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第七十話◆

第七十話

「おらぁ!間山霧之助ってやつ、出て来い!出てこねぇとお前の妹、どうなるかわかってるのかぁ?」

 木刀を持ち、いかにも悪そうな風体の不良が三人僕らの教室へと乗り込んでいく。それを僕らは前のほうから見ているために入れ替わりといった状況だ。今、妹がどうのこうのと聞こえた気がする。

「よっしゃあ、行くぜ!」

「うん!」

 しめられていた扉を猛が思い切り開けはなつ!

「やぁやぁやぁ!鬼が島にはこびる鬼どもを倒す桃太郎部隊とは我ら違う別働隊!」

『実は、鬼が島の中には別の部隊が入っており、ここでも激闘がくりひろげられていた!』

「ふざけやがって!」

 どう見ても鬼でもなんでもない一般人のようにしか見えないだろうが、後ろのほうの証明は一個のために完全な客席ではないここはすでに僕らのための開け放たれた場所となっていた。相手が木刀を握りなおし、こちらに向かってくる。猛が学ランを相手に投げ捨てながら台詞を言う。

「我こそは桃太郎様の子分!大空の覇者、雉さんだぜぇ!」

 大降りの木刀を軽く避けてみぞおちへ容赦のない一撃を叩き込まれる。以前、猛とけんかしてみぞおちに一撃を食らったが一発でひざが大地に着いたのはいい思い出である。

 しかしまぁ、悪いけど雉が空を飛んでいるところを僕は見たことがない。

 そして次に、東結さんが振り下ろされた木刀をわざと受ける。力が拮抗しているかのよう見せるための演出だ。

「……そして、わたくしも桃太郎様の子分であるおサルです……わたくしの棒さばき、特とその目にごらんあれ!」

 その瞬間にすばやく東結さんは動き、あごの真下に竹刀の先をぶつけ、ひるんだときに足で相手を蹴り飛ばす。相手はそのまま教室の壁に当たり倒れ、みぞおちへ竹刀の先を躊躇なく叩きつけた。

「……鬼、おそるるに足らず!」

 そして、僕……何を言うべきかと迷ったのだが、犬はあれしかないだろうということですでに猛に台詞を用意してもらっている。

「…そして僕が桃太郎様の一の子分!従順な犬だ!」

 相手の懐へ飛び込み、そのまま一本背負い。普通、柔道などは相手が怪我をしないように胸倉をきちんとつかんでおかないといけない……が、今日は手元が滑ってしまった。

「がふっ!?」

 強引に投げられ、そのまま壁に直撃。肺の中の空気が全て外に出てしまったのか呼吸がうまくできていないようである。

 三人が完全に動きを止めているうちに集まってポーズを決めてみる。

「「「我ら、桃太郎別働隊!」」」

 一個のライトに照らされる僕たち……どよめきが起こっていたようだが、拍手喝采。きっと、演技だと思っているのだろうか?

『さぁ!どうやら桃太郎たちの戦いも終わりを迎えているようです!』

 観客たちの視線が全て前に行っているうちに殴ったり、ぼこぼこにしたり、壁に投げ出したりした連中を一人ずつ抱えて廊下に逃げ出す。そして、そのまま屋上へと向かうために荷物搬入用のエレベーターへと三人を押し込んだ。そして、それに無理やり乗る。

「よかったな……どうやら動いてくれたようだ」

「ああ、そうだね」

「後は神頼みですね」

 そう、さすがの東結さんでさえこれ以上何か仕掛けを作ることは無理だ。校長先生が何か首をかしげるようなことがあれば僕らの進退は酷いものになるだろう。



―――――――



「なぁ、君たちもうこれ以上僕たちに絡んでくるのはやめてくれよ」

 屋上には僕らを除いて誰もいない。なぜなら、屋上でふざけあって落ちたという事件が以前あったそうだからだ。よって、鍵を持っていなければここにはこれず鍵は朝のうちに借りておいた。

「へっ、何が“僕”だ……お前、近所の中学で相当暴れてた奴らしいじゃねぇか?」

 苦しそうに声を出す不良。まぁ、確かに暴れたのは暴れたのだが一回しか暴れていない。きっと、事実に尾ひれや胸びれなどがついてしまったのだろう。

「あんなお遊び見てぇなことやってもよ、根本的な部分は……おれらと同じなんだよ。どれだけいい子ぶっててもよ!」

 満足したのかにやりとこちらに笑顔を向ける。東結さんがしゃべるのをやめさせようと思ったのか一歩踏み出すが僕はそれを止めた。

「……君たちと同じ……かぁ……あまり言いたくないんだけどね……同じ?いやいや、君たちのほうがまだずっとましな、まともな人間だよ……もっとも、過去の僕は過去の僕。今の僕は今の僕、だけどね。ああ、そうだ……君たちの両親の顔が見たいから家の電話番号、教えてくれるかな?」

「誰がそんなもの教えるかよ……ぐはっ!!」

「……間山霧之助さん?」

「……猛、東結さんを教室につれて行っておいてよ……僕はやることがあるから」

「……わかった。お前、無理するなよ?」

 猛はそれだけ行ってすぐに東結さんを引っ張っていった。どうやらまだ満足に動けないようだ。無理するなよ……か…無理なんてしてないと後で文句を言ってやろう。気絶した奴のポケットを全てまさぐってケータイを手に入れる。後、二つ。

 立ち上がろうとしている近くの奴の足を引っ掛けて転ばせ、笑いかける。

「ほら、君も早くケータイを出して」

「いやだ!いやだぁっ!!」

「……聞き分けのない奴だ……ああ、そういえば僕の妹をどうのこうのって……いい読経してるね?覚悟、できてるからあんなことを言ったんだよね?」

 僕の怒りはこの三人にだけ向けられているんじゃない。ここの両親がどんな連中なのか、それを僕は知りたかった。しかし、その前に妹をどうするだとか言っていた……あの言葉、忘れるわけにはいかない。


ついに七十話突破しました。実に珍しいことです。雨月の小説は基本的に短いものを単発でばんばん売っていくスタイルのため、六十以上を更新したのはこれで二回目ぐらいです。さて、若干霧之助が不良的な行動をとるんじゃないのか?と思っているあなた、次回は彼なりの拷問をやっちゃってます。これ、小さいころに作者がやられたことです。中にはやられたことがある人もいるのでは?いつものように感想と評価、のどから手が出るほどお待ちしております。九月六日日、七時三十八分雨月。

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