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第六十九話◆

第六十九話

 猛の分も作るといったのだがどうやら用事があるようで帰ってしまった。しょうがないので悠子が帰ってくるまで待っておくことにする。もしかしたら眠っているかもしれないと思い、悠子の部屋を開ける。

「……悠子?」

 電気はつけられておらず、どうやら居ないようだ。そう思って出ようと思ったのが物音が聞こえて固まってしまった。

 まさか、実はこの部屋……以前血なまぐさいことがあってここで死んだ誰かの霊が出てくるのではないか?そんな想像をしてしまったのだがどうせ嘘だろう。

「……ん?お兄ちゃん……」

「悠子、寝てたのか……」

「ん、ん……朝……?」

 悠子ちゃんは寝ぼけていらっしゃるようだ……目を眠たそうにこすってボーっとこっちを見ている。焦点が合っておらず、ぼけっと僕を見ている。

「悠子、夕飯できたよ」

「ん……うん、わかった」

 こんなに寝起きが素直だっただろうかと思いながら悠子の部屋を後にする。

毎朝入っているので何の変哲もないはずの部屋……そのはずなんだけど暗いだけだったらものすごく孤独感に襲われる。子どものころに押入れに入れられて何が怖かったというと一人になるのが怖かった。暗がりには何が潜んでいるのかわからないという怖さと、視界の悪さによってこの空間に他の人はいるのか?という孤独を誘う怖さがある。

「……どうしたの?」

「あ、いや……別になんでもないよ」

 悠子に急かされて部屋を出ることにする。その後、悠子はまだ寝たりないのかシャワーを浴びてすぐに寝たようである。まぁ、明日本番だし。



――――――――



「よっしゃ!皆さん元気はいいですかぁ?」

「「「「いぇーい!!」」」」

 四十人近くの高校生が右手を前に出して円陣を組む。そんな光景を担任教師がほほえましそうに見ている。

「この日がとうとうやってきました!」

「「「「お・う・どう!お・う・どう!!」」」」

「一位を目指してがんばりましょう!!」

「「「「よっしゃぁぁあ!!」」」」

 こうして、僕らの始めての文化祭は幕を開けたのである。



―――――――――



 基本的に半分以上のクラスメートたちには役がある。ぼさっと突っ立てる役の木だって常に動いていなければならず、下手をしたら桃太郎よりも目立つかもしれない。

 役をもらえなかった僕はちょうど桃から生まれた百合桃太郎を見ている。猛が言うにはどうも僕は芝居が下手らしい。大根はおとなしく土に埋まっているようにといわれてしまったので照明の仕事をもらっていたりするのだがその証明もまた別の人がとってしまったおかげで僕の出番は表上は、なくなってしまっている。

「順調のようだな」

「そうだね」

 現場監督である猛とともにステージを眺める。客入りも上々のようでとりあえず四十近くあった椅子に全ての人が腰掛けている。始まったばかりなのか、すでに面白いのかわからないがとりあえずあくびをしている人は居ないようだ。

「……校長先生もきてるよ」

「よしよし、そこは高得点だな……後は俺たちの練習の成果をどう判断してくれるかで結果が分かれる」

「……そうだね。だけどさ、まだ僕らにはやらなきゃいけない……いや、まだ絶対にとは限らないけどそれがあるって頭に入れておいてよ」

「わかってるよ。穏便に済ませるにはバカらしいがこれが一番良好だろうしな……で、あの人はちゃんと客席にいるのか?」

 客席を確認してみたのだがあの人の姿はみえない。暗くはなっているが、目に自信はある。

「……いないみたい」

「……まずいな、それじゃあ人数が足りないぜ?」

「誰かお探しですか?」

「「!?」」

 役者控え室(女子)の幕が上がって中から東結さんが現れた。かわいらしい全身サルのスーツを纏っている。かわいいが、腹の奥からにじみ出ているような危ないオーラがそのかわいらしさを一種の腹黒さへと変えているようだった。

「お二人は準備、できているのですか?」

「ええ、まぁ……学生服の下に着てますけど……いつ、ここにきたんですか?」

「先ほど……しかし、防犯上ちゃんとしてないといけないのでは?控え室は若干暗すぎましたよ。誰も居ませんでしたし、貴重品の管理がおろそかになりすぎてはいませんか?」

 首をかしげているのだがそれに関しては大丈夫である。財布はそれぞれがちゃんと管理しているはずだ。大体、そんなところにおいているはずがない。

「しかし……僕らの役が回ってくるのだけは避けたいですね」

「……どうでしょうか?先ほど聞いたのですが不良っぽい三人組がここに向かっているそうですよ?このまま行くとちょうど……なんてこともあるかもしれません」

 実に面白そうに、実に楽しそうに彼女は笑う。猛は目をつぶって黙ってしまったので僕が必然的に彼女の相手をしなければならない。

「……狙ってやってません?」

「狙った……まぁ、人によってはそう思うかもしれません。第一、わたくしの手にかかればあのような方々どうにでもできますからね……しかし、悪者が何も悪いことをせずにつかまることなど殆どありえませんし、何も悪いことをしていない連中を捕まえてしまっては意味がありません。反省させる意味として、そして、わたくしとそこで目をつぶっている監督さん、間山霧之助さんが起こした不祥事を劇に組み込むことが最善の策だとわたくしは思いますよ」

 それが正しいのかわからないが、この人を今現在論破できるほど僕は賢くなかった。そういうわけで、黙って聞いておく振りをして、舞台を見ることにする。そういえば、百合さんはここに東結さんがいることに気がついていないんだなぁ。

 何事もなく、平和に話はすすんで行き……とうとう鬼が島の部分。

「桃太郎さん……裏門爆破、成功しましたぜ?」

「……ご苦労、これより鬼が島を陥落させる!ついて来い!」

 ちょうどいい場面だな……そう思ったとき、東結さんに手を引かれた。

「……さて、そろそろわたくしたちの準備のようです」

「……ナレーター、俺が声を上げたらこの台本よろしくな……この台本終わってからいつもの奴を読んでくれ」

「え?ああ、わかった……さすが黄銅。隠しだまを用意してたか……」

 マイクを持っている男子生徒に台本を渡して、僕と東結さんと共に教室を出る。


次回、本当は最終回のはずでした。結果を先に言っちゃいますと霧之助が屋上から飛び降りて死んでしまうというラストというものです。何故、死んじゃったかはおいておくとしましょう。いずれ、投稿するかもしれませんから。さて、小説に分かれ道があるように人生にも分かれ道なんてたくさんあります。今日絶対提出なのにそれをわざと忘れてしまうなど、意外と選択権はあるものですよ。以前、そういった小説を書こうとしましたがキリがないというか、手に負えない代物になりました。よって、挫折。今もやろうとは一切思いません。そういうわけで、へたれな作者ですがこれからもよろしくお願いします。追伸、とうとう上位に行きました。ジョーさんが強くて強くてペッコのときに必ずといっていいほど奴はやってきます。

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