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第五十五話◆

第五十五話

「間山君、この前のお礼をしにきたよ……何?どうしたの?頭を押さえて……」

「……んっん〜……気にしないで。自業自得っていうか、まぁ……」

 簡単な私刑だから。

 洋一郎と美月がともに狭い玄関に立っており、その手には比較的高いことで有名なお菓子店の袋が握られている。

「まぁ、上がってよ……先客がいるけど」

「先客?ああ、結さんか」

「結さんが……いるの?」

 あの人、苦手なのよね……と美月ちゃんの声が聞こえた気がしないでもない。僕だって苦手だ。



――――――



「だから、間山君が困ったとき、結さんに連絡すればいいんだよ」

「……いや、そんなのできるわけないじゃないか」

 非常に気まずい雰囲気だ……四人でテーブルを囲んでいるのだが結さん、洋一郎、そして洋一郎に引っ付いている美月ちゃん、最後に僕といった順番である。これではわかりづらいので南が結さん、東に洋一郎と美月ちゃん、そして北側に僕(ちなみに西側には謎のぬいぐるみがおかれていたりする)といった具合だ。

「それじゃ、東結さんが便利屋みたいだし」

「……わたくしは別にかまいませんよ。便利屋でも何でも屋でも……今日だってお世話になりましたし」

 そういって茶をすする。怖い、怖すぎるよ東結さん!

 そういった東結さんをみて洋一郎が不思議そうに首をかしげる。

「……ねぇ、そういえば結さんなんでいつもみたいにしゃべらないの?」

「なんのことかしら?」

 震え上がりそうな視線を洋一郎にぶつけるが、彼は引っ込むこともおびえることもしなかった。どうやら不良のそういった視線に疎いらしい。

「いつもだったら……何かにつけて『ぶっ殺すぞ、コラ?』とか『桜の木下に埋めんぞ、オラ!』って気さくにしゃべってるのに」

「……」

 それ、気さくにしゃべる……とは言わないよね?怖いよ。

「……わたくしは礼儀をわきまえてるだけですので……」

「ふぅん?あ、それと『わたくし』なんていってないよね?いっつも『おれ』だよね?おれがやるから引っ込んでろこの『×××野郎』なんてよく言うし」

「「「………」」」

 一昔前だっただろうか?『KY』なる言葉がはやった。これは『空気読めない』を短くしたものだ。けっして『こじま○しお』や……まぁ、いいや。とりあえず、洋一郎がその『KY』という存在だとうすうす感じていたがそうだったとは……

 さらに気まずい雰囲気で(一人を除き)一つのテーブルを囲む。

「ま、まぁ、わたくしもそういった時期があったかもしれませんが……過去のことです」

「この前あったときはあの口調だったよ……って痛いっ!!叩かないでよ」

「……」

 竹刀がきゅぴーんと光って洋一郎の額をどついた気がした。そのときの東結さんの瞳がなんともいえなかった…。

「てめ……こほん、洋一郎、そのように礼儀をかくと間山霧之助さんに失礼ですよ」

 今、てめぇっていいそうになりませんでしたか……と尋ねたかったが尋ねた瞬間に誰かの二の舞、またはそれ以上の酷い目にあうだろうと想像してしまった。

「え?間山霧之助さん……って、この前は間山って呼び捨ててなか……痛いよ、美月、助けて!」

「……それはまぁ、洋ちゃんが悪いから」

 東結さんがかわいそうなぐらい顔が真っ赤だ。よもや、まさかと思うが……いやいや、きっと改心したのだろう。以前はあらぶる神のごとく暴れまくっていたのかもしれない。言っていたではないか!彼女は図書館の地下室で……つまり、今は口調を改めているのだ。

 これからこの部屋で惨劇が起きないだろうかと本心で心配しているとそこに再びチャイムが鳴り響いた。千客万来?といったものだろうか?

「あ、ちょっと行ってきます」

 この状況を打開してくれる人よ、カモン!そう思って玄関を開けてみたのだが……



――――――



「やぁ、悠ちゃん久しぶり♪」

「「「……」」」

「え?なんで洋一郎がいるの?」

 やってきたのは野々村悠。何で、何でこのメンツ!?なんだか関係がややこしくなりそうだし。洋一郎、美月ちゃんとは仲が悪いとは思わないけど東結さんと悠がどういった反応を見せるかわからない。

「で、こっちの人は誰よ?どっかで見たことあるような気がするんだけど…」

 どこだったっけ?と僕の隣に座ってそんなことを言う。

「わたくしの名前は東結。洋一郎の親戚にあたります」

「ああ、それで見たことあるって思ったんだぁ……」

 手をぽんと叩いて納得したという顔をする。

「ん?東……結…さん?」

 じろじろと東結さんを上から下まで悠は見ている。何か思うことでもあるのだろうか?東結さんのほうも首をかしげている。

「何か?」

「ねぇ、洋一郎が言っていた東結さんってこの人のこと?」

 その場にいた洋一郎にそんなことを言う。美月ちゃんの顔が青ざめ、洋一郎は大きく首を縦に動かした。



「うん、そうだよ♪がさつという言葉はきっとこの人のために生まれてきた……」



 全部言い切れずに彼は床に沈んだ。

「いったいなぁ!!それ、絶対芯に何か堅いもの入れてるでしょっ!!」

「……間山霧之助さん、今日は日が悪いようです……美月さん、今日はもうこれでおいとまさせていただきましょう」

「え、あ、はいっ!!」

 美月ちゃんも東結さんに続いて立ち上がり、ぶつくさ文句を言っている洋一郎を背負う。悠に手を振って急いで出て行ってしまった。

「……すみませんね、お邪魔してしまって」

「いや、気にしないでください。お隣に引っ越していらしたんですよね?また日を改めて遊びに来てください」

「そういわれると助かります」

 お互い、精神的に疲れて仕方がない。愛想笑いをうかべてついつい、そんなことを言ってしまったがいざ来たらまた面倒なことになりそうだ。


今回で五十五話。さて、話は変わりますがもう夏休みじゃないよという方もいらっしゃるでしょう。勉学や仕事に精を出している方もいることだと思います。以前も話しましたがこの小説は暇の間に手軽に読めるような物を目指しておりました。さて、どういった感じでしょうか?理想を現実に変えることができたのでしょうか?客観的に自分で見たつもりでも実際に他人が見てくれるものとは少しだけわけが違いましょう。多かれ少なかれ、自分の小説ですので色眼鏡をかけてしまうものです。よければ、評価、感想をいただけたら幸いだなと思う所存です。とうとう霧之助たちも二学期が始まり、ここらでそろそろ事情が変わってきたりもします。というより、そろそろラブコメっぽいことがやれるじきなのでは?と考えております。今後の期待と不安を同時に持って進めたいです。では、次回もよろしければ読んでください。

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