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第七話◆

第七話

 白衣を着た飛び級少女を見た日の昼休み、屋上へと向かう途中で何か階段の上から落ちてきた。運動なんてめったにしないので反射神経がよくても運動神経と足腰の筋肉がしょぼいのでよけれず激突。無様に尻餅をついてしまった。

「いたたた……」

「……いったぁ……」

 どうやら上から落ちてきたものは人間だったようで眼を開けて確認するとあの白衣の少女だった。

「……大丈夫?」

「大丈夫……助けてくれてありがとう」

 よろよろしながらも立ち上がり、僕が立ち上がるのにも手を貸してくれた。

「あんた、名前は?」

「あ〜僕?僕は間山霧之助。君は?」

「あたしの名前は野々村悠ののむらゆう。名前ぐらいは聞いたことあるでしょ?」

「いや、初めて聞いた」

 そう告げると悠と名乗った少女は驚いたような顔をした。

「ええっ!?飛び級してるんだよ、あたし。普通だったら飛び級してる子がいるって一度は見に行ったりしない!?」

「ああ、それはやったよ。今日だって見に行ったし……けどさ、もう一人飛び級してる子がいるから……」

 そういうとものすごく不機嫌そうな顔になる。どうやら押しちゃいけないスイッチを押してしまったようだ。

「あ〜あの間山悠子……間山?あんた、もしかしてあの子の親戚?」

「……いや、違うけど?」

 ニアピンだけどね……実は兄貴なんだよとは言わないことにした。

「そうだよね〜あんな一匹狼みたいに恐そうな性格してないし♪」

「ん、ん〜そうだね」

「同じ中学だったんだけどね、ものすご〜く恐いやつ。気をつけてね。あ、そうそう、助けてくれたことは感謝してるけどこのことは絶対にしゃべらないでね」

「え?まぁ、しゃべらないけどそりゃ何で?」

 そういうと恥ずかしそうに頭をかいてこういった。

「あたしさ〜、頭がいいとか言われてるし、実質そうなんだろうけどめっちゃにぶいわけ。家が結構御堅いからびしっとしてないといけないの。そうそう、だから間山悠子にも負けちゃ駄目だって母上も言ってたし…」

 母上……母上ねぇ……なるほど、御堅そうなところだ。そんなところに僕が住んでいたら大変なことになるだろう。きっと反感を持って家出を決行するに違いない。

 暇なのか彼女はいろいろとしゃべってくれた。

「しかもさ、周り全部年上の連中で奇異の目で見られるって言うのかな?興味はあるんだけどどうやって話しかけたらいいのかわからないって感じ。同じ扱いしたら駄目みたいな気がしているのかもしれないけどほぼ放置だよ。こうやって馬鹿みたいに白衣着て伊達眼鏡をかけて難しい本を読んでないといけないってあたしも思っちゃって……秀才ぶるのも大変だ」

「けど、その白衣似合ってるよ」

「ははっ、そっかぁ、こんなのでも似合うって言ってくれる人がいるんだぁ……」

 にこっと笑うと歳相応。本当は中学三年生だろうに飛び級でやってくるのってどんな幹事なのだろうかと首をかしげていると彼女はこっちをじっと見ていた。

「何?」

 そういうと一つため息をつかれてしまった。何かしただろうかと己の行動を振り返ってみるが何も思いつかない。

「はぁ、まぁ、いいや……助けてくれてありがとう。あのさ、また今度はなさない?あんたならなんだか気兼ねなく話せそうだし。そんな雰囲気がある」

 そうだろうか?同じ飛び級でもあの小生意気な妹は近寄ってすら来ない。

「いいよ、別に」

「んじゃまぁ、ケータイ貸して、入れてあげるから。感謝して、あんたみたいなのほほ〜んとした男子なら一生かかっても女の子と話せないでしょうし」

 残念ながら百合さんの番号とアドレスがとっくに入っている。知ってかしら知らずかそのままケータイを何回か操作して手渡された。

「じゃあね」

 それだけ言って階段を駆け下りていってしまった。また、こけてしまったら笑うしかないんだけどなぁ……

 自分が何故上に行かなくては行けなかったのか思い出せず、まぁ、どうせろくな用事じゃなかったんだろうと思いなおして下りることにした。

「う〜ん、何で上に行こうとしたんだっけ?」

 用事を思い出したのはその日の夜、猛からメールがきてから。ああ、そういえば百合さんのことを聞くためだったかと一人納得した。


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