第六十六話◆
第六十六話
あの中途半端桃太郎の原案をまったくいじることなく奴は話を進めている。現場監督となって小物を作成している場所へと近づいていき、昨日東結さんから聞いた話をすることにした。
「おいおい、それはお前の私事だろ?俺に回すなよ」
「勘違いしないでよ、僕は一応言っておこうって思っただけだから」
「それで?謝ってくるのか?」
にやりとする猛に僕は首をすくめるだけにする。まだ少しだけ時間がある。それに、間違ったことをしたなんておもっちゃいない。
黙っていると猛は見事な裁縫スキルを僕に見せつけながら桃太郎の衣装を仕上げていく。どうよどうよ?といったその視線がいちいち僕を逆なでする。はん!僕だって雑巾ぐらい自分で作れるぐらいの技能はあるさ!
「ま、お前の好きにすればいいさ」
「言われなくてもその通りにするよ」
「そういや、百合さんがお前を探してたぞ」
「僕を?」
百合さんの姿を探してみるもどこにもいない。
「どこにいるのかわかる?」
「劇出る連中はここで練習してないだろ。いつもの場所だよ」
「そっか」
いつも練習している場所は地下にある多目的ルームだ。教室より若干でかい部屋が四箇所ある。
その場所へと向かう途中、探していた百合さんがタオルで汗を拭きながら歩いてきたのだった。
「ああ、ちょうど霧之助を探していたところだ」
「そっか。まぁ、僕もそうなんだけどね」
廊下には他にも文化祭の準備をしていると思われるほかの生徒がうろうろしており、放課後もあいまってか帰宅生徒たちも帰路についている途中だった。ここでは邪魔になるので食堂へと移動する。
食堂は下手したらよる九時まで開いており、部活が終わった一人暮らしの生徒たちのために晩御飯を出したりしている。よって、夕方といっても人の出入りが絶えない。人がいても座れないというわけではないので開いている席を二つ見つけて座る。
「で、どうしたの?」
話はあったのだがどうやって切り出そうか……そんな感じが見え見えだった。しかも、それを隠そうと平静を装っているのである。
「あぁ、なんだか知らないけど……実は雪がおかしいんだ」
「雪ちゃんがおかしい?」
それはいつものことではないだろうか?きっとあの子の頭の中は姉である百合さんのことでいっぱいなんだろうし。
「どこが?昨日も電話したけどそんなにおかしいって事はない気がするけど?」
首をかしげながら百合さんは症状を話し始める。
「うーん、なんだかぼけーっと考えたり、話しかけても上の空なんだよ」
腕を組んでそんなことを言う。首を傾げるしかない、僕も。
「こんなことさ、医者と霧之助に話すしかないし」
まず医者に話したのだろうか?ものすごくそこが不安である。とにかく、実際に雪ちゃんにあって様子を確かめたほうがいいだろう。
「それで、雪ちゃんは今どこに?」
「それがさ、今日学校に来てなくて……朝、起こしに行ったら熱がでてたからそのまま休ませたんだよ」
若干しょんぼりとした調子でそんなことを言う。そして、何かを期待するような目を僕に向ける……それが何なのかぜんぜんわからないのだが……誰かが病気だ、それならお見舞いが必要であろう。
「じゃ、百合さんの家に行っていいかな?お見舞いしたいから」
「そっか、きてくれるか……わざわざ悪い」
「いや、いいよ。気にしないで」
逆に邪魔になるのかもしれないけどとは言わないでおいた。しかし、あの雪ちゃんに姉にも隠すようなことがあるのだろうか?
杞憂に済めばいいんだけどなぁと思いながらもお見舞いには何を持っていくべきかと考える。
「……やっぱり、無難なところでフルーツかな?」
「いや、お見舞いには来てくれるだけでいいから……今から大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
そういった事情で僕は初めて百合さんの家へと向かうことになったのだった。
今日も一日お疲れ様ですと自分に言いたい気分です。いや、何をしていたのかといわれましたら特に何もしていないんですけどね。けどまぁ、たまには自分にご苦労様というのもいいのかもしれません。自分を適度に大切にしないといけませんからね。今のところ、バッドエンドとなってしまったハッピーエンドは何処ですか?を特別編としていつか投稿したいと思っています。そのときはきちんとバッドエンドと表記しますので読みたくない人は読まなくていいです。さて、ここで一つ提案なのですがラストへむけ、一体全体誰がメインヒロインなのか、というより誰が人気なのか知りたくもあります。メインヒロインは悠子だとか言ったかもしれませんが一切気にしないでください。どんな方法でもいいので教えていただけたらいいなぁと思っています。というより、もしも来ちゃった場合はENDが変わります。では、次回もお楽しみに?