第五十八話◆
第五十八話
昼休み……みんなは昼休みをどういった位置づけにしているだろうか?昼食を食べる時間、ふざける時間、予習(他人のノートを見せてもらう)時間、彼氏や彼女といちゃつく時間、ぱしられる時間……そんないろいろ使う人もいるかもしれない。
そんなことを言う僕もその中の一つだ。え?理屈っぽい?
「霧之助ぼーっとしないでもう一回!」
「……ヴぇえっ?もう一回もやるの?やるのはいいけど悠は暑くないの?」
夏休みは終わった、だが、まだ気温的には夏だ。太陽があの蒼空てっぺんあたりを降下している間は誰がなんと言おうと熱い。お天気お姉さんが言おうと、地球の外を回る機器がなんと言おうとそうなのだ。
きっと、他の人が見たらこの暑さの中にもかかわらず二人でいちゃいちゃしている痛いカップルだと思われかねない。今すぐにでも屋上から助走をつけて隣のプールにダイブしたい。
――――――――――
『ゆ、悠……僕は……君の事を好きなんだ。付き合ってくれないか?』
『……ごめんね、あたし好きな人がいるから無理なの!』
―――――――――
「うん、悠……完璧だよ」
汗を惜しむことなく流しながら親指を立てる。悠もつらそうな顔をしながら親指を立てて笑った。
「よ……かった……」
そのままフラフラ身体を動かしながら横へと倒れそうになる。
「え?悠?」
慌てて支えてゆすってみるが反応はない。頭の中が熱といやなサプライズでいっぱいいっぱいになった。これが縁起だったら悠には主演女優賞をあげたい。
「そんなことよりっ!!」
急いで悠を保健室へと運ばなければならない!こういったものが時間との勝負だと考えている僕は悠を背負って保健室を目指すことにした。
――――――――
「ああ、普通に熱中症だね」
「そうですか……」
「後は任せて教室に戻りなさい。もう五時間目が始まるから」
「あ、はい……」
頭の中をぐわんぐわんという音がぐるぐる駆け巡っていたが悠を保健室につれてきて先生の話を聞いているときが最高潮だった。ふとした気の緩みに漬け込まれ、僕の意識がすっと遠のいていってしまった。
先生がおい、君!?と叫んでいる気がしたが……夢かもしれない。
全てがどうでもよくなった、そんな感じが押さえられず静かに目を閉じる。ただただ、ひんやりとした保健室の床が気持ちよくて仕方がなかった。
苦痛がなければ快楽は生まれない。
変な聞こえかもしれないがこれはきっとずっと幸せが続いてしまったらそれは幸せではない普通のことになってしまうってことかもしれない。