「っと、今日もようやく終わりだねぇ〜……」

「ああ、そうだな……んじゃま、帰るか?」

 立ち上がってかばんに教科書などをまとめる。復讐プリントは結構難しいので何か参考になるものがないと溶けないような代物ばかりだ。こんなものを毎日といていたらきっと次の中間テストで結構いい点を採れるに違いない。



―――――――



 夕方、僕らが学校を出るころには他の生徒はいない。彼らより帰宅時間が遅いのは停学生だからだろう……昔は家にいるだけかと思っていたんだけどいざ喰らってみるとそうじゃないんだなぁと思う。

「で、これからお前は電車を乗り継いでお母さんとお父さんが待っているマンションだろ?」

「ああ、片道三十分程度だよ……母さんが世話を焼いて仕方ない」

「ははは、お前の母親らしいな、おせっかい」

「……誰がおせっかいだよ、誰が!」

 少しだけ人より世話好きなだけだ。

 夏は終わったといっても残暑は厳しい。夕焼けだってまだこの時間帯に完全に沈むことはないのである。

「悠子ちゃんとは会ってないんだろ?」

「ああ、そうだね」

 そこまで話を進めるが猛と別れる道にやってきた。

「……ちゃんと話したのか?あのころの女の子は気をつけてないと何するかわからないぞ」

「何怖いこといっちゃってるのさ?」

「ちゃんと連絡入れてやれよ」

「わかったよ!じゃあまた明日!」

「ああ、またな」

 おせっかいはあっちだ。そんなことを思って後ろを振り返る。

「……悠子」

「お兄さん、遅くなるときはちゃんと連絡してって言ったじゃない。ちょっと連絡するのが遅すぎなんじゃないの?」

「で、その荷物は?」

 そっぽを向いて夕焼けのかなたを見つめている。

「……私が一人暮らししても……掃除だってお兄さんみたいにうまくできないし、料理だってまだうまくできない……そんな非効率的な一人暮らしなんてしないわよ。だから、ちょっとの間だけ、お兄さんがあっちにいなきゃいけない時間だけ私もあそこから学校に通うことにしたの」

「……悠子……ごめんね」

 ツンッと夕焼けのほうを見ながら悠子はまだ話し続ける。

「……謝ったって許さない。一緒に住んでるんだから……もうちょっとうまくやる方法だってあるはずだった」

「ごめんね」

「謝らないでよ……もうお兄さんたちのことをうわさしている人たちなんていっぱいいるんだから」

「……もしかして迷惑かけてる?」

 不良の妹、危険な存在……とまでは言わないが、前者はちょっとしたハンデになってしまうかもしれない。友達だって悠子は少ないはずだし……悠がいるが、あの子だってそこまで悠子とは仲がいいのか悪いのかわからない子だ。

「……迷惑かけすぎよ!いちいち話しかけられてどんなやつだ、とか、私のことを記いたしてくるんだから……挨拶だって今日もされたし……これまでは無言だったのに」

 それを聞いてほっとした……案の定これまで打ち解けていなかったらしい。打ち解けたというのならこのまま友人が多くはないが少なくとも二、三人はできることだろう。

「……あはは……ごめんね」

「笑い事じゃないっ!!」

 夕焼けに怒る悠子がなんだかバカみたいに思えて笑いをこらえることができず、僕は腹を抱えて笑ってしまった。


後書きなんてきっと読んでいない方のほうが大いに違いありません。ああ、なんでこの人はこうも後書きにて愚痴ばっかりこぼしてるんだ?と首をかしげるかたも多いかもしれません。いいじゃないですか、後書きで愚痴をこぼさないでどこでこぼすんです?きっとここなら法律に引っかかるようなことを言っても誰にもばれやしませんよ♪たとえば……まぁ、もちろんいえませんけどね。さて、感想をもらうのがものすごく大好きなのは知っての通りですがやっぱり小説書いてるんで話が一人歩きして綺麗にまとまったときもうれしいものなんですよ。ほのぼの系なのかいまだ謎は残りますけどね。大体、以前読んだ某小説の終わりが一週間ぐらい引きずるほど鬱エンドだったためにこの小説のハッピーエンドを書きたいと思ってここにやってきましたし。どなたか書いてくれませんかねぇ?そんな幸せな話。雨月の才能じゃちょっとどころかだいぶ難しいかもしれないですから。

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